確かな笑いの実力をたずさえ、2019年まで10年連続で全国漫才ツアーを行ってきたトータルテンボスが、11月に東京と大阪で単独公演「背広の合うふたり」を開催する。

昨年に続き、今年もコロナ禍の影響でツアーを断念せざるを得なかったが、代わりに用意された本公演では新ネタ4本と毎年恒例の新作いたずらVTRが披露され、最終日の東京公演では、オンライン配信も予定されている。

YouTubeチャンネル「SUSHI☆BOYS」のチャンネル登録者数は、45万人と絶好調。また最近では、大村が息子・晴空(はるく)くんと『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ)などで親子共演するなど新機軸の活動も見せるトータルテンボスに、単独公演の意気込みやライブへの思いを聞いた。

<トータルテンボス インタビュー>

左から)藤田憲右、大村朋宏

――今回の単独公演のタイトル「背広の合うふたり」は、やはりマネジャーさんが命名したのでしょうか?(※トータルテンボスのライブやツアーのタイトルはマネジャーが決めるのが恒例となっている)

藤田憲右(以下、藤田):そうですね。僕らはまったく関与していないので、意図は彼に聞いてもらえたら…(笑)。

マネジャー:意味はホントになくて、文字のバランスと、あとはお2人シュッとしててスーツがめちゃくちゃ似合うんで。正直それだけです、はい。

藤田:まぁ、これくらいがいちばんいい答えだと思うんですよ。前任のマネジャーが前回のツアータイトルを決めたときは、「どういう意味?」って聞いたら、むちゃくちゃ事細かく、しっかり「お笑いというのは…」みたいな意味がバシッとあったんで、思いがありすぎて、逆にすげー恥ずかしかったっていうのがあって…(笑)。

大村朋宏(以下、大村):タイトルが「天下統一」でしたっけ?コロナで中止になったんですけど、中止になってよかったなっていう…。

藤田:だいぶ恥ずかったんで。大上段から叩きつけるようなね。やっぱ、あんまり意味のない感想くらいがちょうどいいですね。

大村:スーツじゃなくて背広っていう表現がいいですよね。僕らもちょっとベテランの域にもなってきてますし、背広のイメージが出てきたのかなっていう。

藤田:昭和50年生まれなんで、ちっちゃいころは「背広」って言ってたもんね、親父もね。

毎年行っていた単独ライブがコロナ禍の影響で中止に「本当に残念でならなかった」

――今回の公演では、新ネタ4本と新作のいたずらVTRが披露されるそうですが、現時点ではどの程度できているのでしょうか?

大村:ネタは今合わせ始めている感じなんですけど、いたずらに関してはこれからなので、(いたずらを仕掛けられる側の藤田が)覚悟を決めていただいている感じなんじゃないですか? 

――いたずらはYouTube(「SUSHI☆BOYS」)の企画でもありますが、日々いたずらを警戒して過ごすのはどんな気持ちですか?

藤田:緊張の糸がずっと張り詰めた状態がもう毎日続いてるような状況…だと思われがちなんですが、そうなるとやりきれないんで、もうなんにも考えてないですね。

大村:そっち側の立場になったことがないからわかんないですけど、彼なりに心の持っていき方とかいろいろあるんでしょうね。「考えすぎたらリアクションも変になっちゃうから、フラットにしとこう」みたいな努力もしてくれてるんじゃないかと。

藤田:そうですね。ただ、いつも通りのスケジュールだと構えはしないけど、今日みたいな朝イチから取材が4連発くらいであるっていう、1年の中でもそうないスケジューリングだと「今日は、なんかあるんだろうな」という予想はしております。

――この取材がいたずらに関わっている可能性もあるということですか?

藤田:そうですね。これか次か、その次あたりにくるんじゃないですか?

大村:そんな、いちいち仕事の内容で疑われたらもう身がもたないですね。はっきり言っちゃうと、この取材のラッシュは本当なんですよ。でも、こんなふうに彼の深読みしすぎということも多々あるから、結局うまくかわせてるんでしょうね。「これ、いたずらなんかい!」みたいな。

――藤田さんは、毎回予想できていないんですか?

藤田:まあ、そうですね。

大村:いちいち予想もしなくなるよね。

藤田:しなくなりますね。

大村:身がもたないよね。いちいち疑ってかかってたら。

藤田:うん。ただ、今日はちょっと何かあるんじゃないかなって…。

大村:だからないって(笑)。まぁ、あっても「ない」とは言うけど。

――コロナ以前は、毎年全国ツアーを行っていましたが、昨年、今年とそれができなくなったときはどんな心境でしたか?

藤田:これまでずっとツアーが続いていたので、去年、今年と開催できなかったことで、そのありがたみを改めて感じましたね。「あんなにやれてたんだ」と。こういうことがなければ気づかなかったことだろうから、そういう意味ではよかったのかもしれない。早くコロナが収束して、またしっかりした形でツアーをやりたいなと思います。

大村:そうですね。ツアーはめちゃくちゃ好きですし、毎回ライブの前日は「明日は広島かぁ」とか、ちょっとドキドキワクワクして。で、気の知れたSUSHI☆BOYSメンバーの後輩たちと行って、ライブ後は毎回打ち上げしてその日の労をねぎらって、そのあとみんなでホテルで楽しく寝るっていう…あの日々がもう楽しくて楽しくて。だから、去年、今年とできなかったのは本当に残念でならなかったですね。

藤田:で、ちょっとこれは嬉しいなあと思ったことがありまして。まあちょっとゴマスリなんですけど、この間、本社で不意に(吉本興業の)大﨑(洋)会長にお会いしたんですけど、そのとき「今年もツアー残念やったなぁ」って言っていただいたんです。「来年こそはやれるんやったらやらせてあげたいから、がんばってや」みたいなことを言われて…。「うわ!知ってくださってるんだ」って。

大村:なんで知ってるんだろうね?

藤田:これはちょっと嬉しかったですね。ちゃんとトップの方までわかっていただいてるんだな、っていうのが。

大村:そうだよね。いろんなことを考えなきゃいけないトップの脳のほんの一部でも占めてるっていうのは嬉しいですよね。

藤田:これを僕が話すことによって、お互いWin-Winになると思うので…。僕らも売れるし、大﨑会長もたぶん芸人さんに優しいって思われるし。

大村:そんな腹の奥のこと言っちゃったら台無しなんだよ!

藤田:(笑)。

――大村さんは現在、クセスゴ(『千鳥のクセがスゴいネタGP』)で息子さんと共演もしていますが、そういったスタイルでの活動についてはどう感じていますか?

大村:僕たちなんて、頻繁にお茶の間のゴールデンのテレビ番組にバンバン出ているタイプじゃないんで。僕らがM-1だなんだってテレビに出てたころに見てくれてた人たちも、そのころ中学生ぐらいだとして、あれから15年ぐらい経ってると、もう30歳手前じゃないですか。

だからホント、高校生以下に極めて知名度が低いと思うんですよ。クセスゴで初めて僕を見た人にとっては「あ、あのしゃべらない人だ」ぐらいの認識でしかないと思うので、「ネタではすげ〜しゃべるんだな」っていうギャップは見せたいですよね。あと、息子は相方じゃないんだよ、ということも知っていただきたいし。「ふだん、あんなモジャモジャの人とやってるんだ」って(笑)。

藤田:「あの、メシめっちゃ食うやつとコンビだったんだ」っていうね。

大村:そういう人、本当にいると思うんですよ。たまにTwitterとかでも「こんなにしゃべってるの初めて聞いた」とか書かれてるんで、「そうか、そういうイメージか」って。でも息子との仕事の需要があるというのは一応ありがたいことではあるし、時代が“ほっこり”を求めているというのもあるんでしょうし。そういう意味では、藤田の大食いとか野球とか、僕の息子との番組で存在を知っていただけるのはありがたいですし、やるならそっちも一生懸命やっていこうという感じですね。

――現在、単独ライブや劇場への出演、YouTubeなど充実した活動をされていると思いますが、今後コンビとして新たにやってみたいことなどはありますか?

藤田:いやもうパンパンなんでね、何にもないな。

大村:今、ツアーができてないぐらいで、あまりあれもしたいこれもしたいはないというか、充実しているというイメージの方が強いんですよね。もちろん、千鳥だかまいたちだチョコプラだ霜降りだみたいな、王道の、テレビで活躍するみたいなのもめちゃくちゃ憧れますけど、今からそうなるってなかなかないじゃないですか。

藤田:それは、使う側の人が判断することだからね。

大村:だから、特にそればっかり目指しているわけではなく、漫才を軸に、今の仕事を楽しくやっていこうという方針なんで。

藤田:そうだね。

大村:本当にこのまま楽しく、末長くできたらいいなあっていう思いしかないですね。でも、強いて言えば地方のレギュラー番組はほしいですね。僕らっぽいというか…。

藤田:のんびりロケができるしね。

――それでは最後に、読者に向け単独ライブの見どころなどメッセージをお願いします。

藤田:この2年近く、ライブがあまりできてないじゃないですか。お笑いだけじゃなくて、世の中全体が。でも、やっぱり僕は本当にライブがいちばん面白いと思うんですよね。どんなにテレビで面白いネタをやっていても、そのテレビでやってるネタですら観覧で見た方が絶対面白いと思いますし。だからこの機に、ライブに行ったことがなかった人も来てみて、その素晴らしさを知ってほしいなと思いますね。

大村:まぁ、生がいちばん面白いというのはもちろん彼の言う通りなんですけど、それが理由で彼は『キングオブコント』(TBS)を見ないっていう、よくわかんない…。

藤田:あんま言うなって。オレが『キングオブコント』を見てないことを…。

大村:なかなかいないですよ。芸人やってて、『キングオブコント』見ないって。

藤田:それだけで「ダメだあいつ」ってジャッジする人もいるし、マイナスになるから言うなって。

大村:マイナスだと思うんなら見ろ(笑)! いや、ただ「見てないってすごくない?」って思って。だからそこは、ビクビクしないで堂々としてろよ、「何が悪いんだよ」って。

藤田:なるほどね。うん、見てないですよ。ライブが好きなんで。

大村:まあでもホントその通りだと思うし、それを実証したいんで、「ぜひライブ見ませんか?」ということですね。久々に人がいっぱいいる中で観覧できるようになりましたし、それを待ち望んでくれていた人は、これを機に集まってもらって。もちろん万全の対策をした上でお届けしますので、来てほしいですね。

<動画メッセージ>

<トータルテンボス単独公演2021「背広の合うふたり」>

大阪公演:2021年11月17日(水)18時30分開演/なんばグランド花月
東京公演:2021年11月19日(金)18時30分開演/ルミネtheよしもと

※オンライン配信あり。収容人数の規制が緩和され、ガイドラインの変更の際は、未販売席を追加販売する可能性があります。

詳しくは、公式サイトまで。