テレビマンの仕事の極意と、彼らの素顔に迫る「テレビマンって実は」。

今回は、『めざましテレビ』(毎週月〜金曜 5時25分〜)に放送開始から関わり27年、現在はエンタメコーナーの発生演出を担う、石田央美が登場。

長年、お茶の間に親しまれている朝の情報番組は、どのように作られているのか?全4回にわたる連載の第1回目では、当連載に石田を推薦してくれた高橋龍平チーフプロデューサーを交えて、「エンタメコーナーの発生演出」の仕事内容について聞いた。

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――石田さんが担当する「エンタメコーナーの発生演出」とは、どんな仕事ですか?

石田:まず「発生」とは、「映画の舞台挨拶が行われました」とか「タレントさんが新CM発表会に出席します」「コンサートや舞台が開幕しました」といった、日々発生するエンタメニュースを指します。「演出」はコーナー全体の方向性や構成・スタジオ展開を決める仕事です。

『めざましテレビ』エンタメ班は、スタッフが曜日ごとのチームに分かれて、発生取材から、構成・ナレーション原稿の作成・編集まで行っています。私は、曜日チーフの指揮のもと作られたコーナー全体の構成・原稿を最終チェックしています。演出的な面はもちろんですが、“間違い見つけ係”みたいな感じですね。

――具体的な仕事内容と、一日の流れを教えてください。

石田:毎日、夜中の24時半〜25時頃に出社して、本番に向けて準備します。

エンタメコーナーは、1日の放送の中で『めざましテレビ全部見せ』で1回、『めざましテレビ』で3回あるので、いつも「このネタは6時台の方がいいんじゃないか、こっちは7時台がいいのでは?」など、各時間帯の視聴者層に合わせてネタの放送時間を決めています。

1日の放送で、VTRとナレーション原稿が20本前後あるので、出社した時点で上がっている原稿を見て「このネタはこっちを立てた方が、引きがありそう」など内容構成を検討し、チーフやディレクターに指示。初見でわかりにくい言い回しなどを直したりします。そのナレーション原稿をもとに放送作家さんがスタジオトーク用の台本を作ってくれるので、「こんな補足情報があるから、VTR後はこの情報をベースにスタジオトークをしましょう」などといった相談をします。

最終的には、Qカットやラインナップ告知など含むスタジオ台本や、VTR・ナレーション原稿を時間までに納品するよう、鬼のようにみんなのお尻をたたきます(笑)。

朝4時前後に届くスポーツ紙で、訃報や結婚など大きなネタがあった場合は戦争状態です!ネタの裏どり、何のネタを落としてどのコーナーに入れるか、原稿作成、使える映像の確認、捨てるネタ決め、作業できるディレクターの確保など、瞬時に役割を指示。その時点まで順調に進めてきたものは泣く泣くお蔵入り…ということも、少なくありません。

このほか、映画の舞台挨拶などの発生取材で、どのタレントさんに個別インタビューを行うか、その内容、ネタが多い日の取捨選択・薄い日のネタ集めなど、各曜日チーフからの相談に乗ったりします。

また、月に何日かはゲストやマンスリーエンタメプレゼンターの方が生出演するので、その台本や演出を担当ディレクターと相談しながら考えます。どのタイミングでどんなコメントを出して…というひとつひとつを、カメラワークも含めて演出しています。

そして4時55分から『めざましテレビ全部見せ』が、5時25分から『めざましテレビ』がスタート。8時の放送終了後、早ければ10時前、遅くとも12時頃には退社します。

――この流れを月曜から金曜まで、毎日続けているのですね。

石田:各曜日スタッフと違って毎日いるからこそ、「先週は軽部(真一)さんがあんな話をしていたから、今週はこう振ってみよう」というように、全体のつながりも含めてバランスを整えることができます。

およそ3時間の番組中、軽部さんとはコーナーの合間に、VTRや今後のネタなどいろいろな話をします。まぁ多くは雑談ですが(笑)。軽部さんとはもう長いこと一緒に働いているので「こんなことを話したいだろうな」「この新聞記事はやりたいんじゃないかな」「このいい回しは嫌いだろう」というのも、何となく分かっているつもりです。“軽部さん担当”みたいな感じでしょうか(笑)。

生放送はどんな大御所でも緊張するので雰囲気作りが大事

――「エンタメ班の発生演出」として一番大切にしていることを教えてください。

石田:何よりスタジオの空気が大事です。もちろん、視聴率もですが(笑)。

特に番宣などでゲストの方が来たときは、なるべくリラックスしていただけるように心がけています。どんな大御所の方でも、やはり生放送というのは緊張されるそうなので。CM中はキャスター陣と一言、二言でも言葉を交わして、肩の力を抜いていただいています。

マンスリーエンタメプレゼンターの場合は通常ゲストと違い、質問に答えるだけではなく、原稿を読んだりコーナーを少し仕切ったりと、やらなければいけないことが多く、とても緊張される方が多いです。なので、VTR中に「ここまでバッチリですよ!」と一声かけたり、CM中に一層リラックスした雰囲気を作っておいて、視聴者の皆さんが「明るくて楽しそうだな」と感じる空気感を出したいと思っています。

――スタジオに入る前、事前準備ではどんな点に気をつけていますか?

石田:打ち合わせでの伝え方や、雑談が大事だと思います。出演に先立って、ゲストの方にアンケートを書いていただいたり、事前打ち合わせを行ったりするのですが、そこで難色を示された演出が、当日の打ち合わせで直接説明したらOKになったというケースがよくあります。

そしてもう1つ、急な変更にも臨機応変に対応できることが大切です。当日の朝の打ち合わせで変更になった部分を、誰と誰に伝えれば混乱しないか。そういった細かな連絡・調整は、経験が長いこともあって慣れていると思います。

高橋:『めざましテレビ』は、コーナーごとの尺が短く、秒刻みで進行していきます。そんな中でも石田さんは、スタジオをどう動かしたら面白くなるか、どう見せたら視聴者の皆さんがクスッと笑えたりポジティブな気持ちになれるかを、最優先に考えて演出していると思います。スタジオの空気を盛り上げたり締めたりとコントロールするスキルは一番で、頼りにしています。

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