深田恭子主演で、現在公開中の「劇場版 ルパンの娘」。 代々泥棒一家“Lの一族”の娘・三雲華(深田)と、代々警察一家の息子・桜庭和馬(瀬戸康史)の禁断の恋を描いた大人気ドラマの続編だ。
その中で、渡部篤郎と小沢真珠は、華の両親(三雲尊&悦子)を演じるが、このたび、その“夫婦”対談が実現。
尊と悦子は、ともに凄腕の泥棒ながら、普段は家族の前でもイチャイチャ&ラブラブを見せつけ、どこかとぼけたところもある。ユニークな役柄に扮する2人に、映画の裏話や見どころ、個性的な役と作品への思いを聞いた。
<渡部篤郎&小沢真珠 SP対談>
――ドラマのシーズン2終盤で“Lの一族の秘密”の存在が明らかになり、続編への期待が高まりました。作品が映画化されると聞いたときの気持ちはいかがでしたか?
渡部:単純にうれしかったですね。それだけドラマを支持してもらえたということだけでなく、作品自体の面白さや、作る側の強い思いが認めてもらえた証拠だと思うので。ありがたかったです。
小沢:『ルパンの娘』はとにかく脚本が面白くて、ドラマの時も毎回すごく楽しみで。映画になると聞いて、「どんな話になるんだろう!?」とさらにワクワクしました。
――シーズン1、シーズン2を経ての映画化で、お二人の呼吸はどう変化しましたか?
小沢:実は、最初の頃、私が役をつかみきれていないところがあったんです。それを渡部さんが、「こうしたほうがいいんじゃない?」ってアドバイスをいっぱい下さって。
渡部:最初はみんな手探りだと思うんですよ。それは当然なことですし、僕も手助けしてもらったと思いますし。そうやってみんなでやってきました。
――小沢さんはシーズン1のとき、悦子のレベルまでテンションをあげるのに苦労した、と話していましたよね。
小沢:最初は大変でした。それがシーズン1、シーズン2と進むにつれて、いい意味で慣れてきて。ただ、慣れって怖いなと思うのは、尊さんとの“イチャイチャ”も、最初のうちは「しよう、しよう」と意識してお芝居のスイッチを入れる感じだったのが、シーズン2ではもう慣れてるぶん、意識的にスイッチを入れなくなっているときがあったのか、監督から「もっとイチャイチャして」と言われることがたまにあったので。それで、「あ、そうだ!スイッチを入れなきゃ!」っていうことがありました(笑)。
「愛の不時着」のパロディをやった感想は?「いっさい考えず、真面目に『はい、はい』と演じました」(渡部)
――渡部さんはいかがでしたか?
渡部:僕はそんな感じはしなかったけどね。日常のことだと思ってやっているので、パターンを変えなきゃとか、そういうこともあまり考えなかったです。武内(英樹)監督からも、「こんなふうなのはどう?」みたいな演出があったので。一度監督に見てもらって、指示があればそれに準じてやっていました。
――映画でも、さまざまな作品のパロディが登場します。韓国ドラマ「愛の不時着」のパロディで、空中からパラシュートで降りてくる悦子を尊が抱き留めるシーンは、やってみていかがでしたか?
渡部:僕は原作を意識せず、監督から言われた通りの段取りで、なんの迷いもなく真剣に演じました。もう、考えだしたら止まりますからね。だっておかしな話じゃない?愛し合う2人が片や英語でしゃべり、片や韓国語でしゃべっている。だからいっさい考えず、真面目に「はい、はい」と聞いて撮影に臨みました(笑)。
小沢:エキストラさんたちが大勢いる広場に、悦子がパラシュートで降りてきて、尊さんに抱きかかえられると、「わぁー!」っという歓声があがるんです。それを何回かやっているときに渡部さんが、「たぶん主役と間違えられてるよ」って(笑)。確かにその場面だけを切り取るとそう見えるかもしれず、あまりにドラマチックなだけにとても恥ずかしかったです。
――猛スピードで降りてくる悦子を、尊は見事に抱きとめますが、タイミングを合わせるのは難しかったのでは?
渡部:そんなに複雑なもんじゃないですよ。バサッとパラシュートが落ちたら、次の瞬間にはもう、僕が悦子を抱えてるっていう(笑)。無理よ!できないから(笑)。瀬戸くんだったらやれると思うけどね。
――そんな尊と悦子を演じる楽しさはどういうところに感じていますか?
渡部:うちは泥棒一家で、泥棒が悪いことだとは全然思ってないんですよ。仕事が泥棒なこと以外は、一般家庭と同じなんです。尊は職業がおかしなだけで、家族をとても愛してますし、仕事のことも愛している。それは俳優である自分と同じです。
僕もお芝居が大好きで愛しているし、家族も大事にしている。職業を除けば、自分の日常とそんなに変わらない。そういう意味では、僕はやりやすくて楽しかったですね。
やっていることはいけないことでも、「自分たちは正しい、楽しく生きている」と演じていた(小沢)
――あくまで“日常”を演じているわけですね。
渡部:あの一家からすればね。見ている方はお忘れかもしれないけど、僕らは一応、悪い奴らからしか盗まない“義賊”なんです。でも実は、作る側の僕らも、そこを忘れかけちゃっているんだけど(笑)。
はじめは義賊としてのプライドみたいなものがあったけど、どんどん忘れていって、今はもう「純泥棒」みたいになっている。でも一応、悪い奴らからしか盗まない、という体(てい)でやっています(笑)。
小沢:やっていることはいけないんですけど、「自分たちは正しいし、楽しく生きている」というふうに演じようとしていたので。ベースのお芝居がそういう感じなので、いつもハッピーなテンションで、とても楽しくいられたなと思います。
――ドラマの開始当初、ここまでコメディ方向に振り切った役を演じることに戸惑いや迷いはありませんでしたか?
小沢:まったくなかったんですけど、やっぱりあそこまでのテンションに持っていくのにちょっと苦労しました。監督や渡部さんに助けていただいて、「あ、こういう感じなんだ、このテンションなんだ」とつかめてからは、俄然楽しめるようになりました。
渡部:僕はこの役をコメディというふうにとらえていなくて。台本をきちんと熟読して、その意味をわかってまっすぐ演じてるだけで。コメディとかそういう見せ方というのはプロデューサーや監督が決めることなので、僕はもうただひたすら真剣に演じているだけです。コミカルにしようとかっていうことも、一切考えたことはないですね。
――その「まっとうさ」が可笑しくて、見ていて吹き出してしまうシーンが多々ありました。
渡部:小沢さん(悦子)のセリフは面白いのがたくさんあったね。すごいなぁと思う。
――どのあたりがツボでしたか?
渡部:全部だね。悦子はとぼけるでしょ。(緊迫したシーンなのに)「(だって)踊りにきただけじゃない?」とか。そういうのも、狙いにいってるわけじゃないし、かといってそれを素で思っているわけでもないし。すごく絶妙な表現だなと思って。そこは僕も、見ていていつもゲラゲラ笑っていましたね。
――先ほど、「泥棒であっても、仕事や家族への思いは自分と同じ」というお話がありましたが、演じる際、役との共感ポイントを探すものなのでしょうか?
渡部:そこはあんまり必要じゃないと思うね。もっとシンプルに、いただいた役の人格をプロデューサーから聞いて、監督とお話しさせてもらって、じゃあそうやって演じましょうといってやるぐらいで、共感のところは考えてないかな。共感してたらたぶん…無理だと思う。盗んだお宝が家中にあって住めるわけがない。落ち着かないですよ(笑)。
――でも、役のことは好きになるという感じでしょうか。
渡部:もちろんです。だから、自分とシンクロさせる部分と、自分が役を演じる上で考えることはまったく違う。そこはきちんと分けてやっています。
小沢:私も、今回の役は特にテンション勝負で、スタートエンジンを高くしておけばスッと入れるという感覚が常にあったので、難しいことは考えませんでした。逆にいろいろ考えちゃうと、監督の思い通りのところにはまらないので、現場に入ったら単純に、とにかくテンションをあげていました。
「渉(栗原類)が発明した新開発マシンにみんなで乗ったSFシーンは、ワクワクしました」(小沢)
――同じ役を長く演じる際、シリーズならではの醍醐味、あるいは、難しさを感じることはありますか?
渡部:もちろん愛着のある役ですし仕事なので、役や作品への愛しさは増すばかりです。でも、面白さや難しさというのも、すべてお客様が判断することだと僕は思うんですよね。だからもう一生懸命やるだけですよ。
小沢:私も現場でやるべきことをその都度精一杯やるだけで、その先のことはいろいろ考えないかもしれないですね。
――では、今回の撮影でもっともワクワクしたシーンを教えていただけますか。
小沢:私は、息子の渉(栗原類)が発明した新開発マシンにみんなで乗ったSFシーンです。
渡部:ああ~。そうだね、そうだね。
小沢:マシンの動きを想定して一斉に身体を揺らしたり。その中でも目まぐるしくいろいろなことが起こって、スタッフさんからの「今何が映ってます!」「今どうなりましたー」っていう声に応じて表現したり。場面的には後半ですごく重い展開になっていくんですけど、前半はただただ楽しくて、ホントにアトラクションに乗っているみたいでした。
渡部:僕はもう、全部ワクワクした。寒さが身に染みるような場所でやっていても、ほんのちょっとのシーンでも、みんなといるとなんか楽しいんです。だから、「今日は行きたくないな」なんて日はなかったですよね。
映画で一番楽しいと思ったのは「三雲家にまつわる真実が段階的にわかっていくところ」(渡部)
――最終章とのことですが、見る側はどうしても続編を期待してしまいます。このままお別れしてしまうのは寂しいなと…。
渡部:そうだね。個人的なことをいえば、僕はもうずーっとずーっとやっていたい感じです(笑)。
小沢:私もやっていたいですね、できることなら。
――映画では、尊の妹・三雲玲(観月ありさ)が登場し、尊の切ない過去が明かされます。尊の知られざる一面が顔を出すのを、どう演じようと思いましたか?
渡部:尊のバックボーンを自分の中に落とし込んで、というようなものではないと思うんです。やっぱり、台本に書かれてることを演じるというのはとっても難しいこと。
それは一からしみついていて、台本に書かれてることは尊の中に全部あるし、華の中にも悦子の中にも全部ある。我々は、それを瞬時に演じなきゃいけないわけで、そっちの作業のほうが大変なことで。
だから本当にひとつのシーンやひとつの流れを、自分がどうのっていうよりも、監督の理想通りに演じるだけですよね。
――では、改めて完成した映画を見ていかがでしたか? 見どころとともに教えてください。
小沢:さっきのSFシーンでいうと、マシンに乗っている私たちの映像と、マシンの外で繰り広げられる岡田(義徳)さんと観月さんのシーンがつながったものを見たときはすごく感動しましたね。だいたいこんなふうになるのでは?という想像を、はるかに超えるものが出来上がっていました。
渡部:僕が今回の映画で一番楽しいなと思ったのは、三雲家にまつわる真実が段階的にわかっていくところだよね。もちろん台本を読んで展開はわかってますけど、映像として見たときに、武内さんの豊かな映画芸術性を感じてとても感心しました。
家族の細かな真実も、いっぺんにあらわになるわけじゃなく、何回かに分けて真実が明かされていき、最後の最後にいろんなことがまた出てくる。そこは見ててすごく素晴らしいところだなと思いました。
映画の魅力はたくさんありますけども、今回は深い深い家族愛が描かれているのが大きな見どころだと思います。
小沢:アクションシーンやミュージカルシーンも、ドラマよりさらにパワーアップして、見どころがたくさんあります。ぜひ劇場でご覧ください!
<動画メッセージ>
<第2弾予告>
©横関大/講談社
©2021「劇場版 ルパンの娘」製作委員会
最新情報は、「劇場版 ルパンの娘」公式サイトまで。
撮影:河井彩美 取材・文:浜野雪江