『SUITS/スーツ2』第9話完全版

「幸村・上杉法律事務所」のトップは、チカ(鈴木保奈美)か、それとも上杉(吉田鋼太郎)か。シニアパートナーによる投票でそれを決める臨時パートナー会議が5日後に迫っていた。

甲斐(織田裕二)は、玉井伽耶子(中村アン)を復職させるため、彼女に会いに行く。「俺が君を必要としている。君なしじゃ、やれない」。その言葉に心を動かされた玉井は、復帰する条件として、甲斐が用意した金額以上のボーナスと、現在の秘書・小笠原(黒羽麻璃央)に解雇を告げる役目を要求する。

一方、蟹江(小手伸也)は、上杉からシニアパートナーへの昇格を打診される。ファームの共同代表である上杉は、独断でひとり、シニアパートナーに昇格させる権限を有していた。喜ぶ蟹江に対して上杉は、代表を決める臨時パートナー会議のときに発表するからそれまでは秘密にしておくよう告げる。

ある日、甲斐と大輔(中島裕翔)は、クライアントである有名キャスターの浜崎哲平(中村芝翫)に会いに行く。浜崎は、自身のテレビ番組で人気プロ野球選手・等々力真一(佳久創)の薬物使用疑惑を報じて訴えられていた。

等々力の所属球団は、浜崎と番組を放送した「東都テレビ」に対して、それぞれ賠償金3億円と、番組での公式謝罪を要求していた。浜崎は、これまでも社会のタブーに踏み込み、何度もトラブルを起こしていた。今回は、等々力がドーピング検査も受けて潔白を主張していることもあり、謝罪するしかないのでは、と考える大輔。しかし浜崎は、これまでも経験と勘で断定的な発言をしてきたが自分には負けた記憶がない、といってそれを頑なに拒む。

蟹江は、玉井にバレエ公演のペアチケットを手渡し、模擬裁判の件を詫びた。その際、玉井は、蟹江の着ていたスーツがいつもと違うことに気づく。それは、蟹江がシニアパートナーに昇格したときに着ると言っていたスーツだった。玉井は、すぐにそれをチカに報告した。

そんな中、「幸村・上杉法律事務所」に大輔の祖母・結衣(田島令子)が訪ねてくる。結衣を案内していたのは真琴(新木優子)だった。甲斐に気づいた結衣は、いつもしごかれていると言っていたからもっとマッチョな鬼軍曹みたいな人かと思った、と言い出し、大輔を慌てさせた。結衣は、甲斐に大輔のことを頼むと、大輔に手作りの弁当を手渡して帰っていく。実は大輔は、結衣と一緒に住むために、新居をプレゼントしようと密かに考えていた。

あくる日、甲斐と大輔は、等々力の所属球団顧問弁護士・柴田(本間剛)と対峙する。大輔は、浜崎が最後に「個人の見解である」と発言していることに触れ、表現の自由の範囲内だと主張した。すると柴田は、浜崎の番組のCM中のようすを撮影した映像を持ち出す。その中で浜崎は、たとえ潔白だろうが自分がクロといえばクロになる、インチキスラッガーを叩き潰してやる、とスタッフを相手に話していた。

チカは、蟹江を味方につけるため、彼を説得するよう甲斐に指示する。蟹江を食事に誘った甲斐は、以前彼に見せて相談した横領の帳簿が実は「幸村・上杉法律事務所」のものであり、横領をしていた上杉がその隠蔽のために蟹江に罪を着せようとしていたことを明かす。しかし蟹江は、甲斐たちが自分の票が上杉に流れるのを恐れていることを理解し、こんな策略には乗らない、といって席を立ってしまう。

大輔は、新居を購入することを真琴に打ち明け、部屋探しを手伝ってもらう。真琴のおかげで良い物件が見つかり、喜ぶ大輔。そこで真琴は、大輔に一通の封筒を見せた。それは、ロースクールの統一プレテストの結果だったが、真琴は結果を知ることが怖くてまだ中身を見ていないのだという。代わりに封筒を開けた大輔は、テストの結果が合格ラインを上回る178点だったことを真琴に告げる。喜び合うふたり。

蟹江のオフィスを訪れた甲斐は、食事に誘って利用しようとしたことを詫びると、上杉の下でともに苦労したことに触れ、奴の言いなりになるな、と忠告する。それに対して蟹江は、最も信頼を寄せている腕利きの代理人でも説得することが出来なかったとチカに伝えろ、と言い放つ。

甲斐から報告を受けたチカは、自分が動くと言い出す。チカは、最初からこうなることを読んでいたのだ。すると甲斐は、自分のオフィスを蟹江に譲るとチカに提案する。

蟹江は、やってきたチカに、ファームのために尽くしたにも関わらず甲斐の陰に追いやられた不満をぶつける。するとチカは、甲斐が自分のオフィスを譲るとまで言い出したのは、ともに戦ってきたチームだからだ、と蟹江に告げる。続けてチカは、自分は絶対にトップの座を守るから、もし蟹江が間違った選択をした場合はこのファームに居場所はなくなる、と宣言する。

大輔は、真琴に付き合ってもらい、物件の内見に行く。その物件が気に入り、購入を決めた大輔は、結衣が心臓の薬を服用していることを知り、少しでも早く恩返ししたいと思ったことを真琴に打ち明けていた。

ファームに戻った大輔は、甲斐とともに浜崎を訪ねた。甲斐たちは、不利な証拠となる映像素材が球団側に渡っていたことを告げ、情報源を明かすよう求めた。浜崎は当然拒否したが、甲斐はそのやり取りの中で彼には確かな情報源があることを確信。大輔に、ある指示をする。

その夜、大輔は、会議室で映像を調べていた。通りがかった真琴は、新居を買ったことを報告するために結衣に会いにいく予定だった大輔が残業していることに驚く。大輔がチェックしていたのは、浜崎がチームの取材で球場まで出向いた際の映像だった。もし等々力のドーピングを知る人物が浜崎に接触するとしたら、この機会を利用する可能性が高かった。大輔は、投票の前だから絶対にヘマ出来ない、と真琴に告げると、もし上杉がトップに立ったら甲斐はファームを辞めてしまうからそれだけは阻止すると続けた。

大輔と真琴のやり取りをこっそり聞いていた蟹江は、上杉のオフィスを訪れ、横領事件のことを切り出した。しかし上杉は、悪びれたようすもなく蟹江をダミーにしたことを認め、あれから自分は変わったがそう思えないなら票を入れるな、と言い放つ。上杉は、票が欲しくて蟹江をシニアパートナーに推薦したのではない、というのだ。「どちらに投票するかは自分の胸に聞け。蟹江先生、自分の実力を疑うな」。上杉は、そう蟹江に告げ…。

翌日、大輔は、映像資料から見つけた決定的な証拠を甲斐に報告する。そこには、現在国外のリーグでプレーする荒川泰樹(野村祐希)という選手が映り込んでいた。等々力と荒川は、3年前に1ヵ月だけ、同じチームでプレーしていたことがあり、等々力がドーピング検査を受けた日も一時帰国していた。荒川にとって等々力は、その才能を見いだしてくれた恩人らしい。

等々力に会いに行った大輔は、情報源の名前を公にすると告げる。等々力は、告発者がチームメイトを売って裁判で証言すれば野球界で生きていけなくなるのはもちろんだが、そもそも浜崎自身がそれをさせないだろうと返す。すると大輔は、浜崎はやらなくても自分はやる、と言い、薬物使用を認めて訴えを取り下げるよう諭す。

甲斐は、ファームにやってきた浜崎に和解案を提示する。等々力は薬物使用を認め引退するが、公言はしないというものだった。浜崎は、自分のスクープだ、と反発した。そこに、大輔が荒川を連れてくる。荒川は、情報源だとバラされたことを怒っていた。裁判になれば荒川を証言台に立たせて、等々力のドーピングを立証すると言う甲斐。自分の仕事は勝つこと――甲斐の言葉に、浜崎は和解案を飲むしかなく……。

甲斐は、浜崎の件が解決したことをチカに報告する。そこにやってきた蟹江は、シニアパートナーになるための出資金をチカに小切手で手渡す。蟹江は、明日の投票でどちらに入れるか知りたいかと切り出すと、自分は何年も待ったのだから1日くらい待てるでしょう、と続けて去っていく。

大輔は、新居で結衣を迎える準備をしていた。するとそこにやってきたのは真琴だった。結衣が亡くなったと施設から連絡があったというのだ。突然の知らせに激しいショックを受ける大輔。真琴は、泣きながら立ち尽くす大輔を抱きしめた。

翌朝、「幸村・上杉法律事務所」のトップを決めるシニアパートナー会議が開かれる。投票の結果、ファームのトップ――マネージングパートナーに選ばれたのは上杉だった。