吐血してしまって、重複がんで、余命3ヶ月と宣告された瀬野さん(田中圭)…その運命は?

ってな回だったはずなのに、なんて良いお話!!

やたら危機感を出してみたり、緊急手術的なスピード感で煽ったり、目前に迫りくる死を煽情的に演出したりするでもなく、いつも通りただただ丁寧にエピソードを積み重ねて、なんならもう最終回前だってんでこれまでの総ざらい的なエピソードの回収や、キャラクターをさらに深め、交錯させたりなんかしつつ、だからといっていつも通り=新鮮味がないってわけじゃ全然なくって、今回は“治験”に関するHow To、知られざるフロー、トリビアにもワクワクもしちゃって、あっという間の1時間!時計見てビックリ!!

で、最後はとてつもないハートウォーミングなオチが付きましたとさ…。って、満足感しかない!

でもって、今更気が付いたんだけど、なんでこのドラマはそれ1本でも見せる力が十分あるだろっていうエピソードの時でも常に二つの物語を並行させるのか…もったいなくない?って思ってたんだけど、瀬野さんの台詞でようやくわかりましたよ…。

「すべての患者さんに、同じように、丁寧に接する…。お前に最初に教えたこと、忘れてんじゃないのか?」

瀬野さん…あんた、今その時も苦しんでるってのに、葵(石原さとみ)のこと、ずっと気にかけててさ…。カックいい~!!!

…じゃなかった。セリフ起こすためにもっかいその場面振り返ったんだけど、ついつい瀬野さんのどこまでも果てしない男前ぶりに感嘆してしまいました…。

そうなんです!どんな患者さんでもすべて…それが、同じ職場の同僚で、尊敬する上司・先輩で、かつ余命宣告された重い病気であろうと、何だろうと、誰であろうとも、同じように、丁寧に接する姿勢を常に描いていたんですよね。

だから、1エピソードでいける話だったとしても、頑なにそれと対比するようなエピソードを並行に描いて、葵たちは1人の患者さんだけに思い入れしてる、やたら必死になってる…っていうキャラクターや物語にしない、それをずっと貫くことで視聴者もそのことをしっかり理解できるし、共感もできるってワケ…。

で、その極めつきが、瀬野さんという超キーパーソンが患者さんになったとしても、それと対になるエピソードをちゃんと用意して、「すべての患者さんに、同じように、丁寧に接する…」というメッセージをこれでもかと念押してくる…。

しかも今回は、さすがの葵も瀬野さんばかりに思いがいってしまいそうになる、その揺らぎを少し見せちゃうんだけど、それではいけないんだとさりげなく引き戻す…そうすることでさらに、このドラマがずっと貫いてきたこと、描きたかった薬剤師としての姿勢を改めて最終回前に強調して提示する…ってさ、やっぱりこのドラマ、とてつもない気の配り方。凄い。

そしてまた、今回並行して描かれたエピソードっていうのが、心筋梗塞で緊急搬送されてきた丸岡さん(近藤公園)。心臓のお薬を生涯服用しなきゃいけない可能性があって、だけど子どもが生まれたばかりの売れない漫画家さんだから、月5000円ほどかかる薬代が苦しい…。

そこで登場したのが、これまで成長エピソードを丹念に描いてきたからこそもう安心感しかない相原ちゃん(西野七瀬)。葵イズムである患者さんの生活を考え、寄り添うことで、“1日97円”のお薬代を減らすことができました…。って良エピソードすぎる!…なんだけど、丸岡さん…隣に入院している瀬野さんと比べて、なんて自分はちっぽけなんだ…とつぶやいちゃう…。っとその時、相原ちゃん!!

「病気に、大きいも小さいもありませんよ」

キターーーーー!!!ってなったよね?またキターーーーー!!!ってなったよね??あの時の興奮、第6話の興奮再びだったよね???

あの時僕が勝手に感じていた『アンサング・シンデレラ』から醸す “「踊る大捜査線」み”を、ここでまた繰り返してくる。しかも相原ちゃんの成長した証として、葵からの受け売りではあるんだけど、自分の言葉としてこれを言わすって、素敵すぎる。

でもってなんならその前に、相原ちゃんは葵に「丸岡さんのことは自分に任せてください!」なんつって、刈谷(桜井ユキ)や他のメンバーもみんなで葵をサポートする流れになる…チーム力がここへ来て再び強くなった!これぞまさに個性豊かなキャラクターが集うドラマ!これも “「踊る大捜査線」み”!!!なんて、そこでも勝手に妄想してたもんだから、再びの「病気に、大きいも小さいもありませんよ」にとどめ刺されたよね。よく分かんないけど、感涙と拍手、したよね。

そいでもってさ、その“1日97円”のエピソード。最後の最後、実は瀬野さんも丸岡さんの隣でこっそり、考え、計算し導き出してました…。つまり、瀬野さんは自分が患者になってたって、他の患者さんのことを考えてました…寄り添ってました…っていう。

それだけじゃなく、 “1日97円”という具体的な数字でもって、相原ちゃんの導き出した答えと合致してる!!もう瀬野レベルで仕事できてることを証明してる!!成長コンプリート!!!ってことじゃないですか?ここまでいろんなエピソードと絡めまくってストーリーに落とすって…、ああ、もう考えただけでクラクラしてきた。

僕、一応、脚本家を目指して、芸術系の大学入ったんですけど、こんなの見せられたら、やっぱりそんなこと出来やしない、恐れ多いって思いますよ…。絶対そこまで頭が回らない。回ったとしてもこれだけのエンターテインメントに落とし込めないっす!!脚本の黒岩勉先生!!一生ついて行きます!!!次のドラマ(他局)も楽しみにしております!!!

おっと、横道逸れて興奮してしまいましが、そんな感じの興奮のまま(どんな?)、いつもの葵のハンコ…だけじゃない、仲間たち全員、ハンコ押しまくりの点滴薬でハートウォーミングの絶頂!!!からのいつものエンドロール…。

「2年後」…、…「2年後」?、え?「2年後」?…エンドロールで2年後を描くっておかしくね?いや、このエンドロールは未来を描くんだからおかしくないか…そこは良しとしよう…。

ああ、相原ちゃん、偉くなったなー、もう普通に関西弁だし…荒神さん(でんでん)もラテアート力が向上しまくってる…こういう成長も描くのね…小野塚くん(成田凌)も順調に救急認定薬剤師になれたんだ…胸熱…え?あの心春ちゃん(穂志もえか)も?夢叶えた!?…ここでそのエピソード回収するなんてさ…気が利いてる!!

…え?ちょっと待って?今回、最終回だっけ?この終わり方…「2年後」とか急にテロップ出して、なんだか忘れちゃってる、解消されてなさそうな物語も全部ひっくるめて大団円!にするこの手法、まさに最終回!?え?そうだっけ?最終回なの!?!?…心春「葵さんと、瀬野さんは?」…相原「(神妙)」…刈谷「いない…薬剤部は、バラバラになったの…」……(不穏)……次週!

っておい!!

新手法過ぎて、気になり過ぎる!!どういうこと!?早く来週!!!

text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)