<コラム>『推しの王子様』第10話

その時、彼は、人間の心を失ったのです…。

誰とも言ってないし、モノローグでそれっぽいこと語ったわけでもないけど、みなさん、おわかりですよね?絶対、おわかりですよね??おディーンのフジオカさま演じる、ミッチーサイドのみなさんは、もう、あそこしか思い当たりませんよね??

そう!…あぁぁぁぁ…、もう…、あのシーン。思い出すと、悲しくて、辛くて、振り返りたくもない…んだけど…。現実から、目を、背けては、いけない!そう!!あのシーン!!!

泉美(比嘉愛未)、ミッチーのキッス拒否!!!

うぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!(号泣)しどい!(酷い)しどすぎるぅぅぅぅ(泣いて滑舌おかしくなってる)。もう、なんて言うんでしょう?言うも何も、表現できる言葉、ないよね。だけど、どうしても表現するんだとすれば、ああいう状況のことを、“絶望”っていうんでしょうね…。

だって、泉美の自宅でだよ?二人っきりでだよ?こないだ付き合ったばっかりなのにだよ?あんな自然に、見つめ合った、あの流れでだよ?ミッチー的にも、視聴者的にも、何ら違和感ない、うん!そこ!!!って感じしかしない、絶好の、ナチュラルキッスシークエンス!!だったのにだよ?明確な“イヤ”、じゃなく、体が、勝手に、反射的に、拒絶する…って、もう、それって明確な“イヤ”、以上に“明確”だよね?もう、無理!ってことだよね!?明確な、無理ってことだよね!!??…うん、ちょっと、混乱しすぎて、自分でも何言ってるかわかんない!!

だって、だって、それに加えて、ミッチーは並みの男じゃないからね?ミッチーは、つまり、おディーンのフジオカだからね?あの美しすぎる、唯一無二の、THE顔面(?)を、拒否しちゃう、しかも反射的に拒否しちゃう…泉美…。いや、どんだけ泉美、メンタルやられとんねん!って話よ。通常の人の、通常のメンタルであればよ?あのTHE顔面(てなんやねん!)を目の前にしたらさ、好きとか嫌いとか、性別年齢、老若男女、問わず、120%、確実に、吸い寄せられる、仕留められる、はず、なのよ?それなのに、あんなに、自然と、拒否してしまう…って、もう、泉美、どんなメンタルになってんの!!…ま、その辺の、泉美のメンタル事情については後ほど言及するとして…。そんな、ミッチー渾身の、ナチュラルキッスシークエンスを、よりにもよって拒否された…、あの時…、ミッチーは、人間の心を失った…。わけだけれど、そん時の、泉美が、キッスを拒否して、背後にあるケント様グッズをドンガラガッシャンして、気まずい中、泉美がそれを拾い集めて、「後でしまっとくね」なんつって、立ち上がり、去っていく…。そんな、泉美を、目で、追いかけた、そん時の、ミッチーの、

THE“人間の心を失った”フェイス!!

うぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!(再び)もうただただ“THE”つけたいだけじゃないか!ってツッコミは無視するとして、あの、悲しむでもない、辛そうにするでもない、寂しがってるでもない…。なんならうっすら笑っているかのような…。…うん、そう!!あれこそ、リアル“アルカイック・スマイル”!!古代ギリシア時代の彫像や、日本の仏像にも表現されているという、あの、なんとも言い難い、微笑!!こそ!!アルカイック・スマイルーーーーーー!!!!!そう!!そうなの!!!!そうなんだよ!!!(急にどうした)人間の心を失う…。それは、並みの“人間”であれば、感情を失う、思いやりを失う、やさしさを失う…ってことなんだけれど、おディーンのフジオカさまが演じるミッチーはね、あの時、あの瞬間、人間の心を失った代わりに、神へと昇華しちゃったの!!あの場面で、アルカイック・スマイルする、つまり、神へと昇華されたってことなの!!!!!そーゆーね!そーゆー、ことなの!!!!!(意味不明すぎる)これまで、天地創造、種の保存、アダムとイブ、ダビデ像とか勝手言ってたけど、それら一連が、あの、アルカイック・スマイルへの、伏線!!だったの!!!!今、ここで、繋がったのーーーーッ!!!!!!

で、でね、そんな前提(どんな前提)でね、その後のストーリーを追っていくとね。愛と憎しみは表裏一体って、よく言うけど、そこで“憎しみ”へと振れるのはね、通常の人間だけなのよ。だからね、神へと昇華されたミッチーはね、後半、航(渡邊圭祐)と対峙したシーンにて、航にものっすごく真っ当に、かっちょよく決められた、あのセリフ…。

「どうして放っておいたんですか!あんなになるまで!」

(いやいや、航…。いろいろあったんよ。こっちだっていろいろあったんよ。)

「泉美さん、ボロボロじゃないですか!」

(いや、マジで、そうなんだけど、こっちもボロボロやねん。)

「光井さんがそばにいながら…どうして…!」

(そばにいながらって…。こちとら“そばにいる”の最上級、“キッスしようとした”ってのに、拒否られとんねん。なんも知らんと!)

っていう、ミッチーサイドの心の声、丸カッコ内の、心の声、全てを、ミッチーは、神になってるもんだから、“無”、にするどころか、

「悪い!」

と、一蹴。

そして…、

「とにかく、顔を見てくる!」

…(溜息)…。

カッコえぇぇぇぇぇぇぇーーーーー!!!!!!!!!!!

ああもう、なんちゅう、カッコよさよ!!並みの人間(=僕)だったら、ついついツッコんじゃうような、下衆な、丸カッコ内の、言い訳の“い”の字も出さず、たった三文字で一蹴した挙句さ、クッソ男前なこと言える、おディーンのフジオカ演じる、ミッチー!!!超カッコえぇぇぇぇぇぇぇーーーー!!!!!!!!!!!つまりね、いろいろあったけどね、もう、だから、ミッチー、神!!!ってことなんだよ!!!!!!

…っというわけで、こんなわけのわからないテンションで、無理矢理咀嚼(そしゃく)しないと、あの“キッス拒否”はね、見られたもんじゃなかったよね…。無理だよ…。僕があんなことされたらさ、いくら比嘉ちゃん演じる泉美とは言え、泉美はすでにズタボロとか、どうでもよくなって、自分のことだけ考えて、出ていくよね…。俺、必要ないやん?こないだ自分からキッスしてきたくせに、今日は拒否るって、もう俺、必要ないやん?泉美なんかもう知らん!!俺のこの恥ずかしさどうしたらいいの!?今は、俺の、男としての、プライド優先じゃぁぁぁぁい!!!って、憤慨して、出てくよね。っていうか皆さんも、あんなことされたらそうでしょ!?ね!?(そうだと言って!)それなのに、やっぱり、一番に、泉美のことを考えて、かといって強引に場をとりなすでもなく、絶妙にちゃんと距離感をとって、泉美を見守る…。てさ、やっぱ、ミッチー、神、だよね?(結局)

…って、言ってはみたものの、その、強引ではなく、絶妙に距離感をとり、“見守る”を選択してしまったこと…が、皮肉なもんでさ、裏目に出ちゃったよね。だって、時に強引さや無理にでも距離感を縮めるための“情熱”は必要でさ、それを絶好のタイミングで行使できたのが、航だった…ってことじゃん?さすが、ヒロインのお相手!!って言っちゃったらそれまでなんだけど、やっぱり、どうしたって、泉美と航は、結ばれるべくして結ばれる、“運命”…ってことじゃん?はぁー、“運命”、あらがえねーー!!はぁー、どうして、恋って、こうも、うまくいかないものなのかね?いくら神となったお方でも、いざ、人間界のヒロインとなればさ(言い方)、振り向かないわけよ。むしろ人間味のある、航の情熱でもって、振り向く展開になる…わけよ。で、認めたくはないけれど、そんな展開になることに、なんら違和感が生じない、もうそっちが(そっち言うな)結ばれる運命ってのは、納得感しかない…。ここまでのストーリーテリングの巧さよね…。はー、しんどいけど、巧いよねー…。

だけど誤解ないように、まじめに弁解しますが、ミッチーも、ものすごく人間味あるのよ?矛盾する言い方だけど、ものすっごく人間味あるの!!!あるじゃん??俺、知ってるよ?ミッチーの人間味!!…だけど、その人間味…、がね、あまりにも達観してる=神的目線だった、って、そういう…、そういうことなのよ(どういうこと)。結局、今の泉美は、そういうの求めてない…ってことなのよ…。って、恋ってさ、フィーリングとか、タイミングとか、ほんのちょっと、すれ違うだけで、こんなことになっちゃうんだからね…。はー、恋、難しいわーーー!!(って俺、何者やねん)

で、本筋に戻すと(今まで何だったの…)。ラブコメだってのに(いや、コメ部分がもう怪しくなってきたよね)、大きな事件が起きたわけでもないのに、こんなリアルにヒロインが追い詰められて、どん底に落ちて、しかもあんな頼りがいがあって、美しいお顔のおディーンのフジオカさまが目の前にいながら(結局そこ)、メンタルが崩壊しちゃう…いわゆる“鬱展開”で最終回へ、って、そんなドラマある?なんちゅうリアルシリアス新展開!!だけど、それは、泉美の“推し”が、喪失されたことによって、こんなにも人をダメにしてしまう…生きていく糧を失ってしまう…“推し”は、これだけ、大きな影響を及ぼす…てことなんだよね。その辺、ホントに、ちゃんと“推し”について、真摯に考えられたドラマだよね…。やっぱり、“推し”は、アイドルだろうと、歴史だろうと、編み物だろうと、乙女ゲームのキャラであろうと、恋人であり、生きがいであり、人生でもあるわけじゃない?それを失うってことは、ああなっても、なんらおかしくないって、こと、ちゃんと描いてるってことじゃん?はー、もう、最後の最後まで、ホント、ちゃんとしてるわー。

って、もう、気付いたら、こんな字数!!“島”ディストピア再び!!とか、いう隙間なかったわ!!!ああもう!!来週の最終回、泉美にどんな救いが待ってるの?“推し”の喪失を、何で?どうやって?埋めていくの?結末は想像できてる…、そうだよね?ってのはあるんだけど、そこに至るまでの過程が、どうなるのか…?全く読めない!!!そして、何より、ミッチーに幸あれ!!!!

“島”ディストピアについて語っている、<コラム>『推しの王子様』第3話はこちら!

text by 大石庸平(テレビ視聴しつ 室長)

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