『推しの王子様』第8話完全版

航(渡邊圭祐)は、泉美(比嘉愛未)に好きだと伝えた。しかし泉美は、尊敬の気持ちを誤解しているだけだと返し、航の人生は航自身が作るものなのだから別々の道を歩こう、と突き放す。「今まで、ありがとう」。そう言い残して寝室に入ってしまう泉美。

翌朝、航は、泉美と顔を合わせることもなく、静かに彼女の家を出て行く。

それから8ヵ月が過ぎた。

「ペガサス・インク」が発表した新作乙女ゲーム「恋する森の中へ」は、史上最速で300万ダウンロードを記録する大ヒットとなり、航はそのプランナー兼デザイナーとしてテレビの取材を受けるなど、乙女ゲーム界のプリンスとして注目を集めていた。

「ペガサス・インク」から内定をもらった杏奈(白石聖)との交際も順調だった航は、多忙な業務の間を縫って、新作ゲームの企画書も準備。有栖川(瀬戸利樹)にそのことをバラされてしまった航は、泉美に企画書を手渡す。

一方、光井(ディーン・フジオカ)は、ゲーム会社を立ち上げた大学時代の友人・安藤(平原テツ)から、一緒にやろうとヘッドハンティングを受ける。何のためにペガサス・インクにいるのか、と安藤から問われた光井は言葉に詰まってしまい…。

ある日の会議で、泉美は、芽衣(徳永えり)から、「恋する森の中へ」の登場人物・月<ルナ>の表情について2枚のイラストを見せられ、どちらがいいと思うかと問われる。いつもなら即断即決するが、なぜか決められない泉美。光井は、そんな泉美の姿に何かを感じていた。

夕方、泉美の部屋へ光井がやってくる。近日中にランタンへの収支報告が予定されていたが、大きな利益を上げている「恋する森の中へ」とは対照的に、ペガサス・インク最初のヒット作「ラブ・マイ・ペガサス」はついに初めての赤字となっていた。

テコ入れをしてみると泉美に申し出る光井。そこで泉美は、事業拡大の必要性に言及する。航の企画書は素晴らしい内容だったが、今のペガサス・インクにはそれを実現させるだけの予算を組むことができないからだった。光井は、そんな泉美に、悩んでいることがあればいつでも相談してほしい、と声をかけた。

別の日、泉美のもとに、月役の声優に決まった駿河幸宏(武内駿輔)の所属事務所から、収録を週明けに変更してほしいとの連絡が入る。2週間以上の前倒しになるため、急すぎると主張する有栖川(瀬戸利樹)。泉美たちは、陸役の声録りを先に延ばすなどの対応に追われることに…。

その夜、杏奈のマンションを訪れた航は、声録りのスケジュール変更の件を話し、泉美の様子が変だと打ち明ける。そこで航は、今の自分があるのはすべて泉美のおかげだと、感謝の思いを口に。杏奈は、そんな航を複雑な思いで見つめていた。

同じころ、光井は有栖川を誘って行きつけのバーを訪れる。有栖川は、ライターを説得する際に大変な思いをしたらしい。その際ふいに、「光井さんって絶対、泉美さんのこと好きですよね」と言い出す有栖川。いつも光井がそばにいてくれる泉美は幸せだと言う有栖川に対して、光井は、本当に力になれているのか悩んでいる、と返し…。

週が明け、駿河の声録りが行われる日になった。有栖川は、急いで準備した台本を泉美にチェックしてもらうと、それを航にも渡す。その台本を読んで、怪訝な表情を浮かべる航。だが、航が何かを言う前に、スタジオへ向かう時間になってしまう。

泉美は、光井とともにランタンを訪れ、十蔵に収支報告をする。それを読み、満足そうな表情を浮かべる十蔵。するとそこに、有栖川から連絡が入る。駿河が台本に不満を抱き、声録りがストップしているというのだ。

泉美たちがランタンを後にしてスタジオに向かうと、有栖川と航は喫茶店にいた。航が、間違った台本を渡してしまったと言って駿河に謝り、自ら台本の手直しを始めたというのだ。航が直した台本を読み、何かに気づいた泉美は、それをコピーしてすぐに駿河に渡すよう航たちに指示した。

新しい台本を読んだ駿河は、その出来に納得し、声録りに臨んだ。完璧に収録をこなした駿河は、泉美たちに非礼を詫びた。自分の仕事に自信を持てなくなっていた駿河は、作品に情熱を持ち本気でオファーしてくれるスタッフと仕事がしたいと思っていたのだという。そんなときに、乙女ゲームに並々ならぬ情熱を持つと評判の泉美からのオファーがあり喜んでいたが、渡された台本の内容に「こんなはずはない」と困惑したらしい。

駿河は、最後にもらった台本は素晴らしかった、と礼を言って帰っていく。

仕事が残っていた光井と有栖川が会社に戻った後、泉美は、航とともにスタジオの後片付けをする。そこで航は、陸役の声録りにも来てほしい、と泉美に頼んだ。すると泉美は、有栖川と航だけで十分だと返す。そして、航の企画書を読んだが今のペガサスの規模では難しい、と航に告げると、台本を直してくれてありがとう、と言い残して去っていく。

泉美が会社に戻ると、ちょうど有栖川が帰るところだった。泉美は、まだ作業を続けている光井に、今回の台本のことを話す。実は、駿河が拒否した台本は、陸役のために書かれたものをベースにしていた。ライターが作業を間に合わせるために、陸役のセリフを、月役に変えて台本を作っていたのだ。それに気づいたのは、役作りを深く研究していた駿河と、航だけだった。

今までの自分ならそれに気づけたはずだと落ち込む泉美。そんな彼女に光井は、今、乙女ゲーム作りを心から楽しめているのか、と問いかけた。泉美は、乙女ゲームの何が好きだったのかを考えるようになり、どうしたらいのか分からなくて苦しい、と答える。

光井は、今までは自分の気持ちに正直だった泉美が、嘘をついて心に蓋をしてしまっているからではないか、と指摘。そこで泉美は、航から告白されたことを打ち明け、彼のことが好きなんだと思う、と光井に告げた。

しかし、泉美は、航の思いを拒否したことは後悔していないという。泉美は、光井のおかげでやっと自分の気持ちと向き合えた、と礼を言った。そんな泉美の姿に、自分自身も正直になろうと思った光井は、ずっと胸に秘めていた泉美への想いを告白し、一緒に生きていきたいと思っていると伝える。

だが泉美たちは、ドアの外で航がふたりの会話を聞いていたことには気づいていなかった。

そんな折、十蔵(船越英一郎)から呼び出された泉美は、ランタンの傘下に入らないかと持ちかけられる。ただし、その条件として十蔵が提示したのは、売り上げが低下している「ラブ・マイ・ペガサス」のサービスを終了させる、というものだった…。

<ドラマ『推しの王子様』はFODでも配信中(最新回は期間限定で無料)>