公開中の映画「ミッドナイトスワン」のヒットをうけ、10月9日(金)、主演の草彅剛と内田英治監督が日本外国特派員協会で記者会見を行った。
本作は、草彅演じるトランスジェンダーの凪沙が、ネグレクトを受けた親類の少女・一果を一時的にあずかるところからスタート。不本意で面倒を見始めた凪沙だったが、ともに時間を過ごすうちに母性が目覚め、また、一果は凪沙のサポートにより、バレエの才能が開花していくという物語。
胸をうつ草彅の熱演と、一果に扮した新人・服部樹咲の瑞々しい演技、本格的なバレエシーンが口コミで広がり、公開3週目となった今も、劇場に観客が押し寄せている。
登壇した草彅は「現在『ミッドナイトスワン』が公開中なんですけど、今日のこの会見によって、いろんな方に『ミッドナイトスワン』に関心をもっていただき、1人でも多くの方に作品の魅力が伝わることを願っています」と挨拶。
続けて、「いつもの会見とは少し雰囲気が違うこともあって、この作品が注目されていることへの実感もありますし、大きく遠くに羽ばたいていってるのかなっていう気持ちも感じています」と、海外メディアの外国人記者が居並ぶ会場に、緊張気味の表情を浮かべた。
<質疑応答リポート>
――トランスジェンダーの主人公を演じたいと思った理由を聞かせてください。
内田監督のオリジナル脚本を読んだ時、難しい役だなと感じたんですが、それ以上に、脚本から今まで感じたことのない温かい気持ちが込められていることが実感できて、この素晴らしい作品に参加したいという気持ちのほうが勝ってしまいました。すぐに撮影に入りたい、触れてみたいという気持ちになったので参加しました。
――草彅さんのまわりにもLGBTQの方はいますか?
友達にはいないんですが、今までの芸能活動において、一緒に仕事をさせてもらった中に何人かいました。皆さん、とても優しい方で、僕のことを助けてくれました。
――役作りはどんなふうにしましたか?
初めて脚本を読んだ時に泣いてしまって、その涙が何の涙なのかわからなかったんですけど、自分自身、素敵な涙だと感じたので、流した涙のエネルギーを役にのせることが一番の役作りだと思って、意識していました。
――撮影に入る前にどんな準備をしましたか?
監督からトランスジェンダーの方のドキュメンタリーのDVDや、監督がまとめてくださった資料をいただき、また、トランスジェンダーの方とミーティングする機会を監督がもうけてくださったので、だいぶ役に立ちました。
――作品の中では少女を育てる役を演じましたが、“母の気持ち”にどんなふうにアプローチしましたか?
僕が演じた凪沙というキャラクターは徐々に母性が芽生えていくので、そこはとても難しいところではあったんですけど、何かを育てる気持ちはジェンダーレスな世界というか、男性も女性も変わらないんじゃないかと。それは植物を育てるとか、自分の好きな工作、図工などもそうですけど、育んでいくような気持ちで演じるうちに、自分の中で「もしかしたらこれが母性なのかな?」と感じていました。
――最後に今日、お集まりの皆さんへあいさつをお願いします。
世界中の皆さんにこの「ミッドナイトスワン」を観ていただきたいと思っています。作品の中ではデリケートな問題も描かれていますが、皆さんがトランスジェンダーについて考えるきっかけになるといいなと思っていますし、自分自身、とてもいい映画に出演できたことが嬉しいので、この感動を一人でも多くの方に届けたいです。
会見後には、日本外国特派員協会から「またいつでも協会にお越しください。SMAP時代から何度もリクエストしていましたが、今日やっと実現し、協会にとっても記念すべき日になりました」と会員証が贈られ、草彅は嬉しそうな表情でこれを受け取っていた。