今週は涙が止まらない!
いつもノースリーブがちな隼人くん(遠藤健慎)にホロリ…
“教育虐待”を受けている梨花(永瀬莉子)ちゃんにホロリ…
突然登場した梨花ちゃんの母(長谷川真弓)にホロリ…
そしてまさか、あの梨花ちゃんの父(東根作寿英)にもホロリ…
っていうホロリ祭り…。
間、微笑ましい平和な光景から一変してしまう“地獄のそうめん流し”も挟まってくるってのに、そんな地獄が30分前にあったとは思えない程、後半怒涛のホロリラッシュが待ってます。
ですので、いつもの調子で、親子丼食べたくなる用に…って、鶏肉と卵を事前に用意するより何より、是非ハンカチのご用意を!
いやー、人生もドラマも、“単純”じゃないですよね?
突然どうしたって感じですが、今回のお話はそれに尽きます。
前回、さくら(真矢みき)の“餃子を皮から作っちゃうわよッ!”でさりげなく繰り出された“食育”ですが、その中で、隼人くんが餃子のタネを“10等分に出来ない”っていうくだりがありましたよね。あのくだり、実は、今回のお話につながる布石だったんですよ。 “10等分に出来ない”ってエピソードは、タロットカード使いの朝子ちゃん(倉島颯良)に「マジか…」とドン引きさせ、彼女の優等生ぶりを際立たせ、会話を賑やかにするっていう要素とか、隼人くんのキャラクターとしても、やんちゃ具合を表したり、良い教育を受けてこなかったんだ…っていう悲しい側面も持たせたり…、とそんな意味合いがあるんだな…程度でしか思ってなかった。っつっても、それだけでも十分、かなり練られたシーンだなって思うじゃないですか。だけど、僕みたいな素人が考えられる、それだけの単純なことじゃなかったのです。
今回序盤に描かれる、隼人くんの就職面接での振る舞いを発端にして、“10等分に出来ない”エピソードを振り返り、実はそれだけじゃない事情があるってことが判明し、そのことで彼の端々から垣間見えていた優しさが急にクローズアップしてきて、一気に感情移入して、序盤だってのに、ついついホロリ…となってしまうのです。
で、今回、その隼人くんのエピソードがあんまりにもいい感じだから、それ一本でいくのか、導入部でこれなら、今週どんだけ隼人くんで泣かされんだよって、ちょっと気合い入れなおしたりしたんだけど、そっから急に舵を切ってきて、第1話で登場した梨花ちゃんのエピソードが急加速。今度はそっちに大きく心を揺さぶられることになるのです。
そこでもキーワードなのが、“単純じゃない”ってとこなんです。
梨花ちゃんが受けていた“教育虐待”。梨花ちゃんだけに視点を合わせると、置かれた状況とか、思いとか、描かれる範囲以外のことも自然に想像してしまってとても複雑な感情になるけれど、“教育虐待”をしている側、つまり父親の視点に合わせると、感情移入を拒否しちゃってるもんだから(そもそも何にしても許されることじゃないし…)、「どうせ自分が昔東大は入れなかったとかそういうコンプレックス的なのでしょ?」って、どうしても単純に考えてしまいがち。それに加えてキャスティングが東根作寿英さんじゃないですか。ドラマウォッチャーなら、東根作さんが登場した瞬間、ついつい極端に“いい奴”・“悪い奴”って単純化しがちじゃないですか?(東根作さんに失礼)だけど、そこがミスリーディングにもなってて、全然単純じゃない、複雑な理由が隠されていたことがわかってくるのです。
ずっと疑問だった “梨花ちゃんは虐待する父の元へなぜ戻っていったのか?”というその深い理由も、突然現れた母親のエピソードと共に丁寧にひも解かれていき、どの立場からでも一方的に否定できない、哀しい事情が見えてきて、そんなこんなでとんでもない事件も起こっちゃうんだけど、大事件のその後に、ようやくちゃんと光明も見えてきて…梨花ちゃん、ひとまず良かったね…ホロリ…となってしまうのです。
で、そのホロリくらいで収まってたのを、大粒の涙へととどめさしてくるのが“梨花ちゃんの親子丼”。彼女が第1話で、“さくらの親子丼”を食べて、なぜ泣いていたのか?…それは、さくらの親子丼が沁みたから…ってそれだけじゃかったんですよ。っていうか別にそれだけでもいいじゃないですか。そういうお話なんだし。だけど、やっぱりそんな単純じゃなかったんです。そこのエピソードがこれまた素晴らしく練られてて、この第3シーズンから見始めた方は“?”になったであろう、さくらの元にやってくる子どもたちは揃いも揃って“親子丼”を知らないけれど、それにはちゃんと理由があるんです。なのでそのワケを改めて提示した上で、だけど梨花ちゃんだけは、なぜか親子丼を知っていた…その理由は?ってとこまで深掘って、丁寧に丁寧にエピソードを紡いでいくのです。
で、しかも、ですよ。そのエピソードを展開させるきっかけが、さくらの目線=親と、雪乃先生(新川優愛)の目線=子どもという、向けている目線の違いからっていうのもあって…。つまり全てにおいてちゃんと意味があって繋がっている。全てが単純じゃない、複雑で深ーい味のお話になっているわけなんです。その味を、是非、じっくり、ご堪能ください。
…で、皆さんがきっと気にしている…であろう、さくらの恋模様ですが…。前半に一発、その雰囲気を臭わすさくらの振る舞いでまたしても笑かしにきますが、今回はそこのみ…。残念…。なんだけど次回、ピュア高純度の真由子ちゃん(井本彩花)と大樹(細田佳央太)くんの恋模様とからめて、大きな展開が繰り広げられる予感…!あー、そっちも楽しみ!
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)