テレビマンの仕事の極意と、彼らの素顔に迫る「テレビマンって実は」。
現在フジテレビで放送中の『関ジャニ∞クロニクルF』(毎週月曜23時〜)の総合演出を担う姉崎正広、演出の田中良樹、北山拓が、番組の裏側を語る。
『関ジャニ∞クロニクルF』は、関ジャニ∞のメンバーが共通して持っている“遊び心”を前面に押し出し、彼らの人間的な魅力を伝えていく、バラエティ番組だ。
全4回にわたる連載の第3回目では、バラエティ番組作りの醍醐味やテレビマンとしての心意気、関ジャニ∞との出会いについて聞いた。
第2回<「関ジャニ∞は、毎回オンエアを見てリアクションしてくれる」演出陣が明かす関ジャニ∞の素顔>は、こちら!
コロナ禍の制約は、現状を打破するチャンス
――バラエティ番組制作のどんなところに、やりがいを感じますか?
姉崎:このコロナ禍の“制約”に感じますね。今は、YouTube、Netflix、Amazonプライム、そしてテレビ…と、特色あるコンテンツが群雄割拠の状態です。そんな中で、さらにコロナ禍の制約が生まれたからこそ、テレビならではのクリエイティブな発想ができるのではと思います。
イレギュラーなことが起きたときに、どんな形でアウトプットするか、見せ方を考えなければなりません。現状を打破できるチャンスだからこそ、それまでの自分では思いつかなかったアイデアが浮かび、新企画になる。思うようにいかず、つらいこともありますが、今までと違う思考になっているので楽しいです。
――姉崎さんにとって、ターニングポイントになった出来事はありますか?
姉崎:関わる番組すべてが、ターニングポイントだと思っています…って、妙にカッコよく聞こえたら恥ずかしいですが(苦笑)。バラエティ番組のテレビマンにはそれぞれ、お笑い、料理、スポーツ、情報…など、何かしら得意分野があると思います。
僕も昔は、「お笑いだけ得意ならいいか」と思っていましたが、いろいろな番組を担当することで、各分野の引き出しがちょっとずつ増えました。すると、できる仕事が増えたんですよね。あのディレクターさんにドキュメンタリーをやってもらおうとか、あのスタッフにお笑いを任せたら面白くなるかな…とか。武器をいろいろ持っていた方が、クリエイティブの幅が広がると感じました。
その考え方は『関ジャニ∞クロニクルF』でも活きていますが、まだまだ発展途上だと思っています。だから、自分でも撮影したり編集したりと手を動かしていますし、YouTubeなどの動画も見ますし、常に勉強ですね。
――田中さんが感じる、バラエティ番組作りの醍醐味を教えてください、
田中:改めて話そうとすると、なんだか恥ずかしいですね(笑)。僕はテレビの力で、見てくれる方の人生を良くしたいと思っています。『関ジャニ∞クロニクルF』で、関ジャニ∞の個性を出すことにこだわっているのも、僕自身が関ジャニ∞に人生を良くしてもらったからなんです。
『関ジャニ∞クロニクルF』の初回放送は、まだスタッフとして関わる前に収録されたものだったので客観的に見ていたんです。ところが、そこで流れた関ジャニ∞の曲「友よ」が、心にガンガン刺さって。「めちゃくちゃカッコいいアイドルだな」と、関ジャニ∞の魅力を初めて知りました。
実はその時、『関ジャニ∞クロニクルF』のスタッフに決まったものの、今まで担当してきた番組と毛色が全然違ったので、自分に自信がなかったんです。でも「友よ」を聞いたら、自分の状況と重なる部分が多くて。関ジャニ∞は単なるアイドルではなく、これまでの山あり谷ありの歩みを経た、あの瞬間にしか出せない魅力が光っていて感動しました。男が見てもカッコいい男というのも、すごく素敵でした。
――関ジャニ∞との出会いは、田中さんにとって大きなきっかけだったのでは?
田中:今思い返すと恥ずかしいんですが、「友よ」を聞いて、姉崎さんに決意表明のようなLINEを送っちゃいました。「僕の心に刺さったので!頑張ります!」という感じで…。
姉崎:LINE、きましたね(笑)。熱量がすごかったですよ。
田中:こうやって僕みたいに感動してくれる人が1人でも増えてほしい、関ジャニ∞の魅力をもっと世に伝えたい、そのためには関ジャニ∞5人の個性を知ってもらうことだ、と思いました。この番組が誰かのプラスになってほしい――どの番組でも常にそう思っていますが、『関ジャニ∞クロニクルF』は特別です。
苦しい気持ちは「1滴の墨汁が染みていくよう」に広がる
――みなさん、アツい思いをお持ちですね。北山さんはいかがですか?
北山:僕は、お2人と少し違うかもしれません。僕が面白いと思うことは、周りはあまりそう感じていないことが多いので、どんなに小さなことでも、みんなに面白いと思ってほしいんです。
例えば、これまで担当してきた番組『ENGEIグランドスラム』や『ネタパレ』からは、チョコレートプラネット、EXIT、ニューヨーク、かが屋、宮下草薙…などの芸人さんが徐々に頭角を表し、みんなが「面白い!」と言ってくれたことがすごくうれしかったんです。
僕の中では、その対象がお笑いから人物や物事に変わってきています。それこそ『関ジャニ∞クロニクルF』のサウナも、いかに面白い体験として世の中にリーチできるか挑戦したいですし、いずれは文化としてもっと浸透したらうれしいです。
――逆に、番組作りで大変なことや苦しいことはありますか?
姉崎:番組作りって面白いから、つらかったことは忘れちゃうんです。苦しいことも全部、達成感につながる。
北山:AD時代に、先輩から「この仕事は、苦しいって思い始めたら苦しくなっちゃうよ」と教わりました。例えるなら、自分の心の中に白い半紙があって、墨汁を1滴垂らすと、じわーっと広がって半紙が真っ黒に染まるように、しんどくなる。いかに苦しいと思わないかが鍵です。しかしそうは言っても、多くの人は「テレビの仕事は楽しい」という気持ちがベースにあると思います。
よく、就職活動中の学生さんから「しんどくないですか?」と聞かれます。いや、正直しんどいですよ。でも、しんどさを上回る楽しさがたくさんあるから、充実感があるんです。逆に、毎日9時から17時までなんとなく働くというのは、体力的にはしんどくないと思いますが、僕の場合「果たしてそれで、自分がやりたいことはできているのか」と考えてしまうんです。
最終回<「放送を見ながら、めちゃくちゃエゴサしてます」『関ジャニ∞クロニクル』演出家の本音とは?>では、最前線でバラエティ番組作りに関わる、テレビマンの“本音”を聞いた。
<『関ジャニ∞クロニクルF』これまでの放送は、FODで一挙配信中!>