11月8日(日)、ミュージカル「プロデューサーズ」の公開ゲネプロが行われ、井上芳雄、吉沢亮、木下晴香、吉野圭吾、木村達成、春風ひとみ、佐藤二朗らが参加した。

本作は1968年の同名映画をもとに、2001年にブロードウェイで舞台化され、その年のトニー賞において新作ミュージカルが受賞可能な13部門のうち、史上最多の12部門で最優秀賞を受賞した大ヒットミュージカルの日本版。

主人公の落ち目のプロデューサー・マックスを井上芳雄が演じ、マックスに巻き込まれていく気の弱い会計士・レオを、今回がミュージカル初出演となる吉沢亮と、大野拓朗がWキャストで務める。

井上芳雄
吉沢亮

また演出は、数々のヒットコメディ作品を生み出している福田雄一が手掛ける。

笑いと華やかさが味わえるミュージカル

ブロードウェイのプロデューサーであるマックスは、かつてヒット作を生んだものの、今は落ちぶれて破産寸前。金持ちの老女をたぶらかしてはスポンサーをさせている。

物語はマックスが栄光の日々を回想するところから始まる。井上は過ぎし日の輝きをたたえた姿も垣間見せながら、マックスの悲哀を圧倒的な歌で表現。観る者を一気にステージへと引き込む。

そんなマックスのもとへ気の弱い会計士のレオが帳簿を調べると言ってやってくる。吉沢と言えば、その美しい顔立ちが注目されがちだが、それとは正反対のこういったちょっと難点を抱えた役柄を演じるのが非常に上手い。扉を開けてステージに出て来た瞬間から、情けないレオがそこに現われる。

レオは帳簿をチェックしていると、舞台が成功するよりも失敗したほうが利益を生むことに気づく。それを聞いたマックスは、わざと舞台を失敗させ、資金をだまし取るという詐欺を思いつき、レオを誘う。犯罪であるため迷うレオだが、現在の事務所がブラック企業だったことが引き金となり、マックスとともに最悪のシナリオ、最悪のスタッフ、最悪のキャストを集めて、大失敗作を作り上げることを決意する。

マックスの巧みな誘いに徐々に心が揺らいでいく過程を演じる中で、吉沢は子どもの頃から大事にしているタオルケットを取り上げられ、気がおかしくなる様子や、マックスと組むことを決意する心情を歌で表現するシーンなどを熱演。ミュージカルは今回が初挑戦だというが、歌も堂々と歌いきり、ミュージカル巧者の井上とも渡り合う演技を見せる。

一方、“ミュージカル界のプリンス”と呼ばれる井上も福田雄一が手掛けるコメディの世界を楽しみ尽くしているよう。老女との絡みもコミカルにこなし、木下晴香が演じるウーラの魅力に翻弄される場面も、エロティシズムと笑いを絶妙にミックスした演技で魅せる。

福田組常連と言われる佐藤二朗演じるフランツ・リープキンの予測不能な行動に笑いが堪えられなくなったり、吉野圭吾&木村達成が演じる強烈なゲイ・カップルのやり取りに圧倒されたり、ちょっと抜けたところのあるセクシーなウーラにニヤリとしてしまったり、笑いどころ満載の本作。

佐藤二朗

お金持ちの老女を言いくるめて資金を調達し、ヒトラーをこよなく愛するフランツが書いた「ヒトラーの春」というハチャメチャな脚本に、最低の演出家であるロジャーとその助手カルメンのゲイ・カップル、主演女優には英語が話せない女優志望のウーラを迎え、舞台は大コケ間違いなしと思われたのだが…。

<マックス役/井上芳雄、レオ役/吉沢亮、大野拓朗、演出/福田雄一 コメント>

左から)福田雄一、吉沢亮、井上芳雄、大野拓朗

――自己紹介をお願いします。

井上芳雄:マックス・ビアリストック役の井上芳雄です。マックスはブロードウェイのプロデューサーで、今は落ちぶれているという役です。

吉沢亮:レオ・ブルーム役の吉沢亮です。レオはホワイトホール・アンド・マークス事務所で働く会計士の役です。会社名にホワイトとあるんですけど、実はブラックな会社で…(笑)。そこで働く気弱な会計士です。

一同:あ、ブラックだったんだね(笑)。

大野拓朗:同じくレオ役の大野拓朗です。レオはホワイトホール・アンド・マークス事務所という、会社名にホワイトとあるんですけど、実はブラックな…はい!(笑)。

井上:同じ役なんだから、同じだよ!

福田雄一:演出の福田雄一です。

――稽古中のエピソードを教えてください。

井上:福田さんがいらしてからの稽古3日目には「一幕を通す」と言われ、「嘘だろう」と思ったんですけれど、必死に覚え、そして続けて二幕を覚えて、必死すぎてそこからの記憶があまりないんです(笑)。とにかく毎日全力でふざけるというのをやっていました。

「どうなるんだろうな」と思いながら稽古していたんですが、なんとかなるんですよね。劇場に来て、こうして出来上がって、夢を見ているようです。

福田:みんな(稽古中)、とても楽しそうでしたよ!

吉沢:僕は今回ミュージカル自体が初めてで、まわりのみなさんは本当にミュージカル界の素晴らしい方ばかりで、最初の歌合わせであまりのレベルの差にすごく苦しくなって。

仲間は(フランツ役の佐藤)二朗さんだと思っていたんですけれど…(笑)。意外と二朗さんがミュージカルらしい歌い方をされていて、「おい、嘘だろ」と、裏切られたと思いました(笑)。なので僕は、必死に頑張っているところです!

大野:僕はコメディが大好きで、芸人さんにも憧れてて。だからこそ福田さんの作品にも憧れていて、やっと今回初めてご一緒させていただけることになって、「よしやるぞ!」と思ったんですけど、自分が全然おもしろくなくて…。

一同:ちょっと、ここは反省の場所じゃないから!これから始まるんだから(笑)。

大野:いや、こういうところなんです。僕、真面目なんです(笑)。

井上:本当に真面目な人は、自分で真面目って言わないから!もう一周まわってふざけてるでしょ(笑)?でも、本当にみんながおふざけを持ち寄る現場なので、すごかったです。

福田:そうですね、アンサンブルから(笑いを)突っ込んでいくからすごいよね。

大野:笑いをこらえるの大変でした。芳雄さんがすごいのは、立ち稽古の初日からセリフが全部入っているのに加えて、ひとつひとつの笑いにも全部に突っ込んで返していくんですよ。

吉沢:ほんとうにすごかったです。

井上:いまだにみんな違うことするから、いまだに落ち着かない(笑)。それに楽しくなると、どんどん自分もふざけちゃうんですよね!もう、上演時間が短くなる気がしないです!一言でバシッと突っ込めるようになりたいですね。

福田:僕はWキャストが初めてだったので、ちょっとドキドキしました。稽古も難しくて。でも結果的に良いWキャストの形になったと思います。

――福田さんから見た井上さん、吉沢さん、大野さんの印象は?

福田:芳雄くんはもう芳雄くんだから!芳雄くんって、ミュージカルになると全然違うんですよ。ミュージカルでは初めてご一緒したんですけど、口から声が出ているのではなくて体の全体から声が出ている感じでした。

吉沢くんは、初めてのミュージカルということもあって、舞台役者っぽい芝居をしないのでそれがすごく新鮮でおもしろくて、一方で拓朗くんが王道のミュージカルのプリンスっぽく演じるので、個性が分かれてとても良いWキャストになったと思います。

井上:それぞれ違っていいですよね。(一緒に)やるほうは大変ですけどね!(笑)

――本作の見どころを教えてください。

井上:劇場に来てみて驚いたのが、舞台がめちゃくちゃ豪華なんですよ。今年は大変なことがいろいろありましたけど、そんな一年の締めくくりに、こんなに豪華なこんなにバカバカしいミュージカルを、この渋谷でできることが、なんて幸せなんだろうと思います。

みなさんが想像するより数倍豪華な舞台が出来上がってるんじゃないでしょうか。現実を忘れられる、ミュージカルらしいゴージャス感があります。

吉沢:豪華なんです。

一同:(笑)。

吉沢:いや、セットを見て、びっくりしちゃって、もしかしてこれ、ホントにミュージカル!?と思いまして(笑)。

井上:今までなんだと思ってたの?(笑)

吉沢:もちろんキャストのみなさまも素晴らしいですし、こんなに贅沢な環境でミュージカルの初舞台を踏めるということが幸せです。

大野:いやもう、豪華ですね。

一同:(笑)。

大野:Wキャストの特権は、客席から自分が出ているシーンを見られることなんですけど、本編ラストのマックスとレオの二人のシーンとか、めちゃくちゃ豪華です!

――最後にメッセージを一言お願いします。

井上:ブロードウェイのオリジナル版の振り付けをそのまま使っていまして、ブロードウェイのスタッフや日本のスタッフのみなさんの尽力によって今に至っているので、今の時点で感無量です。そういった今までの多くのみなさんの努力やエネルギーに応えるべく全力でばかばかしいことをやっているので、2020年最後に大笑いしにシアターオーブに来ていただけたらうれしいです!

公開ゲネプロ&インタビューの模様は動画でチェック!

最新情報は、ミュージカル「プロデューサーズ」公式サイトまで。