さまざまな世界で活躍するダンディなおじさまに、自身の半生を語ってもらう「オヤジンセイ~ちょっと真面目に語らせてもらうぜ~」。

年齢を重ね、酸いも甘いも経験したオトナだからこそ出せる味がある――そんな人生の機微に触れるひと時をお届けする。

今回は、「ゲッツ!」のギャグでおなじみの芸人・ダンディ坂野が登場。前編では、田原俊彦に憧れて上京し、お笑いの養成所へ。そして36歳で「ゲッツ!」のギャグで一世風靡してブレイクを果たすまでを振り返ってもらった。

<前編>インタビューはこちら

後編では、ブレイクから一転「一発屋」の代表格と呼ばれるようになった心境、それでも腐らずに自分を持ち続けられる信念について、そして現在、力を注いでいる音楽、YouTube活動について聞いた。

インタビュー後半では「今の人生でなかったら、なりたかった職業」にも変身してもらった。

「いつの間にか一発屋を引き連れるリーダーに」

「ゲッツ!」でブレイクして忙しい日々を過ごしていましたが、徐々に仕事は減っていきました。ブレイクするとどんな人でも、2、3年経つと旬ではなくなり、「見かけなくなったね」ってなってきます。

「一発屋」と呼ばれるようになり、僕も「ゲッツ!」のほかに何かできないかを実際に考えたこともあるんです。でも結局、「今が旬な人vs旬じゃない人」みたいな構図の中の、旬じゃない人の代表で、“ゲッツ!の人”としてしかテレビに出る術がない。僕はその団体のリーダーとして矢面に立つ役回りが多くなり、立ち回りも上手くなってきて、だんだん一発屋を引き連れるリーダーみたいになってきちゃった(笑)。

もちろん、最初のうちはすごい嫌だったんです。あれだけスターに憧れてやっとテレビに出られるようになって、歌まで出してと思っていたら、世間が悪いわけじゃないし誰も悪くないんですけれども、僕の中では手のひらを返されたような気になってしまった。

でも、本当の一発屋というのはテレビに出ないですし、痛々しくて使えないと思います。僕はお笑い芸人が痛々しいのは嫌なんです。楽しくみんなとワイワイやって、一発屋と自ら名乗っているくらいがちょうどいいのかなって。

「変わらない“ゲッツ!”のために」腐らずにいられたのは田原俊彦さんのおかげ

ネタについては人から馬鹿にされてもいいけれど、「ゲッツ!」をやっている姿勢については誰にも何も言われたくない。こうして今でも“ゲッツ!の人”としてやっていけているのは、あまり腐ったりせず、感情を出さずに、ただ好きなことをやって変わらない姿勢でいたのが良かったのかもしれませんね。

これは大好きな田原俊彦さんの影響もあると思うんですけれど、田原さんは常にシュッとしていますよね。60歳にして、踊れるし、歌うし、鍛えているし、かっこいいし…スターだなーって。そういう田原さんだから好きだったわけで、僕も変わらなくいようと思わせてくれる存在です。まあ、芸とは関係ないところなんですけれども(笑)。

変わらない「ゲッツ!」のために、見た目も変わらないようにしようと心がけています。忙しかったときとは違い、今は肌にも気をつかっています。風呂上がりに化粧水と乳液をつけて、マッサージしてシワを伸ばして、寝る前にコップ2杯の水を飲んで、ビタミンのサプリを飲んで…ということをやっています。

今、ブレイク当時を思い起こすと、あんなに仕事を抱えられる人間じゃなかったなって思います。当時の仕事量を100としたら今は20くらい、今のペースで目一杯こなせているなら、自分にはこれぐらいがちょうどいいのかなって。でもそれはちゃんと自分で自分をわかってないとできないことなんでしょうね。これ以上高望みをするとまた自分が無理しちゃうので、「ゲッツ!」でできることを一生懸命やっていこうというだけですね。これが僕の生きる道だと思っています。

「そのうち踊りたい」音源、撮影、編集まで…昭和感あふれるYouTubeチャンネル

去年の春ぐらいからコロナ禍で、地方・都内のイベント営業がほぼない状況になったので、空いた時間で歌と音楽を独学で勉強しはじめました。自分のYouTubeチャンネル(「ダンディ坂野 だんさかch ダンミュージック音楽出版」)に歌っている動画を公開したくても、カラオケの音源は使用できない。でも自分で作った音源はセーフなので、昔歌いたかった曲を自分のキーに合わせたトラックを作って歌うようになりました。

「ダンディ坂野 だんさかch ダンミュージック音楽出版」

半分趣味の動画なので、他には料理をやったり、ゲーム実況をやったり。以前は週に1本のペースでしたが、だんだん仕事のほうもコロナ対策を徹底されて復活の兆しが見えてきたので、最近は2週間に1本のペースですね。とはいえ編集も自分でしているので結構大変です。でもそうやってコツコツやってる自分が好きだったりするんですよね(笑)。

動画を見てもらうとわかりますが、自分を背景より小さくしています。理由としては、55歳のおじさんがアップで歌っている姿って、自分の中でナシなんです。なので昔のレーザーディスクカラオケでよくあった、同じようなシーンがずーっと流れて歌詞だけが進んでいる映像をイメージして。カラオケのレーザーディスクと、ワイプの中でアイドルが歌っている「芸能人水泳大会」を混ぜたらあんな感じになった(笑)。まだチャンネル登録者が少ないんですが、もうちょっとみんなに見てもらえたら、この昭和な良さをわかってくれる人が現れるんじゃないかなって期待しています。そのうち踊りたいなとも思ってますが(笑)。

SNSでもそうですが、発信する際に気をつけていることとして、自分にまだ小さい子どもがいるというのがあります。親がこういう仕事をしているので、なるべく嫌なことは言われないようにしたい。「面白くないな」っていうのは置いといて、せめて「お前の父ちゃん嫌な人だな」と言われないよう、毒を持たない言動を心がけています。

目指すのは無理をしない「二刀流」

歌もどんどんやっていきたいです。今回、大石まどかさんのデビュー30周年記念シングル「茜の炎」に収録されている「愛が生まれた日」にデュエットで参加させてもらいました。大石さんとのデュエットは最高でした!ただ、女性の声に合わせて作られたキーの曲なので、僕にはキーが高かった。

「ダンディが合わせて歌えばいいんじゃない?」っていう現場の空気がなんとなくあったので、突貫工事でボイトレをしました。そうしたら声が出るようになって、「本番に強い子」なんて言われたりして、ちょっと天狗になりそうだったんですけれども(笑)。歳も歳だし、高い声なんて出ないって思っていたんですが、やればできますね。一生懸命歌っているので、ぜひ聴いていただきたいです。

今後の展望は「二刀流」です。これからも“ゲッツ!の人”として高らかに「ゲッツ!」をやっていくんですが、希望が叶う範囲で歌や音楽のお仕事をやれたら本当に最高です。田舎でトシちゃんに憧れていた少年の人生が、良いかたちで最後まで送れそうな気がしますね。

ダンディ坂野、アイドルになる

「もし、芸人になっていなかったら?違った自分になってみてください」。その質問に、ダンディ坂野から返ってきた答えはもちろん「アイドル」。田原俊彦になり切って撮影された写真をお楽しみあれ!

憧れの田原俊彦のヒット曲をBGMにノリノリで踊り、ポーズを繰り出してくれたダンディ坂野。最後のカットはアイドルのブロマイド風に素敵な笑顔をキメてくれた。

ダンディ坂野公式Youtube

ダンディ坂野公式Twitter

撮影:河井彩美