『監察医 朝顔』(第2シーズン)第3話完全版
朝顔(上野樹里)たちが暮らす万木家に、野毛山署強行犯係の係長・山倉(戸次重幸)が突然訪ねてくる。山倉は、平(時任三郎)が保育園でつぐみ(加藤柚凪)を引き取って帰宅するまで、雨の中、傘もささずに万木家の前に佇んでいた。
平が事情を聞こうとしても、泣くばかりで何も言わない山倉。遅れて帰宅した朝顔や桑原(風間俊介)も、突然のことに困惑する。朝顔が夕食の支度を整えたころ、ようやく落ち着きを取り戻した山倉は、事情を打ち明ける。野毛山署に他の県警から優秀な人材が来て、山倉に代わって強行犯係の係長になるというのだ。平と桑原は、まだ決まったわけではない、などと山倉をなぐさめつつ、一緒に酒を酌み交わす。
あくる朝、山倉は、朝顔たちが目を覚ます前に万木家を後にする。テーブルの上には、山倉がおわびのしるしとして作ったパエリアがあった。
そんな折、朝顔は、検視官の丸屋(杉本哲太)から電話で呼び出される。朝顔が向かったのは、山梨と神奈川の県境にある田園地帯だった。朝顔が、遺体が見つかったという小さな倉庫に案内されると、そこで丸屋と、神奈川県警から山梨県警に異動になった旧知の検視官・伊東(三宅弘城)がもめていた。
第一報は自分たちの方が早かったのだから山梨県警が調べる、と主張する伊東に対し、この件は神奈川県警がずっと追っていた、といって譲らない丸屋。すると、伊東とともに現場に来ていた山梨医大の法医が、解剖の予定が詰まっていると言い出したため、この件は朝顔が調べることになる。
神奈川県警の刑事・西野(樋渡真司)によれば、遺体は農具倉庫で見つかり、第一発見者は所有者が亡くなったために調査に訪れた市の土木課職員だという。遺体は完全にミイラ化しており、付近に身元を確認できるようなものもなかったため、年齢や死亡時期の特定は困難だった。
そして、奇妙なことに遺体はタキシードを身に付け蝶ネクタイをしていた。そこで丸屋は、この遺体は重大事件の容疑者かもしれない、と朝顔に打ち明ける。
それは約20年前、資産家のクルーザーパーティーで人質をとって立てこもり、身代金を要求した佐竹龍二という男だった。この事件では、銃を乱射した佐竹によって人質3名が犠牲になっていた。佐竹はタキシードと蝶ネクタイ姿で逃亡しており、直後、友人に「もう逃げきれないから自殺する」と連絡して、そのまま消息不明になっていた。
朝顔や茶子(山口智子)らは、ミイラ化した遺体をCTスキャンして画像データを得た後、解剖を行った。しかし、内臓解剖所見のみでは個人を特定することは困難だった。
続けて、法歯学者の絵美(平岩紙)が、遺体と、桑原が持ってきた佐竹の歯科記録を照らし合わせた結果、このミイラ化した遺体は佐竹ではないことが明らかになる。光子(志田未来)は、遺体から採取した虫が気になっているようだった。
あくる日、朝顔は、保育園の遠足で、つぐみと一緒に潮干狩りに行く。その夜、万木家の食卓には、アサリを使った料理が並んだ。朝顔は、帰宅した桑原に食事を用意すると、平が転出届を用意していることを打ち明けた。「お父さんがしたいことだから、思うようにさせてあげたい」。朝顔はそう桑原に告げた。
さまざまな検査の結果、ミイラ化遺体の詳細が次第に明らかになる。歯の象牙質から取り出したアスパラギン酸の検査で、年齢は65歳プラスマイナス2~3歳と推定された。また、薬物検査の結果、肺高血圧症の基礎疾患があることもわかる。
そこに飛び込んできた光子は、朝顔を生物学保管室に連れて行く。そこで光子は、遺体についていた昆虫から、遺体は死後3ヵ月から6ヵ月程度だと告げる。実は光子は、こっそり法昆虫学の勉強をしていたのだ。
野毛山署の面々は、法医学教室が見つけた情報をもとに、遺体が行方不明者のリストにあった吉野紀夫という66歳の男性であることを突き止めた。
ほどなく、娘の佳奈(佐久間由衣)が遺体の確認に訪れる。だが、紀夫が何故タキシード姿なのかは、佳奈にもわからないという。小さいころに母を亡くした佳奈は、ずっと父とふたりで肩を寄せ合って暮らしてきたのだという。だが、ミイラ化した遺体と対面したせいか、佳奈は、父が死んだという実感がないと朝顔に話していた。
朝顔は、茶子に紀夫の死体検案書を提出する際、彼が何故タキシードを着ていて、倉庫で亡くなるまでどのような行動をとっていたのか調べることはできないか、と問う。茶子は、朝顔の気持ちに理解を示しながらも、仕事はここまでだと返し…。
その夜、朝顔のもとに、祖父の浩之(柄本明)から電話が入る。浩之は、次の休みにまた仙ノ浦を訪れる予定だった朝顔に、来なくていい、と告げる。朝顔と離れて留守番することになるつぐみが可愛そうだし、朝顔も疲れるだろうから無理をしなくていい、というのだ。
休日だった朝顔は、法医学教室を訪れ、もう一度茶子に、紀夫のことを調べさせてほしいと頼む。すると茶子は、休日に自分の時間を使うのなら何も言うことはない、と言ってそれを許可した。
朝顔は、遺体を調べた際にひとつだけ残っていたもの――胃から見つかった小さな骨を調べ始める。休憩時間を使って、そんな朝顔の手助けをする藤堂(板尾創路)や絵美たち。すると茶子もやってきて、骨を手に取った。そこで茶子は、この骨に見覚えがあると言い出す。
別の日、朝顔と茶子は、とあるフレンチレストランで佳奈を待っていた。実は紀夫は、亡くなる前にこの店である料理を食べていたのだ。それは、カエルを使った料理だった。この料理を提供し、ドレスコードがあるのは県内でこの店だけだった。店の支配人も、紀夫が同年代の女性と来店していたことを覚えていたという。
佳奈は、父親にそういう女性がいたことを知らなかったが、最後に少しでも幸せな時間を過ごせたのならその方に感謝したい、と言って朝顔たちに笑顔を見せた。
翌日、野毛山署では異動の内示が出る。山倉は、異動にならず、係長のままだった。そこにやってきたのは、伊東だ。伊東は、神奈川県警捜査一課の検視室長に配属されたのだという。丸屋は、伊東が上司になることが納得できず、警察を辞めると騒ぎ立てた。
その夜、朝顔は、浩之に電話を入れ、次の休みに仙ノ浦に行きたいと告げる。すると浩之は、「朝顔に黙っていたことがある」と返し…。
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