<コラム>フジテレビ『知ってるワイフ』第2話

第1話、鬼嫁の澪(みお)

VS

第2話、銀行員の澪、でせめぎあい!!

もう後半のアリスが…、いや俺のアリスが…、いやいや広瀬アリスさん演じるヒロイン、澪が健気すぎて、だけどもタフで、何よりかわいすぎて、何反応なのか自分でもわからない、涙ダラダラ流しながら見ちゃってたよね。僕、変態なのかな?

いやもうだって、主婦やってたときの澪、つまり第1話の澪はいつも時間に追われて、張りつめてて、イライラしてたのに、第2話の銀行員になってる澪は余裕があって、おおらかで、笑顔が絶えない、全くの別人なんだもの。で、その未来が変わったときの澪の魅力が今回、大爆発!!ってのは、それはそう。そりゃそうなんだけど、じゃあだったらなぜ第1話の、あそこまでのモンスターな澪になってしまったのか…。ってのを考え出すと、なんだか泣けてくるじゃあないですか。

それに加えて、中盤のハイライト。

大変な支店だから前任者は体重10キロも減り辞めた…という話を聞き、

「ここにいます!…体重、落としたいんです!!」

ハードなお客様トラブルに巻き込まれたのにも関わらず、落ち込むそぶりもみせず、大量のパンを貪りながら、

「(小声で)これじゃあ体重落とせませんね。へへッ」

“ズキューーーーーンッ!!”

こんなかわいすぎる澪を目の当たりにして、心撃ち抜かれなかった人、います?大抵の女優さんだったら嫌味になってもおかしくない「体重落としたいんです!!」ってセリフを超自然に言えて、“フンガッフンガッ”って泣いてると見せかけて…だけど全然泣いてると見せかけられてない、キュートすぎる擬音を発しながらサンドイッチ食べてる澪に、かわいすぎるーッ!!って、感動なのか、幸せメーター振り切れたのか、なんだかよくわかんない涙出てきたの、僕だけっすか?

うん、だけど、それに対してびくともしなかったのが元春(大倉忠義)だよね。僕ね、第1話の段階ではまだ元春の気持ちわかる派だったんですよ。そりゃあひどいところもいっぱいあったけどさ、澪があんな態度だったらしょうがないところもあるじゃないですか。それに夫の仕事の関係上、突発的な事件も起こるし、連絡できないことだっていろいろあるじゃない。だからそこまで家族のことも、奥さんのことも、思いやれないとき、あるよね…って思ってたんすよ。だから第1話終了後のみなさんの反応…元春に腹立ってる多くの人たち(笑)を見て、えー、やっぱり夫婦って難しいんだな…独身男性の反応…って感じだったのです。

だけど、今回の元春…。マジで、いったい何なん!?

さっきの「ズキューーーーーン!!」のくだり、矛先は全部、元春に対してで、「体重落としたいんです!!」があまりにもかわいかったもんだから発端を忘れちゃうけど、それ、元春が身勝手に、何とか自分から遠ざけようとした挙句だからね…。元春、マジでなんなん!?で、冒頭ですよ。沙也佳(瀧本美織)から突然ほっぺにキスされた…と思った次の瞬間、速攻唇いっちゃうし、いやそもそも沙也佳も沙也佳で、初デートでいきなり、あんな街中で、急にほっぺにチューかますとか、むしろあえてほっぺにチューどまりにしといて、相手から唇を奪う方向へ促す周到な作戦にも見えたりするよね…とかそういう邪推も入りつつ、未来が変わり、ドリームすぎる夫婦生活で、その未来でもほっぺにチュー攻撃が繰り返され、優雅なモーニングルーティンを堪能後、銀行へいつもの感じで、遅刻上等で出社してようやく…。「妻だけでなく子どもとも別の人生になってしまった…」という事実に気付くわけだけど、まあそこは、かなり遅いけども、結構本気めで泣いてるから良しとするか…。なーんて思ってたのも束の間。マッハで切り替えて「俺は、幸せに生きていく!!」ってなっちゃう元春、マジでいったい何なん!?

そして、さっきのかわいすぎる2コンボを受けても、なんらびくともしない、いや、そりゃあ第1話のモンスターっぷり、帰宅直後、ズワイガニをぶん投げてくるような澪だったから、ちょっとやそっとじゃびくともしない?…のか?…いや、ちょっとは“びくっ”としてるから、あの胸キュンエンディングへとつながるんだろうけども、ポーカーフェイスを貫きまくる元春、っていうか大倉くんの微動だにしなさすぎる演技が凄まじすぎて、まじ何なん!?に拍車かかるよね。

で、そのすべての“いったい何なん!?”…なぜ澪は元春が好きなの!?…ってのが、全て、「運命だから…」へ、美しく、見事に、結びつかせようとする作劇のうまさよ。僕ら外野が何を言ったって、澪にとって運命の人は、まぎれもなく元春という事実…。彼がどんな人であろうとも、理屈じゃないよね…。澪の運命の人は元春なんだよね…って、まざまざと見せつけられるから、結局のところ、泣いちゃう…泣けてくるのです。

そして献身的なヒロインにイライラする主人公…って、まさに『東ラブ』(『東京ラブストーリー』)のカンチとリカじゃん!こりゃあもうおじさんにはたまらない構図っすよ。そして、肝心のさとみ的ポジションはというと、悪気はない挙動だし、別に何かが明確に腹立つってわけでもない…、デパ地下総菜(的なもの)を堂々と鍋に移し替えてる描写があるのに、目の当たりにしてる元春どころかドラマ上でもなんら触れない風にしてるのが…、なんか…恐怖…、な沙也佳、最高!1話のときは澪と対になって魅力爆発系で攻めてくるのかと思いきや、沙也佳にはもっと違った、ピュアからくる怖さがにじみ出てきまくってて…、こっちも目が離せない!!

そして、よくよく考えると、澪が普通に働いてたらあんなに社会性があって、スキルも高くて、お母さん(片平なぎさ)ともうまくやって(またあの場面の澪とお母さんの描写…素敵すぎたよね…)…って、やっぱり元春と結婚しなければよかったんじゃないか?って思わせるから、どこへどう転ぶのがハッピーエンディングなのか?全く読めなくなってきましたね。

あ、そうだあんまり澪のことばっかりに夢中だったけど、元春が“タクシー奪ったせい”で、結婚できなかった津山(松下洸平)の未来も結構ひどい話よね。あんな風に、「やっぱり別れられない!」ってドラマティックに追いかけていく津山のタクシーを奪って、己はドリームを手にし、津山は独身のまま…って、やっぱり元春、いったい何なん!?

text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)