なんて不思議なドラマ…。
夢と現実、リアルとファンタジーが交錯して、見終わった後、すっごくホッコリ、癒される…。
このドラマ、行き詰ってた40歳の主人公が、超高齢熟女バーで働き始める…って話なのに、なぜこんなにも癒されるんでしょう?
変に共感し過ぎてグッタリしちゃったり、お年寄りの頑張りを若造目線で愛でる=上から目線になるでもなく、ご老人からありがたいお言葉をいただく説教臭さもなく、熟女ヒャッホー!って変なテンションになったりするでもなく(それはない)、「女は、四十(シジュー)から!」って勇気をもらい、むしろ八十になったってもろともせず、八十だからこその輝きを放ちまくって、それが眩しすぎて、パワーをもらい、金言ももらい、歳を重ねることの素晴らしさまで感じられ、しまいには癒される…って、今までにない感覚!不思議なドラマ!!
それに、毎回言うけど、こんな健全でザワザワしない「オトナの土ドラ」久々?っていうかそんなのあった?(失礼)比較的癒し要素ある系の前作『さくらの親子丼』だって、毎回ザワザワ要素あったってのに、このドラマにはザワザワ要素、一切ないんだもの。いや、正確に言うとちょっとした“ザワ要素”、主人公が働く物流倉庫の“リストラ問題”ってのがあるけども、主人公はもうそんなところで戦ってないし、そんなのどうでもいいってくらい、人生切り開いちゃったもんね。もうそこへ足踏み入れちゃったら、そんなの関係ないよね。もっとずっと大切なもの手に入れたよね…ってこっちは安心しちゃうから、リストラ?は?ザワついてますけど何か?ってなもんですよ。
また今回のあらすじを超簡単に要約するなら、「新(あらた、池脇千鶴)、ダンスを習得する!」ってそれだけの話なのに、主人公と一緒になってなんだかワクワクしちゃうし、そのオチも、初めてのお給料が出て、それで新は“あるもの”買いました…ってのが、ホントになんてことない、“あるもの”って隠すほどでもなんでもない、ホントに誰だって想像つく、ありきたりなオチだったのに、そんくらいわかっちゃいるはずなのに、第2話のラスト、“あるもの”を買って颯爽と登場する新に、「素敵すぎるッ!ええ話やんッ!!」って自然とこっちが笑顔こぼれまくるの…。なぜなの?不思議ドラマ!!
で、今回のハイライト、中盤にある、ひなぎく(草村礼子)、ナマコ(久本雅美)、エリー(中田喜子)、くじらママ(草笛光子)、そしてマスター(品川徹)の“リアルな歴史”が垣間見える“Memory of JACK&ROSE”のシーンがまた不思議。
それは新が「OLD JACK&ROSE」の創業を紐解くアルバムを見せてもらうシーンなんだけど、そこで使用されている写真が、誰かが若かりし頃を演じた“作られたもの”ではなく、リアルな写真なんですよ。だからそれ、若かりし頃の“マチャミ”(久本雅美)だったりするんだけど、そこに映る“リアル”と、このドラマが纏うファンタジーとが絶妙に重なって、ドラマをさらに深いものにしていく効果を生んでいるのです。“マチャミ”だからって全然現実に引き戻されないし、このドラマで重要なのは“歴史”でもあるから、むしろその“リアル”な“歴史”のおかげで、脚本で描かれる以上の、キャラクターに深みを増すことに成功してるんですよ。だからむしろ、“作られたもの”だったほうが余計現実に引き戻されてたんですよね…。ここの部分、ちゃんとそう考えて、素敵な写真をいっぱい集めた人、マジでグッジョブ!!(偉そう)
そんなわけで、そんな不思議な感覚が味わえる“Memory of JACK&ROSE”のシーン。必見です。
そしてまた、池脇千鶴さんの凄さですよ。かわいいってのは女優さんだから当然そう感じるとして、ちゃんとおばさんになってるのって凄いですよ。行き詰った40歳独身女性が主人公のドラマって、大概こじらせてて、めんどくさいキャラになりがちで、今回のキャラも下手したらドンよりオーラ漂いまくりの、根暗な女…に、なりかねないのに、一つひとつのリアクションといい、挙動といい、そして今回見るとわかるんだけど、全体的にも1話よりずっとかわいくなってるんですよ。物語の経過とともにジワジワと変化まで見せつけてくる池脇千鶴…。恐ろしや…。
また今回、そんな池脇千鶴さんも素晴らしいし、80歳になったってゴージャス&ビューティでオトナなくじらママ、いくつになったって子どもっぽさを自然に放てるキュートなエリー、哀愁とダンディズムにもほどがあるマスター、心配しすぎず、だからと言ってしなさすぎずな友情関係が絶妙なみか(真飛聖)、機動力はあるくせに捜査能力はイマイチだったスミレ(江口のりこ)…などなど、超個性派俳優陣が繰り広げる、濃すぎるキャラクターの中、MVPに輝いたのは…、新の元カレ前園(山崎樹範)です。
もう初回の段階から、かっこよかないのにコミュ力高めで、人たらしで、それなりに周囲にもてはやされ、私生活も充実しがちで、それがすべて鼻についてた前園…山崎樹範さんに対してかなり失礼な言い方になってるけど、山崎樹範にマッチしすぎなんですよ…が、今回の第2話で、さらにさく裂します!
スマホ内にある「想ひ出」フォルダに、元カノ・新の若かりし頃の写真を格納してて、それを眺めながら「かわいかったんだよなー。この頃は…。」ってつぶやくシーン。視聴者全員「うぜーーー!!!」ってなること間違いなし!しかも、注目ポイントは「想ひ出」(またこの“ひ”が腹立つよね。なんなら“思”じゃなくて“想”なとこから腹立つよね)フォルダに格納されてる写真の枚数。あー、マジでウザイ。思い出しただけでもウザイ。さて何枚なのか?放送終了後のプレゼントクイズに出題されるのでそこもお見逃しなく!!(※冗談です。そんなクイズないです。)
そして、その「想ひ出」フォルダがさっきまで感動してた“Memory of JACK&ROSE”アルバムと並んで描かれるというこのドラマの性格の悪さですよ(いい意味でですよ?)。感動の後に、こんなクッソくだらなくてマジでウザイ男のフォルダの中身さらすんですからね。このドラマ、油断できないっすよ。
最後に、正直、このドラマを描く上で、この話題そんなに引っ張る意味ある?重要?ってちょっと思ってた“リストラ問題”が今回、なんと、絶妙なところで明るみになるというストレスフリー!その辺はトントン拍子の展開で進んでいきそうです。でまた来週が、今回キュートすぎたエリーの恋模様…。公式HPのエリーの紹介文を見てみてください…。“自称”59歳…、もうこの時点でかわいすぎる!!のにその下!“ボディタッチ多め”。…エリー、どんな人なん?いったいどんな仕上がりになるのか楽しみすぎる!
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)