いやぁ~、めちゃくちゃいい感じになってきましたよ!!

って言っちゃうと、これまでがいい感じじゃなかったみたいだけど、もちろんそんなこたない。これまでもすっごい良かったのに、さらに、さらにですよ?

もう何がいいって、「OLD JACK&ROSE」の濃すぎるメンバーのドラマに加えて、前回急激に関係性が深まった職場3人ですよ…。

すでに当たり前のように、みかちゃん(真飛聖)スミレちゃん(江口のりこ)と呼び合う感じとか、新(池脇千鶴)は和風ミニハンバーグを、みかさんはシジミのお味噌汁を、で、チームリーダー(スミレさん)はというと、バナナを持ち寄る…っていう三段オチランチタイムとか、「OLD JACK&ROSE」ではしゃぎ過ぎた朝、屋上で栄養ドリンクを並んで飲む3人とか…もうこのシチューションだけでもめちゃくちゃ良くないですか?で、それを、池脇千鶴さん、真飛聖さん、江口のりこさんという、三者三様過ぎる女優さんが演じるんだから良くないわけないし、しかも、それが四十(シジュー)女性なわけだから、定番の自分探ししてる女性3人!(特に30代がありがち)っていうのでは絶対味わえない、何てことない何気ない出来事が…、目標持ってるとか、ただ頑張って生きてるとか、そのレベルで異常に沁みてくる…そんなドラマになってきましたよ…。

で、また、今週は、新の弟(金井浩人)がコッソリ上京してきて、新の夜のお仕事が!バレちゃうの!?危機一髪!!ってな導入部で、その“危機一髪”に対して、新のコミカルな動揺も相まって、なんてワクワクする始まり方!!って気分になってたのに、いつだってそうなんだけど、僕がノンキに想像してるような、スラップスティック(ドタバタ劇)な展開に…、なるわけないよね…。そっからとんでもなく心底深いお話になっていくのが『その女、ジルバ』だよね…。

その弟のエピソードがさ、とてつもなく沁みるお話でさ…。そらね、前作『さくらの親子丼』で、“超最悪兄貴”(ホントにひっどい兄貴、ひどいとかいうレベルじゃない…犯罪者だったからね…)を演じてた金井浩人さんが、今回は主人公の弟なもんで(ややこしい)、うますぎるもんで、あの兄ちゃんが今やこんないい子になってねぇ…みたいな、よくわからない邪念もあって感情移入がすごいってのは無きにしもあらずなんだけど、弟が上京してきたことで判明する新と家族の関係性…、弟の人生…、そしてその背後にある“福島”と“3・11”というリアル…。それらの出来事がすべて巧妙に重なることで、まだ第1話の冒頭でほんのちょっとしか登場してなかった弟なのに、急に上京してきた何も知らないはずの弟なのに、これまでずっと新の家族を見てきたかのような、親近感と共感を覚えるのです。

ほんとに別にこれまで深く絡んできたわけでもないし、なんならドラマだってわかっちゃいるはずなのに、なぜだか猛烈に新の弟の人生を心底応援したくなる…そんな沁みまくりな場面の連続…必見です。

そして、ああ、ホントに弟…、夢…、叶えてほしいな…。って思うんですけど、そこで思い出して欲しいのは、今回のお話、まだ“2019年”ってことなんですよ…。そして第1話冒頭で2人は“マスクをしていた”ってことなんですよ…。ああ…、それはつまり…、それを考えると、弟の人生…今後、どうなってしまうのか…。新の今後も気になるのに、それに加えて弟…。非常に、心配…、気になりすぎる展開がまた増えました…。

っと若干暗い気持ちになってしまいましたが、今回、公式HPの人物紹介(=CHART&相関図)には載ってるはずなのに、いっこうに出る気配がなかった、中尾ミエさん演じる“チーママ”が満を持して登場し、そのパワーに圧倒されます!!

全然店に現れないくせしてなぜ“チーママ”なのか…。それは名前の真知(まち)をもじったから…ってだけじゃない、チーママのチーママすぎる秘話に笑っちゃったり、バーのお客さんも視聴者もお楽しみ!あの“ラインダンス”で、急にセンターをぶんどって、ひなぎくさん(草村礼子)にモロ被りしてくる厚かましさなど、さすがの中尾ミエさんで、パワフル炸裂しまくり!!…なんだけど、その勢いのまま、チーママが勝手に語りはじめる“ジルバの歴史”がとてつもなく壮絶でさ…。

明治時代までさかのぼる“ジルバの歴史”にはいったいどんなドラマが!?ってのが興味深いはもちろんのこと、そこで知られざる“福島”と“移民政策”のお話…、そしてそこに関連してくる“戦争”と“ 3・11”…。いつもノンキに見てる僕には、その辺の深さ、神髄までは絶対理解できていないんだけれど、ドラマとリアルが重なることで、とんでもなく考えさせられ、勇気をもらえる…そんなシーンになっていることは間違いありません。

そして、それは僕らにとってはすっごく教訓にもなって、登場人物たちにとっても元気を与えてくれる場面…ではあるんだけど、やっぱりこのドラマのすごいところは、その壮絶エピソードを“ありがたやー”ってだけにしないとこなんですよね。その壮絶エピソードを、“我が物顔で言いたい放題”と一刀両断するくじらママ(草笛光子)だったり、そのくじらママのセリフに対しても、“風化してしまうから、語り部だって必要なんだ…”とマスター(品川徹)に言わせたり…。その辺のバランス感覚が素晴らしいのです。だから全然説教くさくないし、純粋に心に届くし、沁みるんですね…。

とかなんとかいいつつ…。今回の主人公は、あのチームリーダーなんですよ…。ああ、思い出しただけでも辛い…。冒頭、職場の3人が“めちゃくちゃいい感じになってきた!”とか言ったんだけど、今回はそのチームリーダーが主人公だからこそ、あえて“めちゃくちゃ良くなってきた!”と思わせるエピソードをぶっこんできたんですね…。いい感じになってきたところへ訪れる突然の不穏…その落差が辛い…。

とにかく中盤に訪れる衝撃(画面に向かって「えー!」って叫んじゃったよ)と、その後、あぁ、よかった救われた…って展開が挟まったってのに、最後、とんでもない絶望ラストを迎えます。ですので、最後の最後まで、油断せずご覧ください!!(次回予告の明るさがなかったら、とんでもなく鬱な夜になりそうだったよ…。)

text by 大石庸平(テレビ視聴しつ 室長)