チームリーダーのスミレさん(江口のりこ)が、リストラの危機!?しかもパワハラで…って話が、まさかこんな結末になるとはね…。

うん、だけど、ご安心ください!前回の、チームリーダーが泣きながら膝から崩れ落ちる…その手には退職届…みたいな、あまりに絶望すぎて、辛くて哀しくてやり切れなくて、もう息苦しくてしかたなかったあのラストと、“対”にしているかのように、今回のラストは、とある“誰かのセリフ”(しかも今まで声も聞いたことなかった人物)で救われ、息を吹き返し、生きる勇気と希望をもらえる…そんなラストを迎えますので最後までお見逃しなく!!

さて、今回のお話。チームリーダーをどうしても辞めさせまいと、いくら口の悪いチームリーダーだからって、それがパワハラになってたまるもんかって、前回で急接近した新(池脇千鶴)やみかさん(真飛聖)が立ち上がり、そこへ「OLD JACK&ROSE」のメンバーも加わったりなんかして、なんやかんや最終的に、チームリーダーのリストラ回避~!!“チャンチャン”な大団円迎える…。って誰もが想像しますよね?(短絡的な僕だけ?)っていうか、例えそんな浅はかな自分の想像通りのお話であっても、このメンバーなら、このドラマの空気感なら、いくらでも面白くできるし、深みも加わるはずじゃないですか?そして、もうそれでいいじゃないですか?だけどね、全然そうじゃないんですよ!なんだか毎回毎回言ってる気がしますけど、想像してるストーリーを必ず超えてくる…、そしてそれは想像してたのよりも絶対“良い!”って思えるお話になってて、しかも物語はあくまでも自然に、心から納得できるお話になっているのです!

しかも今回のリストラの話。納得できる着地点なんてありえないと思ってたんですよ。本社からは誰かが辞めなければならない、コストカットしなければならいというお達しがあって、それを遂行するために、あのウザさが半端ない且つ新の元カレの前園(山崎樹範)が送り込まれてきたんですからね。誰も辞めさせない!っていう能天気なお話にはこのドラマの性質上できないし、だからといって全く別の誰かが辞めちゃったら、じゃあその人の人生は?ってなるから、これだけ登場人物の一人一人を丁寧に描いてきたドラマなら尚更できないじゃないですか。…なんだけど、なんだけども、このドラマ、その辺、一切の破綻がなく、ちゃんと巧みに、見事に決着をつけてくるのです。すごい。

で、キーマンはと言うと…、ネタバレになってしまうかもしれない…けど…、どうしても言いたい!だって、すっごくすっごく良かったんだもの!…まさかの、みかさんなんです!(思い出しただけで泣けてくる)

初回から漂っていたみかさんのいい意味での異物感…。仕事もできそうだし、美しいし、初回の新と比べたら四十とはいえまだまだ枯れてない…のに、物流センターへ出向し、プライドはあるけど生きるためにしょうがないから働いている…そんな感じの異物感があったじゃないですか?みかさんには…。だけどその異物感は見ているこっち側以上に、みかさん本人が感じていたんだ…と気づかされる展開となり、チームリーダーのリストラ問題に絡んでくるのです。

で、今回見事だったのは新と、チームリーダー、みかさん、そして前園が集合する終盤のシーン。

せっかくできた仲間をどうしても失いたくないと訴える新…、物流センターの仕事に誇りを持ちそのことで信頼を得てきたチームリーダー…、そんな二人を前にして自分は…と自問自答して答えを導き出したみかさん…、そして今週は“アンパンにカツラかぶってるような男”、“人当たりがいいわりに腹黒い”とまで言われる始末の前園…なんだけど、前園なりに葛藤する思い…、その全員の思いがわかりすぎて辛くて、そこで発せられるセリフや起こっている事象以上に、こっちが勝手に思いを巡らせてしまって、気持ちが整理できなくて、なんだか気持ちがぐちゃぐちゃになってしまう…そんな圧巻のシーンになっています。

でまた、チームリーダーが誇りを持って働いている場所を奪おうとした、その発端は、ものすごくくだらなくて、“小さな醜い思い”なんですけど、それに対抗するように、新をはじめとするみんなの“小さな思いやり”が集まって、それを見事に打ちのめしていく…、そんな展開にすごく爽快感が感じられて、人生捨てたもんじゃないよなーってなるんですよね。そして、その“小さな思いやり”は、“ジルバママ”からずっと誰かの心に残り、引き継がれてきた…という歴史の物語に繋がる…。うん、そう、このなんだかよくわかんないんだけど、すごく壮大な物語…、それが『その女、ジルバ』なんですよね。そしてその“ジルバさんの思い”はドラマを抜け出したリアルの世界でもきっと存在する…って思わせてくれる…。ああ、なんて素敵なドラマなんでしょう。

あ、あと、「(人員整理は)上の命令だから!」と言い訳する前園に対して、マスター(品川徹)が「上官の命令なら殺すのか!」って寝ぼけながらツッコむシーン。このセリフの深みが凄すぎて笑うに笑えないのも『その女、ジルバ』なんですよね!

text by 大石庸平(テレビ視聴しつ 室長)