地方移住した主婦がPR会社を設立。「ないものはつくる」精神でゼロから人脈を築き起業、新たなスタートで描く未来像とは
「挑戦する人をPRで応援したい」、そんな思いを込めて2024年7月に設立された合同会社core。滋賀県高島市を拠点に行政や企業の広報PR事業を行っています。
代表の田中可奈子さんは、東京で大手化粧品会社やメディア会社に勤務し、WEBニュース配信など情報発信業務に携わった後、結婚と出産を機に2014年、夫の実家のある滋賀県高島市に移住。知人も仕事も情報もない、環境の大きな変化にとまどいながらも「ないなら自分でつくろう」と意識を切り替え、動き出します。
その後、2017年に地域情報発信サイト「たかしまじかん」開設、2020年に「コワーキング・コミュニティスペースwacca」をオープン。これらの活動を通して「発信力の必要性」を感じたことから、PRとマーケティングを学び、PRのプロとして活動をスタート。2024年、会社設立に至りました。
「もともと起業する気はなかった」という田中さんの背中を押した想いとは。会社設立の決意と未来像をお聞きしました。
「ないものはつくる」という思いで動き始めたら、さまざまな出会いがあり、つながりが生まれ、自分を解放できた
──移住後、起業しようと思ったきっかけを教えてください。
実は最初は起業する気はなかったんです。それまで自由に好きなことをしてきたし、子どもも生まれ、もういいだろうと。でも、仕事はしたいと思っていました。
東京で働く前は、出身地である岡山県倉敷市で正社員として働いていましたが、女性は寿退社という風潮から「ここにいても将来はない」と思って退職し、空いた時間でパソコンやWEBの基本を学びました。そのスキルを活かしたいと、憧れもあって東京へ行ったという経緯があります。
起業のきっかけは、移住後「情報のなさ」に困ったことです。地域のお店やイベントの情報、子育ての情報を検索しても、ほしい情報が得られず、仕事も東京とは違って「あるものから選ぶ」という方法では見つけられない。それでも地元情報誌の地域ライターをしたり、自分なりに少しずつ動き始めると、さまざまな人と出会い、つながり、情報が得られるようになって「何もないわけではなく情報がなかっただけ」と気づきました。それなら自分が発信する側になろうと思って、2017年に地域情報発信サイト「たかしまじかん」を開設しました。
──「コワーキング・コミュニティスペースwacca」のオープンはその3年後ですね。
当時、自宅の敷地内の納屋を整理することになり、静かで日当たりも良く、庭を望めるいい場所だったので、何かに活用したいと思いました。ちょうどその頃、活動を通して出会った地域の人たちと、定期的にマルシェやイベントを運営していたのですが、なかなか思うように活動できる場所がなかったので「ないならつくろう」とリノベーションし「コワーキング・コミュニティスペース wacca」をつくりました。
ここでは、地元のパン屋さんを集めたパンまつりや音楽イベント、150インチのスクリーンを活用したオンラインのイベントを開催したり、企業の研修や行政の会議の場としても利用していただいています。
納屋をリノベーションしてオープンしたwacca内観
音楽イベントの様子
──活動を重ねる中で自身の気持ちや行動に変化はありましたか?
移住当初は、長男の嫁だから、よそ者だから、小さな子どもがいるからと、周囲の目を気にして目立たないよう控えめにしていました。でも自分が思うほど周りは見ていないし何も思っていない。そう意識を切り替えてからは気持ちも楽になりました。活動を通して人とつながり、心理的に安心感を得られたことで「挑戦」できるようになり「もう顔を出しちゃえ、出していいんだ」と自分を解放してからは、地元のテレビや新聞、メディアの取材もお受けし、露出も増えました。
滋賀を盛り上げるリーダー対談「 川本勇×おうみびと」にて
「このまま50歳になるのは嫌だな」。もがいていた時に出会ったWEBマーケティング起業塾、PR塾で技術とマインドを学ぶ
──PR業を主体に活動しようと思った経緯をお聞かせください。
東京で仕事をしていた時、プレスリリースというものに深く関わった時期がありました。「言葉にして発信する」ことは、最初に立ち上げた地域情報サイト「たかしまじかん」を通じてやってきましたが、取材を重ねる中で、自身の商品やサービスの魅力を言語化できていない、気づいていない人が多いと感じました。特に地域性もあるのか、PRやマーケティングの概念が浸透していないこともあり、発信力を高めることが必要と感じていました。
一方で、自身を振り返った時、やりたいことをやってきたけれど、仕事として収益化できているわけでもなく「主婦が趣味でやっていること」と思われてしまったり。そんな状況にもがいている46歳の自分を見た時に「このまま50歳になるのは嫌だな」と強く思ったんです。
そんな時に出会ったのがWEBマーケティングの起業塾とPR塾です。実際に現場で活躍されている方々から技術とマインドを学び、ライバルであり協力関係を結べる仲間が集まる環境に身を置くことで自身の意識も変わりました。この学びを活かして、PRプロデューサーとして本格的に活動を始めました。
東京「PR塾」で最新の学びを
「ストーリーをコトバに、想いをカタチに」挑戦する人をPRで応援したい。法人化で自身をブランディング
──会社の設立は、いつ頃から考えておられたのでしょうか。
自分自身が経験してきたことを誰かに伝えたいと思った時、その対象はやはり同じように移住してきた人や主婦、女性だと思いました。そこで滋賀県や高島市の移住促進、関係人口の創出、女性の起業支援、観光協会など行政や商工会からお声がけいただき、やりたいことでもあったので自分なりに動いてみたものの、まだまだ収益を得られる仕事としては成り立たなかった。このままでは私自身が「移住して、ちゃんとできてるよ」という姿を見せられない、応援したい人の背中も押せないなと、いろいろ考えた時期がありました。
待っていると状況がどんどん変わっていく今の時代、考えれば考えるほど動けなくなるけれど前を向いていくしかない、動いてから考えようと。そこからは早かったです。スイッチを切り替えて、やりたいこと、ではなく、やるべきことで収益を上げられるよう「PR会社」を設立し、企業さまの広報活動をサポートしていこうと決めました。
それまでは、いろいろなご依頼に応えてきましたが、PR会社という軸ができ「何をする人なのか」という自分のブランディングもできて良かったと思います。
──仕事をする上で大切にしていること、強みは何ですか?
大切にしているのは、誠意をもって人と向き合い、その背景にある商品やサービスの魅力を発信し、応援することです。私も含めてですが、自分のことはなかなか見えていなかったり、言語化できていなかったり、後回しにしがちですけれど、やはり「言葉にして伝える」ことはとても大切です。特に中小企業の皆さんの中では「広報」という考え方が浸透していない。世の中にオフィシャルに自分の言葉で伝えていくことは、今の時代、特に大事だと感じています。
強みは、ヒアリングから言語化し、想いをカタチにして発信するまで、丁寧に時間をかけて寄り添いながら進めていけること。良いものを世の中に知ってもらうことの後押しや、何かに挑戦する人の背中を押すことをお手伝いしたいと考えています。
合同会社coreが掲げるビジョン
人として誠実に向き合い、お客さまに成果で貢献できる企業に。日本全体を視野に入れた活動も
──移住からこれまでを振り返り、思うことはどんなことですか?
移住してから、何かあると「子どもがいるから」「高島市だから」と、なんとなく環境や周りのせいにしていました。言い訳しようと思ったら、特に女性はたくさんあります。でも、すべては自分が決めたこと。そう思えるようになってからは、すがすがしい気持ちで前を向けるようになりました。正直に言えば、いま小学生の子どもが2人いて、介護も大変な時期ではあるけれど、だからこそ覚悟を持って仕事に向き合えている。そういうことも含めてお仕事を一緒にできると、お互いにハッピーなんじゃないかなと思います。
──今後の目標をお聞かせください。
会社の設立は「挑戦する人をPRで応援する」という決意です。活動の原動力は、サポートした企業や個人の皆さまに喜んでいただき、貢献できたと感じられること。これからも人として誠実に仕事に向き合い、裏方としてしっかりと成果で貢献できるよう応援していきたいと考えています。挑戦する人たちの一番のファンとなり、後押しとなるPR会社に成長することが目標です。
個人としては、場所や時間にしばられず、自由に働いていきたいという思いもあります。移住してからは「ないものはつくる」という思いで活動してきましたが、自分が得たい結果を得るためには、場所にしばられず、日本全体を視野に入れ、活動の幅を広げていきたい。めざすところはまだまだ遠いです。時間が足りないですね。
【会社概要】
会社名:合同会社core
代 表:田中 可奈子
所在地:滋賀県高島市新旭町深溝901 wacca
TEL :080-3245-8568
▼合同会社 core
URL :https://core.wacca.space/
▼wacca
URL :https://wacca.space/
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