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発売後すぐ重版で話題! 『世界のスゴイ絵画』は 美術史愛が強すぎる編集者のしくじりから生まれた!?

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 Gakkenが生み出す、数々の個性的で魅力的な商品・サービス。その背景にあるのはクリエイターたちの情熱です。(株)Gakken公式ブログでは、ヒットメーカーたちのモノづくりに挑む姿を「クリエイター・インサイド」として紹介しています。

今回は、2024年4月の発売後即重版が決定し、美術本では異例のヒット中の『意味がわかるとおもしろい! 世界のスゴイ絵画』の編集を手がけた、澤田未来です。

「アート」「名画」など聞くと、「何がすごいのかわからない」「見方がわからない」などと苦手意識を持ってしまう人も少なくないだろう。感じるままに観ればいいとは言われるものの、「ふうん」で終わってしまうことも。

 『世界のスゴイ絵画』は、美術ファンはもちろんのこと、名画に初めて触れるお子さんや名画鑑賞を苦手としていた人にこそ手にとってほしい1冊。

もともとは2023年2月に学校図書館向けの堅牢図書(ハードカバー)として発刊され、学校図書館本の年間売上ランキングで上位を記録した。全国の図書館司書や学校教員から「家庭用にもほしい」などの声が寄せられ、市販化が決定。掲載作品点数を増やして再編集し、2024年4月にソフトカバー版として発売されたのだ。

今回は満を持して本書を生み出した編集者・澤田未来に、『世界のスゴイ絵画』の誕生秘話と、熱い想いを聞いてみた。

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◆「親しみやすい美術の本を作りたい」

 美術史専攻の学生時代、論文が苦手だったからこその想い

ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》、ムンクの《叫び》、北斎の《冨嶽三十六景》――近年、世界の名画が教養として注目される中で、鑑賞教育が求められている。しかし、こうした作品の何がよくて「名画」として評価されているのかわからず、高尚なイメージがぬぐえないという人が多いそうだ。

学校の先生からも、「どのように児童や生徒に教えたらいいのかわからない」「結局、作品名を暗記させるだけになってしまう」などの声がチラホラ聞こえてくる。

まさにこれらの声が、澤田の心の叫びとシンクロした。

「幼いころから美術が大好きだったので、大学では美術史を専攻しました。卒論は仏像について書いたのですが、文章だけではうまくまとめられなくて、色鉛筆で描いたイラストもつけました。それを見た指導教官の先生から『論文とは、きちんとセオリーに従って書くもので、お絵描きをするようなものじゃない』との指導を受けてしまい……。論文の意味をはき違えていた私は、一般の人たちに向けて、仏像のおもしろさをわかりやすく伝えることに力を注いでしまっていたんです。優秀なゼミ生たちの中で、唯一、大学院への推薦を得られず落ち込みました。

 先生の言うとおり、私の書いたものは論文としては本当に未熟でした。しかし一方で、仏像に興味のなかった友人が、イラストはわかりやすいし、読み物としておもしろい! と言ってくれたんですよね。そのとき、私にできることは、美術を学術的に研究することではなく、美術の魅力を広く伝えていくことなのかもしれない、と気づきました」

 世間のニーズと彼女の学生時代からの想いがリンクして、まずは学校図書館向けの本として生まれた『世界のスゴイ絵画』。画期的な構成とおもしろさに、子どもたちはもちろんのこと、全国の図書館司書や学校教員がこの本のファンになり、市販化が決定した。

50点の作品を掲載していた学校図書館向けの本に、25点の作品を追加。巻末特集の美術館ガイドなどもより充実した仕上がりになっている。

◆とにかく絵をでっかく! がポイント  

 掟破りのレイアウトで迫力を伝えたい

 美術の教科書や資料集を思い出してほしい。いろいろな比率の図版が1ページに収まって掲載されていたのではないだろうか。そのため、どうしても大きさに制限が出てしまう。学校でプリントに印刷されたものなどは、小さくて絵がつぶれたり、何が描かれているのかわからなかったりしたこともある。

この本を作る際には、その「常識」を超えることに力を注いだ。

「とにかく絵画を大きく載せたいと思っていました。美術館で絵画を観たときのような迫力を、できる限り伝えたくて。絵を1ページに収めようとすると、小さくなりがちなんです。それで思い切って、ページをまたいで見開きで見せてみました。ノド(綴じの内側)にかかる部分も見えやすくなるように、開きのよい製本にしたのもこだわりのポイントです」

▲絵が大きく掲載されていると、迫力もありながら、細部まで鑑賞できる

 この澤田の想いに共鳴したデザイナー、ウフの辻中浩一氏が、75点の名画それぞれを最も大きく効果的に見せるレイアウトを編み出した。中には縦に長い絵画もあるので、すべての作品を見開きで見せているわけではないものの、それぞれの作品の「個性」を存分に表現できているとはいえないだろうか。

大きな絵を堪能したら、今度は見出しの部分にも着目してほしい。

「名画に初めて触れる子どもたちにとって、いきなり解説文を読むのはハードルが高いかもしれません。そこで、見出しだけでも楽しんでもらえたらと考えました。怖い妖怪の絵にはおどろおどろしい書体、モフモフの猫の絵にはかわいい書体……というように、デザイナーの辻中さんが見出しの書体で遊んでくださったんです」

▲書体だけでなく、見出しの置き方にも注目だ

澤田の言うように、作品ごとに見出しに使われているフォントが異なるので、次のページをめくるのが楽しみになる。

見出しを眺めるだけで、作品の個性を知る手がかりになりそうだ。

◆著名な画家だって一人の人間

 親しみをもって、感情移入してもらえたら

名画を鑑賞するとき、作品を観るだけでも十分楽しめるが、どんな画家がどんな想いで描いたのか、その背景への知識があると、名画をもっと身近に感じられる。

本書では、画家の名前の上に、それぞれの特徴がキャッチコピーとして記されている。歴史上に燦然と輝くスター画家が名を連ねているが、そのキャッチコピーは「不安でいっぱい」「私生活は地味」「働きすぎ」など、現代の悩める私たちに通ずるものばかり。にわかには信じられないが、実はこれ、すべて画家の自伝や伝記に基づいているのだ。

▲画家のキャラクターがわかると、名画への印象も変わりそうだ

ライター佐藤晃子氏が考案した画家のセリフと、イラストレーター伊野孝行氏による画家のイラストもおもしろい。フランスの女性画家ヴィジェ=ルブランは、自分を美しく描いた絵をあちこちに配ることで、貴族の肖像画家として成功を収めたと伝わっている。佐藤氏はこうした史実を踏まえたうえで、画家のセリフを執筆。伊野氏はセルフプロデュースに長けたインスタグラマーになぞらえて、画家のイラストを描いた。これらの似顔絵は、一見コミカルではあるものの、肖像画や肖像写真に基づいて描かれているからホンモノに近いのである。

▲セリフもイラストも史実に基づいて描かれている

「M-1グランプリのファイナリストのように、画家たちにもキャッチコピーをつけたら楽しそう! って思ったんです(笑)。教科書に登場する巨匠たちもこだわりが強いあまり、周囲から理解を得られなかったり、失敗や挫折を経験したりしてきました。だけど、その個性が、何百年と人の心を動かす作品を生み出したんですよね。『名画って難しそう』と感じる方々に、彼らの愛すべきキャラクターを伝えたいと思いました」

ありのままを観る楽しみに加えて、こうした予備知識も知っておけば、名画への見方が変わるかもしれない。これも、一つの鑑賞方法と言えるだろう。 

「各章末には、天国で同時代の画家たちが集まったら何を語るのだろう……と妄想しながら書いたコラム『妄想対談』を入れました。ダ・ヴィンチとミケランジェロは犬猿の仲だったと伝わっていますが、実は当時の手記から互いに影響を受けていたこともわかっています。一方、ラファエロは二人のすぐれた点を器用に真似ていたようです。互いを嫌いあうも認めあうダ・ヴィンチとミケランジェロ、どちらに味方するわけでもなく上手に立ち回る後輩ラファエロという関係性を妄想してみました(笑)。このコラムを好んでくださる読者の方も多かったので、嬉しく思いました」

▲紙上で実現した同時代の画家たちの対談

『世界のスゴイ絵画』を読んで、画家の人となりがわかったら、今度は自分で、画家たちを再会させる空想をしてみるのも楽しいかもしれない。

◆変な絵も、怖い絵もみんな魅力ある超名作!

 すみずみまで堪能できる本

 本の装丁にもこだわりが表れている。

 本書を手にしたら、まずはカバーに注目してほしい。絵画の一つ一つがツヤツヤしているのがわかるだろう。カバーを見るだけでも美術館にいるような感覚になれそうだ。

▲高級感があり、表紙上に飾られているような絵画の数々

 表紙をめくると、ギフト包装によく使われるクラフト紙でできた扉ページが挟まっている。まるでプレゼントの包みを開けるように、心ときめく絵画の世界へと入っていけるのだ。

「鑑賞用と保存用で2冊買ってくださる読者の方がいらっしゃるのは、こういう造本面にこだわったからかなと思うと、ありがたいです。カバーをはがすと、デザイナー辻中さんの遊び心で、表紙にある仕掛けが隠されています。購入した方にはぜひ楽しんでいただきたいです」

そもそも、澤田が美術にめざめたきっかけは何だったのだろうか。

「小学校の図工室に、スーラの《グランド・ジャット島の日曜日の午後》のポスターが掛けられていたんです。図工の授業が終わったあと、その絵をぼーっと眺めるのが好きでした。遠くから観たらすごくきれいな絵ですけど、絵に近づいて観てみると、無数の細かい点で構成されているんですよね。技巧的な話はよくわからないけど、果てしない時間がかかっているであろうことと、スゴイ発明なんだろうなということは、子ども心にもわかりました。

美術史を勉強するようになって、印象派とかルネサンスとか、各時代の流れがあることを知りましたが、本来、美術史というものは、一人一人の画家がこだわって自分のスタイルを生み出そうと模索してきた道のりなんですよね」

▲スーラは約2年をかけて、この大作を完成させたという

 名画といわれる作品を観て、「なぜこれが名画?」と疑問に感じる人もいるだろう。中には、「自分にも描けそう」と思ってしまう絵があるのも確かだ。

「私も抽象絵画を前にすると、いつもそう感じます(笑)。ですが、その作品には、時代を突き動かした画家の信念やこだわりが隠されています。それこそが、名画たるゆえんだと思うんです。本書ではその部分をできる限りわかりやすく紹介したので、子どもから大人まで、幅広い層の方々に楽しんでもらえたらと思っています」

 

 アートが身近になる瞬間。

「この本を読んで自分が気になる絵を1つでも見つけて、そこから先は自由な楽しみ方をしてもらえたら」と澤田は柔らかな笑顔を見せる。

 特大サイズの絵を楽しく解説した同書をいちばん届けたかった相手は、かつての澤田自身だったのかもしれない。

 彼女はこれからも「誰もが純粋に楽しめる、心に響く本」を作り続けていくだろう。

クリエーター・プロフィール

澤田未来(さわだ・みく)

神奈川県横浜市出身。新卒で教育系企業に入社したのち、JICA青年海外協力隊としてフィジー教育省で活動。2020年に学研プラス(現・Gakken)に中途入社し、『世界が広がる 推し活英語』『推し活韓国語』などを手がける。

[商品・サービス情報]

『意味がわかるとおもしろい! 世界のスゴイ絵画 ソフトカバー版』

教養として注目を集める世界の名画。

「なんだか難しそう」「見方がわからない」そう感じる方も多いのではないでしょうか。

そこで本書では、迫力満点の巨大な図版とともに、画家のこだわりポイントや名画に隠された謎など、名画を楽しむヒントをたくさん紹介しています。

名画が身近に感じられ、鑑賞スキルが育つ1冊です。

■著者:佐藤晃子

■発行:Gakken

■発売日:2024年4月25日

■定価:2,750円(税込)

本書を購入する(Amazon) https://www.amazon.co.jp/dp/4052059042/

本書を購入する(楽天ブックス) https://books.rakuten.co.jp/rb/17791189/

学研出版サイト https://hon.gakken.jp/book/1020590400




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