資源の有効活用、もったいないを価値あるものへ。~食品残さからバイオガスを生成、CO2排出量を年間約980トン削減~
キユーピーは、1925年に日本で初めてマヨネーズの製造・販売を始めました。限りある食資源を無駄なく有効活用することは、食品メーカーの重要な責任です。
キユーピーグループは、サステナビリティに向けた重点課題「資源の有効活用・循環」の 取り組みテーマのひとつに食品ロスの削減・有効活用を掲げ、食品残さ削減、野菜未利用部の有効活用、商品廃棄の削減に注力して取り組んでいます。
このストーリーでは、生産現場の社員の挑戦が「食品残さからバイオガスを生み出す」までの過程を振り返ります。
マヨネーズで発電。資源の有効活用に取り組んだ一人の社員のストーリー
キユーピーでは、食卓でおなじみの「キユーピー マヨネーズ」のほかに、さまざまな種類の家庭用・業務用商品を製造しています。
製造ラインを切り替える時に、必ず“配管の洗浄”という工程が発生します。この工程は、違う種類のマヨネーズが混ざったり、アレルギー表記をしていない原料が混入したりするのを防ぐためです。この配管を洗浄する工程で、前に作っていたマヨネーズの残りをきれいに取り除かなければなりません。1回の洗浄で出るロスはわずかですが、たくさん作っているからこそ積み重なることで、結果的に多くのマヨネーズを焼却せざるを得ませんでした。
この食品残さをどうにか活用できないか。そんな思いから一人の社員が立ち上がりました。
生産本部の松原 由紀は、製造ラインの切り替え時に、洗浄工程で配管から排出されるマヨネーズなどを活用し、バイオガス発電※1に活用する取り組みを実現しました。食品残さから電気を生み出し、CO2排出量の削減にもつながっています。
※1 バイオガス発電は、家畜の排泄物等を発酵させて生成された可燃性のバイオガスを利用して発電する仕組みです。
今年で5年目を迎える、マヨネーズを活用したバイオガス発電。実施に至るまでには、血の滲むような努力とマヨネーズへの大きな愛がありました。
偶然から生まれたマヨネーズ再利用への第一歩
2002年にキユーピーへ入社した松原は、東京都調布市にあった仙川工場でマヨネーズを製造するオペレーターとして勤務したのち、翌年に部署異動で廃棄物管理の仕事を任されます。
そこで松原が目の当たりにしたのは、先月まで一生懸命作っていたマヨネーズが焼却※2されている現実でした。
※2 廃棄物を焼却する際に発生する熱エネルギーを回収・利用(サーマルリサイクル)しています。
「製造現場にいたからこそ、大切に作ったマヨネーズが焼却されることが心苦しいという気持ちがさらに強くなりました。一方で、お客さまに安全・安心な商品を届ける使命があります。当時の製造現場では、常にロスを減らす努力を積み重ねていましたが、ロスをゼロにすることはできません。もったいないという気持ちは誰もが持っていたものの、仕方がないと半ばあきらめていました。」(松原)
数年が経ち、マヨネーズの残さ活用のアイデアは意外な形で生まれます。ある日、松原は、家庭の冷蔵庫でマヨネーズを冷気のそばで保管すると分離するという話を聞きました。そこで、残ったマヨネーズを集めて冷凍し、分離した油をインク・塗料会社へ販売する取り組みを開始するようになりました。
念願だったマヨネーズの再資源としての活用。しかし、油は再利用できても、ほかの素材はあいかわらず焼却されていました。もっとできることがあるはず。松原は心の火を静かに燃やしていました。
マヨネーズの残さでバイオガス発電。立ちはだかる意外な壁
2009年に松原は、長く親しんだ仙川工場勤務から、本社の社会環境推進室に異動になります。その後9年間、キユーピーグループの工場の環境活動への支援をはじめ、フードバンクや東日本大震災の復興支援など社会的な活動に力を注ぎました。
意義深い活動にやりがいを感じていましたが、心の火はまだ消えていません。松原は2018年に再び製造現場に携わりたいと志願し、現在の生産本部に着任しました。
以前から、キユーピーグループの製造で出る野菜の皮などを家畜の餌として有効活用してくれる養豚農家があり、その方々と話をする中で、マヨネーズの残さを活用する2つ目のアイデアが誕生します。
「その養豚農家では、隣でバイオガス施設を運営されていたんです。そこでは、養豚農家で出る家畜の排泄物等を活用して、メタンガスを生成させて発電していると聞きました。しかし、養豚農家から出る家畜の排泄物だけでは菌の培養に足らず、十分にガスを生成できないことが分かりました。詳しく話を聞くうちに、マヨネーズの残さでその不足分を補えれば、お互いの悩みが解決できるのではないかと思いました。気が付くと“早くテストを開始しましょう!”と声が出ていました。」(松原)
長年思い描いていたマヨネーズの残さを活用する取り組みが、現実味を帯び始めました。
実現するには、製造工場の協力が必要です。中河原工場で協力者として白羽の矢が立ったのは、山中 大吾でした。取り組みの目的や価値、副次的効果など、松原の熱心な説明を聞いて山中は協力することを決意します。
バイオガス施設に足を運び、バイオガス発電の仕組みを一から共に学びました。知れば知るほど、自分たちが今やろうとしていることの難しさを実感していきます。
「ただ残ったマヨネーズを持っていけばいいというわけではないんです。メタンガスを発生させるには、決められた栄養分を、決められた配合で菌に与えなくてはなりません。栄養分のどれか1つでも与えすぎると菌の培養環境が崩れ、発電がストップしてしまいます。それを回避するには、キユーピーが供給する残さの栄養分を見える化することでした。こうすることによって、菌の培養環境を崩さずにバイオガスを生成する仕組みを実現することができました。」(松原)
「食品残さの活用は、難しい側面もあります。新しい活用法を取り入れるということは、従来の方法で一緒に取り組んできた既存業者さん、今回でいうと焼却業者さんの仕事を奪うことになります。社会的に意義のある取り組みですが、移行には丁寧に時間をかけるべきだと考えました。」(山中)
現在では、キユーピー五霞工場(茨城県)・中河原工場(東京都)・泉佐野工場(大阪府)・神戸工場(兵庫県)・グループ会社のケイパック(茨城県)で展開し、焼却からバイオガス発電への活用に転換できています。
社長賞を受賞「地道にやってきたことがやっと認められた」
2022年6月、松原はマヨネーズの残さをバイオガス発電へ活用する取り組みについて、経営層や本部のメンバーにプレゼンする機会を得ます。これまで5年間積み重ねてきたことを話すと、ある上司から“この取り組みは社長賞に値する”と太鼓判を押されたのです。
社長賞のプレゼンまで3カ月。松原にとって、5年間の取り組みをまとめるには短すぎる時間でした。どうすれば自身の活動の熱を伝えられるのか、考え抜いて8分間のプレゼンに臨みました。
熱のこもったプレゼンはその場にいた人々の心を動かし、見事その年の社長賞に選ばれました。社長賞を受賞したあと、松原が真っ先に電話したのは、中河原工場の山中でした。
「松原さんから社長賞を受賞したと聞いて、“おめでとうございます”という労いの気持ちと、やっぱり評価に値する取り組みだったんだという嬉しさが込み上げてきました。5年間、地道にやってきたことがやっと認められた。そんな感動がありました。」(山中)
松原の功績は社内報でも取り上げられ、別の部署のメンバーから松原へお祝いのメールが寄せられました。それらのメールを松原は一つひとつ目を通し大切に保管しています。
食品残さの活用はまだまだ可能性を秘めている
「キユーピーグループの生産現場では、“夢多゛採り(むだどり)活動”と呼ばれる改善活動が根付いています。小さな工夫でもみんなで認め合い、コミュニケーションをとることで、日常的に創意工夫に努める風土があります。」(松原)
食品メーカーである以上、食品ロスの問題には真摯に向き合わなくてはなりません。そのために、まずは、ロスになる食品の量を減らす努力を継続していく必要があります。同時に、今回のような食品残さを活用する取り組みを考えていくことも重要です。食品残さの活用はまだまだ可能性を秘めています。技術が進歩して、新しい再利用方法を見つけられるかもしれません。その探究心を常に持ち続けていくことが大切だと思います。
これからも、食品ロス発生を抑制する努力を続けると同時に、未来につながる資源の活用や循環を考え、環境へのマイナス要素をプラスに変えていく努力を各工場がけん引し、グループ従業員の協力を得て推進していきます。
キユーピーグループのオフィシャルブログ
従業員より社会・環境への取り組みを発信しています。
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