乙武洋匡、義足付け初の和装でファッションショーに登場も「悔しかったです！」

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5月30日（日）、“身体の多様性を未来に放つ”ダイバーシティ・ファッションショー「True Colors FASHION」が動画配信される。ここにモデルとして登場した乙武洋匡とりゅうちぇるをフジテレビュー!!が密着・インタビュー。前編は乙武が義足で挑んだランウェイの様子と、本人が語った障害者向けのファッションの可能性についてお届けする。

今回のイベントは、日本財団が主催するパフォーミングアーツを通じて、障害・性・世代・言語・国籍など、個性豊かな人たちと一緒に楽しむ芸術祭「True Colors Festival超ダイバーシティ芸術祭-世界はいろいろだから面白い-」の一環で、公式YouTubeチャンネルにて見ることができる。

True Colors Festival YouTube公式チャンネルはこちら

このファッションショーには、健常者から障がい者まで11組のモデルが登場。それぞれがテクノロジー企業とファッションブランドとタッグを組み、ランウェイを歩きつつ、その制作過程をインタビューで明らかにするというものだ。総合ディレクターは落合陽一が務めた。

乙武が、義足をつけて歩く練習をしていることは有名だが、今回はその状態でさらに初めて着るという着物姿でモデルに挑む。撮影は、5月初旬に都内のスタジオで行われたのだが、現場を見た取材班は驚いた。照明は暗く、ランウェイには水が張ってあるではないか。「乙武さん、ここを歩くの…？」とちょっと心配になってしまった。

撮影がスタートすると、幻想的な照明やプロジェクターに映し出されたカラフルな映像、そして水の波形が相まって、かなり神秘的な雰囲気に。乙武は、まず車いすで登場しポージング。くるりとターンする様も慣れている動きからか、すぐにOKが出た。

しかし、問題はその後だった。乙武は義足を装着し、その義足には木でできた雪駄が履かされた。歩行を支える義足は「OTOTAKE PROJECT」で彼のために作られたものだ。しかし、いつもトレーニングする時はスニーカーだというから、全く勝手が違うだろう。サポートするスタッフが背後にいるものの、乙武がいざ水のランウェイを歩こうとすると、バランスが崩れ「危ない！」とつい声が出て倒れそうになる。

スタッフが「数歩歩ければ大丈夫です」と声をかけても、乙武は納得できない。どこに正面のメインカメラがあるのか、改めて確認すると再チャレンジ。最後は、ゆっくりながらも、歩を進めることができて「OK」に。しかし、歩くことに必死でかっこいい表情が作れなかったことで「こんな顔していて大丈夫かな？」と現場を笑わせていた。

乙武が着用した着物は、老舗ブランド「やまと」のもの。車いすでは内側に織り込んでホックで留め長さをアジャストすることができる、というスペシャルにカスタマイズされたデザインとなっており、乙武も「新しい！」とうれしそうだった。またスタッフらから「着物が似合う」「旅館にいそう」と絶賛されていた。

――まずはランウェイのご感想を

悔しかったです！もうちょっと歩けるかな、と思っていたのですが。普段はスニーカーで練習している中で、和装・雪駄・暗闇・水の中…という初めてだらけだったので。特に水が苦戦しました。膝が折れそうになってしまったので、怖かったです。ファッションショーなので、おすましさんな表情を作るつもりが、アスリートっぽい顔になってしまいました（笑）。でも、あと2～3回練習すれば、もっといけたかも！

――今回のオファーを受けたときはどんな思いが？

まずワクワクしましたね。普段の生活で和装をしようと思う機会もなかったですし、例え思っても市販のものが合うとは思わなかったし。でも、こうやってカスタマイズしていただいたものを着れるなんて、本当にワクワクしました。

――着物を着てみた感想は？

「こんな人、いそう！」って皆言ってくれて。違和感もなかったです。裾を内側に折り込んでホックで留めれば羽織と同じ長さに、伸ばすと着物と同じ長さになるなんて、一粒で二度おいしいんです。重さもそんなに感じなくて、着心地もすごくいいですよ。

――今後、着物を着ていく機会はありそうですか？

歌舞伎と落語が好きで、そういう時に是非着てみたいですね。これから夏に向けてもっと薄い素材が出たら、めちゃくちゃ重宝すると思います。

――今回の動画をどんな人に見てほしいですか？

まずは、僕が見たいです！一体どんな仕上がりになるのか楽しみです。ファッションって、基本的に健常者のものですよね。障がいがあると、自分にフィットする、自分のことをより良く表現できるファッションって見つかりにくい場合が多いと思います。でもこういう企画・プロジェクトを通じて、いろんなアイディアが生まれて全ての人がファッションを楽しめるようになるきっかけになるといいですね。中東の民族衣装なども、和装と同じく、車いすに巻き込んでしまう心配があるファッションも、こうやって長さをアレンジできる開発が進むといいなと思いました。

【True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭 -世界はいろいろだから面白い-】
日本財団が主催する、パフォーミングアーツを通じて、障害・性・世代・言語・国籍など、個性豊かな人たちと一緒に楽しむ芸術祭。誰もが居心地の良い社会の実現につなげることを目指す。新型コロナウイルスによる世界的な危機により、身近な人たちと引き離される経験をした人も多い中、「人とつながること」や「共に楽しむことの大切さ」を再認識できたのではないか？ということで、2021年、新たな環境でアーティストと観客がどのように体験を共有し、共に楽しむことができるのかを考えながら、プロジェクトを再始動させている。