加藤シゲアキ「自分を褒めてあげたい」受賞の喜びと、作家の葛藤を語る

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4月9日（金）、令和2年度・3年度「吉川英治賞」贈呈式が都内で行われ、「オルタネート」（新潮社）で吉川英治文学新人賞を受賞した、NEWSの加藤シゲアキが登壇した。アイドルのノミネート・受賞は、賞の創設以降初めて。

同賞は、昨年1年間に作品を発表した作家の中から、最も将来性のある新人作家に贈呈されるもので、過去には和田竜や辻村深月、柳広司など多数の人気作家が受賞している。

加藤はNEWSのメンバーとして活動しながら、作家活動を開始。2012年に「ピンクとグレー」（KADOKAWA）で小説界に鮮烈なデビューを果たして以来、「閃光スクランブル」「傘を持たない蟻たち」など次々とヒット作を送り出してきた。

「オルタネート」は昨年、第164回直木賞候補作に選ばれ、今年は本屋大賞にノミネートされるなど、怒涛の快進撃を続けている。

贈呈式に参加した加藤は、ライトグレーのスーツに身を包み登場。「本当にたくさんの方から『おめでとう』の言葉をいただいた」と受賞の喜びを噛みしめるように挨拶した。

今回の受賞を記念して、10年前のデビュー作「ピンクとグレー」の装丁担当者から、当時の束見本（つかみほん※）をプレゼントしてもらったそう。

※束見本とは、実際の仕上がりと同じ材料・ページ数で製本した白紙の見本。

それを手にした加藤は「ああ、ここから10年経ったんだな。頑張ってきたんだな、と自分を褒めたくなりました。小説は編集者や装丁の方など、本当に多くの方が関わっていることを改めて思い知り、この場を借りて皆さんにお礼を申し上げたい」と、しみじみと語った。

そして「『オルタネート』を書いたのはちょうど2年くらい前。まさかこの作品が文学賞の候補になり、受賞できるとはまったく思っていませんでした。夢のようだと思っています。『ピンクとグレー』から10年、長かったような短かったような。なんとか続けてこられた自分を褒めてあげたい」と、コメント。

加藤は現在、舞台に出演中で、贈呈式当日も公演後に駆けつけた。「この後、贈呈式だな、と思いながら作品に臨んでいたときに『多くの方が（連日、劇場に）訪れるわけですが、なぜ人はこんなにも物語を求めるのか』と、ふと思いました」と作家ならではの気づきがあったそう。

続けて「物語の力に一度触れた人は、知っているからこそ求めるのかな。良くも悪くも、物語の力は長くは持続しないのかもしれない。だからこそ、新しいモノを求めるのではないか」と持論を展開。

さらに、「10年前に小説を書き始めたときは、自分の中に『書きたい』という情熱や欲望に近いエネルギーがありましたが、一方で、自分が書く意味はあるのだろうかと自問自答していた。そこに目をつむって、それでも書きたいと思って執筆を続けてきました」と、これまでの葛藤を明かした。

最後に、今回の受賞によって「『加藤シゲアキは作家をやってもいいんだよ』と少しだけ、なぐさめていただいたような感覚です。（選考委員の）恩田陸さんからも『続けてください』と、書くことを認めていただいたと思っております。頑張って書き続けていきたいと思います。新人賞は心強い味方です」と締めくくった。