『監察医 朝顔』(第2シーズン)第1話完全版

万木朝顔(上野樹里)は、神奈川県にある興雲大学法医学教室に勤める法医学者。野毛山署強行犯係の刑事である父親の平(時任三郎)、夫で、平の元部下だった神奈川県警捜査一課の刑事・桑原真也(風間俊介)、そして5歳になる娘のつぐみ(加藤柚凪)と一家四人、笑顔が絶えない幸せな日々を送っている。ある朝、朝顔たちが朝食をとりながら話をしていると、ふいにつぐみが「弟が欲しい」と言い出す。気まずい空気の中、仕事に出かける平と桑原…。

朝顔もつぐみを保育園に送り届けると、いつものように興雲大学へと向かった。するとその途中で朝顔は、立体歩道橋で発生した群衆雪崩の事故現場に遭遇する。大きなイベントが予定されていた近くのスタジアムで突然火災報知器が作動し、逃げようとしてパニックになった人々が立体歩道橋に殺到したために起きた事故だった。

朝顔が興雲大学へと急ぐと、法医学教室では安岡光子(志田未来)、髙橋涼介(中尾明慶)、藤堂絵美(平岩紙)、藤堂雅史(板尾創路)らもテレビのニュースで群衆雪崩の現場映像を見ていた。20名が病院に搬送され、うち死者4名、意識不明の重体1名の大参事だった。主任教授の夏目茶子(山口智子)は海外出張で不在だったが、法医学教室にはすぐに解剖の依頼が入った。

同じころ、平は、野毛山署強行犯係の森本琢磨(森本慎太郎)や山倉伸彦(戸次重幸)ら同僚や、県警の桑原、検視官の丸屋大作(杉本哲太)らと連携して、事故の原因を調べ始める。だが、奇妙なことにスタジアムでは火災が発生していなかった上、現場では異臭がしたという証言もあり、実際に被害者の中にはけいれんや意識障害など、化学薬品を吸引したと思われる症状を訴える者もあった。また、事故が起きる直前、金髪の男性が騒いでいたという複数の証言も得られていた。

あくる日、群衆雪崩で妻を失ったという金髪の男・佐藤祐樹(松田元太)が、事故現場でマスコミの取材に応じる。そこで祐樹は、これは事故ではなく殺人だ、と訴えていた。今回の事故で亡くなった身元不明の男性が、事故の前、佐藤の妻に痴漢行為をしていたというのだ。その男は、佐藤の妻が手を払っても行為を止めず、体重をかけてきたらしい。

ほどなく、野毛山署の捜査員たちは、駅のコインロッカーから、痴漢行為を働いていたという身元不明男性の荷物を発見する。男の名前は佐々木拓郎(一條恭輔)35歳。荷物の中には、本人のものと思われる衣類と500円足らずの現金が入った財布、スマートフォン、そして岡山行きの新幹線切符が入っていた。

帰国した茶子は、朝顔と藤堂に、死亡した4名のうち、41歳の男性・片岡康介と、60歳の女性・畠山和代を同時に解剖するよう指示する。少しでも早く、遺族の元に返してあげたいという配慮からだった。解剖の結果、片岡は胸腹部を圧迫されたことによる窒息死、畠山は手すりに肋骨が圧迫されて肺に刺さったことによる両肺挫傷が死因であることがわかった。

桑原たち捜査本部の面々は、佐々木が事件当日の朝、住んでいたアパートの部屋を解約し、勤めていた工場も先月退職していたことをつかむ。だが、職場に警察が来たことで佐々木に関する情報がネット上に流失し、彼に対するバッシングが起きてしまう。

朝顔は、遺族たちの待機場所になっていた興雲大学の会議室前に立つ女性の姿に気づき、声をかけた。佐々木の母・八重子(梅沢昌代)だった。それを知った佐藤は、八重子に怒りをぶつけた。

朝顔は、光子ともに佐々木の解剖を行った。右手の甲に、誰かに引っかかれたような擦過痕があった。しかし、佐々木の上半身にはうっ血がなく、ふくらはぎの静脈には拡張が見られた。

一方、藤堂は、絵美とともに佐藤の妻・絵梨の解剖を行っていた。絵梨の右手人差し指と中指には皮膚片がついており、右大腿の背面には手でつかんだような圧迫痕があった。掌紋採取の準備を始める藤堂たち。

解剖を終えた朝顔たちは、佐々木の死因がエコノミークラス症候群ではないかと考えていた。しかし、絵梨から採取した掌紋と皮膚片が佐々木のものだと判明したことから、捜査本部では、佐々木を被疑者死亡のまま送検しようという意見も出始める。

それを知った朝顔たちは反発するが、山倉によれば、状況証拠が揃ってきているのだという。佐々木は事件当日の午前中に新幹線に乗る予定だったにも関わらず鍵もかけずにコインロッカーに荷物を入れ、わざわざ群衆の中に入っていた。佐藤は、佐々木が歩道橋にいる間、ずっと妻に痴漢行為を働いていたと証言していることから、家も仕事も失い、所持金もほとんど持っていなかった佐々木が、ヤケになって痴漢行為を働いたことが事故を引き起こした、というのが捜査本部の見立てだった。

それでも、佐々木の死因は確定しておらず、異臭騒ぎの件もまだ原因不明のまま。すると茶子は、朝顔に、松本オリビア由美子(片岡はいり)に会いに行くよう指示する。松本は、社会心理学の教授だった。

そんな中、思わぬ騒動が起きる。縁側から落ちそうになったつぐみを助けようとした平が、左手を負傷してしまったのだ。それでも平が、震災で行方不明になった妻・里子(石田ひかり)の手がかりを探すために東北に向かうつもりでいると知った朝顔は、自分が代わりに行くと告げる。

あくる日、朝顔たちは佐々木の脳を調べ、一刻も早く死因を特定しようと動き出す。昼には、捜査本部による記者会見が行われることになっていたのだ。その結果、記者会見前に、佐々木の死因が明らかになった。佐々木の死因は、エコノミークラス症候群による脳梗塞だった。

朝顔と平は、八重子にすべてを報告する。佐々木には、生まれつき心臓の一部に穴が開いている心房中隔欠損という持病があった。エコノミークラス症候群は、飛行機に乗らなくても、あまり動かず、寝込んでいるだけでも発症することがある。部屋に閉じこもって生活していた佐々木は、いつの間にかエコノミークラス症候群を発症していたのだ。それが、事故の当日、久しぶりに体を動かしたことで血栓が心臓の穴を通り抜け、脳に届いたと考えられた。また、佐々木の手にあったひっかき傷が生前につけられたものではなかったことから、彼は痴漢などしていなかったことも明らかになる。

平は、佐々木の所持品にあったレシートから、彼が帰郷に際して母への手土産を買っていたことを確認していた。佐々木は、電車に乗る直前に手土産を部屋に忘れてきたことに気づいたものの、所持金がなかったことからコインロッカーに鍵をかけずに荷物を押し込み、手土産を取りに戻ろうとして人込みの中に入ったと思われた。そのとき火災報知器が鳴り、イベントに訪れていた人々の波に巻き込まれた佐々木は、脳梗塞を起こして死亡し、前を歩いていた女性・絵梨にもたれかかったような体制のまま押し流されたのだ。

警察は、歩道橋が途中から狭くなっていたことと、イベント主催者の準備不足が事故を引き起こしたと発表した。火災報知機を誤作動させた人物も、近いうちに立件されるという。痙攣や意識障害は、脳梗塞を起こした佐々木の発作が、周りの人たちに伝播した可能性があった。朝顔は、群集心理による集団パニックの可能性がある、との仮説を松本から聞かされていた。真実を知った八重子は、横たわる息子の前で涙を流し…。

あくる朝、朝顔は、平と桑原に見送られて、東北へと向かった。祖父の浩之(柄本明)と久しぶりに再会する朝顔。翌朝、朝顔は、平の捜索ノートをもとに、震災発生時に多くの人が避難していたという宮里沼へと向かった。朝顔は、必死に泥の中を探し続けた。しかし、手がかりになるようなものは見つけることが出来ず…。