7月1日(水)、舞台「大地(Social Distancing Version)」の公開フォトコール(※プレス向けの撮影取材会)が行われ、大泉洋、山本耕史、竜星涼、栗原英雄、藤井隆、濱田龍臣、小澤雄太、まりゑ、相島一之、浅野和之、辻萬長が登場。シーンの一部を先行公開した。
本作は、三谷幸喜が俳優への愛を込めて新生PARCO劇場のために書き下ろした新作。とある共産主義国家による独裁政権体制のもとで、反政府主義のレッテルを貼られて施設に収容されてしまった俳優たちが織りなす群像劇となっている。
フォトコールの冒頭には、作・演出を務めた三谷が登場。作品のあらすじを説明したのち、壇上を指しながら「演じることを禁じられた俳優たちが、この建物で共同生活をして強制労働させられているという設定です。今、コロナ禍の影響で舞台俳優たちはなかなか演劇に携わることができずに苦労している状況ですが、それとほぼ同じような設定です。まあ、この本(台本)を書いたのが去年のことなんですけど、なんという先見の明だろうかと我ながら思っています」と“三谷節”をさく裂。
さらに、「(タイトル通り)今回は、Social Distancing Versionということで、演出は“3密”を避けるかたちで作っています。ステージ上の空間を敢えていくつかに分けまして、この(8つに区切られた)スペースの中でセリフを言うという仕組みになっております。登場人物(=俳優)たちがお互いに近づかないようにしていますが、それには近づかない意味をつけています」と演出の意図を説明。
続けて「作中には登場人物たちが喧嘩するシーンもあるのですが、“接近しないでどうやって喧嘩するか?”というのも見どころの一つとなっています。まあ、大した見どころではないんですけども」と会場に笑いを起こしながら、真剣にコロナ禍での工夫を明かした。
最後に「1924年に築地小劇場という劇場が誕生し、これが現代演劇のスタートと言ってもいいと思うんですけども、銅鑼(どら)を鳴らして上演が始まったと言われています。僕らは今、なかなか芝居ができない状況にありますけども、『必ずまた芝居ができる』『いつもの状態に戻りたいんだ』と思い、その先陣を切ることになりました。ということで、今回の芝居でも銅鑼の音から始まります」と一礼し、自信を込めて作品の幕を開けた。
今回のフォトコールでは、第1幕のシーンの一部が約20分間にわたって上演。映画スターのブロツキー(山本)が収容所に到着した翌日、収容所の管理官であるドランスキー(小澤)がチャペック(大泉)たちの宿舎を訪れ、指導員のホデク(栗原)は俳優たちをドランスキーに紹介するシーンから始まる。
演劇に一切関心が無いことを高らかに宣言するドランスキー。「現実を見ないでどうする!」「僕はノンフィクションしか読む気がしない」という彼に対して、「作り物のほうがより現実を浮き彫りにすることもありますよ」とブロツキーは真っ向から反発する。一方、バチェク(辻)は彼に忖度をして媚びようとするも、その本意がバレて逆に印象を下げてしまう。
俳優たちにそっけない態度を取って場を去っていったドランスキー。しかし、実はドランスキーは女形の役者・ツベルチェク(竜星)にはひそかに興味津々で、自分の部屋に来させるように裏でチャペックに仕向けていることが明らかになる。
俳優たちは、ドランスキーに歯切れよく振る舞うチャペックに“権力者の顔色をうかがって言いなりになっているだけだ”と批判を浴びせ、ツベルチェクも役者としてのプライドをかけて抵抗。チャペックとの喧嘩シーンでは、“枕を放り投げる”動作で怒りをあらわにするなど、三谷幸喜の解説通り、ソーシャルディスタンスを保ちながら物語が進行していく。
しかし、ツベルチェクとミミンコ(濱田)とのシーンでは、チャペックは打って変わって物憂げな表情に。「理不尽な話だっていうのは俺だってわかってる。だから、“悪く思うな”なんて言わねえよ。好きなだけ俺を恨め、憎め。枕だって何回投げたって構わない。俺はいくらでも受け止めてやる」と敢えて汚れ役を引き受けていることを吐露する。
「現実を受け入れて、利用して、その上を行く。それがチャペック様の生き方だ」というチャペック。だが、「やがてチャペックさんは、彼が立ち向かった“現実”というやつに、とんでもないしっぺ返しを食らうことになるんだけど、それはもう少し先のことだ」とミミンコの意味深な独白で締めくくられるかたちでフォトコールは終了した。
独裁政権のもと、あてがわれた現実に忖度すべきか反発すべきかで葛藤を見せる俳優たちの中で、もっとも上手く立ち回って世間を生きているように見えるチャペックが、一体どんな“現実”を待ち受けることになるのか。旅バラエティ番組でディレクターに反発しまくる“ぼやき節の大泉洋”による、凛々しいチャペックの演技に惹きこまれた。
舞台「大地(Social Distancing Version)」の最新情報は、公式サイトまで。