誰にもみとられることなく自宅で亡くなり、死後、長らく発見されない人々…。いわゆる“孤独死” が増加の一途をたどっている。そうした中、亡くなった人の自宅を清掃し、遺品の中から思い出の品を遺族に引き渡す「遺品整理人」という職業を耳にすることも多くなった。
6月21日(日)、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』で、27歳の遺品整理人・小島美羽さんに密着した『孤独の向こう側~27歳の遺品整理人~』が放送される。
小島さんは、「孤独死は誰にでも起こりうる」と訴え、「孤独死の現場」を“ミニチュア”で再現し、なぜ孤独死が起こるのか、その本質を伝え続けている。17歳で父親と死別し、「何もしてあげられなかった」という後悔の念から、自分と同じ境遇にある遺族を救いたいと遺品整理人を志す。2014年に東京・板橋にある遺品整理会社に入社、社長の増田裕次さんと二人三脚で孤独死の現場と向き合っている。
誰もが目を背けたくなるような現場で、亡くなった人の悲しみや無念を感じ取り、時に涙を流しながら丁寧に遺品整理をしていく増田さんと小島さん。しかし、世の中に「孤独死をどう伝えていくか」をめぐり、衝突するように…。27歳の遺品整理人が見つめる「孤独死の現場」と、その向こう側にある物語を追う。
今回、その番組の語り(ナレーション)を、吉岡里帆が担当した。小島さんと同じ27歳の吉岡は、どんな思いでナレーションを入れたのか、また遺品整理人について、孤独死について何を思うのか、収録を終えた直後の吉岡に聞いた。
<吉岡里帆 インタビュー>
――『ザ・ノンフィクション~孤独死の向こう側 27歳の遺品整理人~』のナレーション録りを終えていかがですか?
(遺品整理会社社長の)増田さんが「孤独死って伝わりやすい言葉だけど、残酷な表現でもある」とおっしゃっていたのが、すごく頭に残っています。ひとりで亡くなることを「孤独死」ということに、今まで疑問を持っていなかったのですが、(残酷でもあるという思いを持って)ご遺族の心のケアをされ、そういう意識を持って遺品整理をされている姿が…言葉を選んでしまうのですが、この仕事があってよかった、と思いました。
――ナレーションをしていてどんな気持ちになりましたか?
本編でも出てくるんですけど、メールや電話で連絡がとりやすくなって人がつながりやすくなった時代なのに、孤独死は年々増えていっているという。私は27歳で、小島さんと同い年なんですけど、生と死と向き合うこと、「いつ自分がそうなってもおかしくないんだ」っていう現実をちょっと突きつけられた気がしました。確かに目を背けていることの一つだな、と自分も思いましたし、考えさせられました。
――遺品整理人という職業があると知っていましたか?
知っていました。亡くなった後に遺品を整理してくれる人がいなかったら、死に切れない人たちがいて、そういう人たちを亡くなった後に救うことができる職業なんだと思っていました。
――今回、実際に遺品整理の仕事を見て気づいたことはありますか?
増田さんと小島さんを見ていると、遺品整理人としての仕事に対して誇りと、その先のことを見据えてお話をされていたので、感銘を受けましたし、本当に思いやりを持って仕事に向き合わせているんだなと思いました。
遺品整理の仕事は、片付けや処理、除菌・消毒などをして“捨てていく”ものだとどこかで思っていたんです。でも、捨てずにその人の思い出や記憶とか、ご遺族の方に対してプラスになるものが何かないかと探す、“集める”作業でもあるんだな、と思って。そこは今回、ナレーションをさせていただく中で、知れてよかったな、と思ったことのひとつでした。
最後に増田さんが言っていた、生前自分がどういう人間だったかを書いておく、というアイデアも、ちゃんと(生死と)向き合っている人にしか思いつかないもの。自分が向き合っている人たちや家族とかに「何か自分のことを残そう」という意識を持って生きていないですし、でも、自分が亡くなるときにそれを必要とする人がどこかにはいて…。おふたりは、そのための手伝いをされているというのが、すごいことだと思いました。
――ご家族を思うこともありましたか?
ありましたね。自分も地元を離れてひとり暮らしをしているので、何かあったときに飛んでいけないというのが引っ掛かりますし、3ヵ月連絡を取れなかった(ために家族が孤独死してしまった)ご遺族の方の後悔の気持ちを見ていると、「会おう」という気持ちはあっても、「会えなかった」ことが一生引っ掛かりになるんだという。自分自身も、忙しいことにかこつけて連絡ができなかったり、会いに行けなかったりすることがあるので。
――『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当するのは3度目ですが、ご自身にとってはどんなお仕事ですか?
まだ3回目ですけど、毎回出会う人たちの人生の濃厚な部分に声を当てさせていただいているので、視聴者の方に届くように、自分自身も理解を深めないといけないなとは思います。
――読む上で心がけていることはありますか?
前に出ない、ってことでしょうか。感情移入しすぎて、感情を乗せるとすごく個人的なものになってしまうので、どこか一歩引いて読むようにしています。見る人によって見え方が変わるドキュメンタリーだと思います。
――前回、『52歳でクビになりました。~クズ芸人の生きる道~』(20年4月19日放送)、前々回『娘がシングルマザーになりまして…~29歳の出張料理人 彩乃~』(19年11月24日放送)を担当されましたが、次回やるとしたら、どのようなテーマを読んでみたいですか?
先日、獣医師さんの回『花子と先生の18年~人生を変えた犬~』 (20年5月10日、17日放送)を、家でひとりで見ていて感動しました。やっぱり、世の中でまだみんなが知らないだけで、感銘を受けたり、知ることで勇気を与えてもらえる人生がたくさんあると思うので。『ザ・ノンフィクション』はそういう番組だと思っています。これからもそういう人の人生に出会えたらいいなと思います。
――最後に改めてメッセージをお願いいたします。
遺品整理人というお仕事を知っている方も知らない方もいらっしゃると思いますが、決して“離れている”ものではないと思うので、もしお時間があれば見ていただきたいな、と思います。