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NON STYLEの石田明さんがオリジナル脚本と演出を手掛ける舞台「結 －MUSUBI－」に、劇団EXILEの小野塚勇人さんが主演します。

吉本興業史上最長となる4年の構想期間を経て上演されるこの作品は、相撲部屋を舞台に、老若男女誰もが気軽に楽しめ、世界共通である“笑い”を中心にストーリーが進行。

アクションあり、ダンスあり、サプライズあり、ド派手な演出ありと、“しゃべらないけどうるさい”内容で、客席を笑いの渦に巻き込むのだとか。

コメディ作品でありながら、いっさい言語を使用しない“ノンバーバル”という表現方法において、小野塚さんがどのような力士ぶりをみせるのか、そして、新たなジャンルに挑む心境は？座組を率いる小野塚さんを直撃しました。

――今回のコンセプトを初めて聞いたときの率直な感想を聞かせてください。

芸人としての石田さんはもちろん存じ上げていましたが、石田さんが手がける新しいジャンル「ノンバーバル」という言葉はよく知らず…。でも、その新ジャンルに相撲を盛り込み、日本ならではの笑いを世界に届けようという志がすごいなと思いました。

その第一歩となる作品に主演させていただけることは責任を感じる一方、絶対に楽しくなるだろうという予感がして、心を強く動かされました。

――石田さんは「結 －MUSUBI－」専用の常設小屋を建てたいという野望をもっているそうですが…。

とても素敵なことだと思います。ノンバーバルというジャンルがどこまで広がっていくのか未知数ですが、石田さんの夢の一歩となる作品で手助けができたらうれしいですね。今回は雅ノ花を僕が演じますけど、違う俳優さんや芸人さんが演じる雅ノ花もいつか見てみたいです。

――本作は「セリフのないト書きのみの台本」となっているそうですが、読んだ感想を聞かせてください。

第一印象は「難しい」でした。おそらくこういうことなんだろうけど、僕が考えていることと、石田さんが思い描いていることがはたして一緒なのか…という疑問が生じて。

さらに、セリフがない分、動きや表情ですべてを説明しなければいけないので、やることが多いんですよ。会話のテンポで魅せたり、演者同士でかけ合ったり、感情を爆発させながら言葉を発したりなどが一切なく、動きのみでお客様を笑わせなければいけない。

通常の作品におけるアクションや殺陣に近いぐらい“やること”が多い作品なので、相当稽古を積まなければいけないと身が引き締まる思いでした。

――出演にあたって、石田さんと何か話しはましたか？

「小野塚くんには楽しみながらやってほしいし、その場を引っかき回してほしい」と言われました。僕が演じる雅ノ花がずる賢い性格で、周囲で兄弟が右往左往するみたいな話なので、そんな部分を心から楽しみつつ、みんなを困らせてやろうという思いです。

――近年、芸人としてだけではなく、俳優としての露出も多い石田さんですが、どのようなイメージを抱いていましたか？

吉本興業に所属している俳優の友人がいて、彼のファンクラブイベントを見に行ったことがあるのですが、そこで披露されたのが、かつて石田さんとキングコングの西野亮廣さんがやった「アカメガシワの爆弾」というコントでした。

序盤はお笑いに振っているのに、後半は感動に変わるような20分ぐらいの内容で、それを見たときに「コントだけど芝居じゃん」と驚いたことを覚えています。

芸人さんは自分で脚本を書くことはもちろん、芝居も上手で才能豊かな方が多いので、俳優だから、芸人だからという見方はせずに、“1人の表現者”としてリスペクトしています。

――小野塚さんが本作で演じるのは、伝説の横綱・雅ノ富士の4人の息子、雅ノ國、雅ノ海、雅ノ龍、雅ノ花の中の四男・雅ノ花ですが、力士を演じる日が来るなんて想定外だったのではないですか？

そうですね（笑）でも、力士っぽくない僕が演じるからこそ、見た目とのギャップを楽しんでほしいです。

――これまで相撲にふれたことはありますか？

テレビ中継やスポーツニュースで見たことがある程度です。出演が決まってからYouTubeで過去の名取組や名場面を見たのですが、立ち合いでの一瞬の駆け引きや、取組で勝ってもストレートに喜びを表現しないところに日本人っぽさを感じました。その奥ゆかしさこそ“国技”という印象でした。

――演じる雅ノ花からはどのような印象を受けましたか？

雅ノ花は4兄弟の末っ子で、要領がよく、ずる賢いけど、どこか憎めない性格。実は僕自身、3兄弟の末っ子で、雅ノ花にはなんとなく共感できます。「ここまでやったら怒られるかな？」など、2人の兄の顔色を見て育ったので、そんな部分は等身大で演じられそうです。

――石田さんが「全員がはまり役」だと話していましたが…。

先日、ちょっとしたワークショップみたいなものがあったのですが、皆さんとてもスムーズでした。石田さんがおっしゃるなら間違いないと思います。

――脚本を読んで「ここはあて書きだな」と感じるところはありましたか？

（所属事務所の）LDHポーズみたいなものが登場するので、これは僕限定でしか使えませんね（笑）。

――本作では「してはいけないこと」がいくつか登場しますが、小野塚さんがかつて「してはいけないこと」をしてしまった経験はありますか？

初めて出演した舞台が、2010年の「ろくでなしBLUES」という作品で、原作は1980年代後半～90年代のヤンキーが主人公の学園ものなので、登場人物がひと昔前のビジュアルなんですよ。僕は応援団の池上という役で、髪型は角刈りに鬼ゾリ（＊額をM字型に深く剃り込んだヘアスタイル）。演出家さんの指示で、カツラではなく地毛でやることになり、10㎝ぐらいの鬼ゾリを入れました。

当時はリアル高校生で、平成の世の中にそんな髪型の高校生なんていないじゃないですか（笑）。学校へ行ったら先生から「その髪型は校則違反だ」と言われ、そこから3ヵ月ぐらい帽子をかぶった生活をしていました（苦笑）。

――2022年が始まって約2ヵ月が経ちましたが、新年の展望を聞かせてください。

今年はデビュー10周年の年ですし、20代最後の年でもあるので、僕にとって勝負の年と考えています。30代になったときに何がしたいのか、そして、何ができるのかを考えたところ、失敗してもいいからいろいろなことに挑戦してみるのが大事だなって。

振り返ってみると、先を読んで躊躇したことや、途中で飽きてしまい、やめることの多い20代でした。たとえ、失敗してもそれを生かして次に挑めばいいと思うので、今年は自分がひらめいたものや、やりたいと考えているものに前のめりになって向き合いたいです。

昨年はミュージカルに初めて挑戦して、今年はノンバーバルコメディ。これを終えた後に自分の中で拓けるものがあるはずなので、感覚を研ぎ澄ませながら、面白い俳優になりたい。今の時代、“こういう人こそ俳優”という定義はないと思うので、型を作らず柔軟にエンタテインメントを楽しんでいきたいです。

最新情報は、舞台「結 －MUSUBI－」公式サイトまで。

撮影：河井彩美