堤真一さんが主演する舞台、COCOON PRODUCTION 2022 DISCOVER WORLD THEATRE vol.12「『みんな我が子』-All My Sons-」が5月10日開幕。
堤さんのほか、伊藤蘭さん、森田剛さん、西野七瀬さん、大東駿介さん、山崎一さんのコメントが到着しました。
<堤真一 コメント>
やればやるほど難しい台本だなと感じます。ジョーは学もなく単純な人間で、想像力もない。戦場は経験しておらず、戦争はあくまで“外”で行われていることで、人の命に対する感覚が薄れている。最初に台本を読んだ時は「なんて酷い父親だ!」と憤りを感じましたけど、役柄を理解すると、そのどこがいけないんだ?という彼の主張もわからないではないんです。
ジョーを演じる上で、落ち着いた強い父親でありたいとは思うものの、声や身体の使い方も含めて、今までにない挑戦です。この強烈な自己主張に満ちた人間を、一見“正しく見える人間”にできるように創り上げたいと思います。
それにしてもアーサー・ミラーはやっぱりすごいなと。いかに人間が完璧じゃないかということを突きつけられますね。人は時に自分を正当化しながら生きるものであり、直接・間接に人を巻き込む戦争がいかに馬鹿げたものかも痛感させられる。
この父親も観る人によって意見はさまざまでしょうけど、ひと色ではない思いを持ち帰っていただけたらと思います。
<森田剛 コメント>
会話のスピード感、人物たちの思考がものすごい速さで動いているので、その言葉のキャッチボールはとても演劇的だなと思います。言葉と腹の中で思ってることが全然違う、そんな人がいっぱい出てくる話なので、観る人によって解釈も違ってきますよね。
笑っている人の腹の中には絶対にその反対があるな、と思って見ちゃうけど(笑)、意外にそのまんまの笑顔の人だったり。また、怒りの感覚を相手に向けて発散するのと、自分に向けて発散するのでも、見え方がずいぶん違って来る。そういう意味では、クリスはどう見られるんだろうな、という楽しみもあります。
稽古が苦しくて逃げ出したくもなりましたが、でも忘れちゃうんですよ。舞台ってそんなものかもしれない。いいことばかり残って嫌なことは忘れちゃう。クリスとして生き生きと、真っ直ぐに立つ自分を想像して、そこを信じてやるしかないなと思っています。
<西野七瀬 コメント>
海外の戯曲、海外の演出家さん、共演させていただく皆さんも初めての方が多く、初めての経験ばかりです。自分の幸せを実現するために、やむを得ずとはいえケラーを追い詰めるきっかけを作るのはアンです。台本を読む前までは、こんなに物語の鍵を握る役割があるとは想像していませんでした。
どうしてこれほど贅沢で素晴らしいお話をいただけたのだろう?と思う一方で、難しい挑戦の方がやりがいがあるということは今までの経験上わかっていました。毎回葛藤しますが、安定の道には行きたくないタイプで、どうしても難しそうな方に興味を引かれてしまう。挑戦は大好きですね。実際はめちゃめちゃ弱音を吐いていますが(笑)、とても充実しています。
生の声でちゃんと客席に届けられるのか、もっと細かくリンゼイさんのリクエストに応えたいのに全然できていないところなど、考えなければいけないことばかりで頭が一杯一杯ですが、挫けずにこの壁を乗り越えていきたいです。
<大東駿介 コメント>
リンゼイさんの演出は面白いです。丁寧に、丁寧に進めていくので、発見がすごく多いんです。こうしてとことん繊細に台本と向き合える時間をもらえたことは本当にありがたいし、演劇はこうして作られるんだ!という楽しさを実感できて、すごく嬉しいですね。
この戯曲を最初に読んだ時、いち家族の出来事のなかに、その時代の痛みや悲しみ、そこから先に進もうとする人間の強さみたいなものをすべて見せていると思って、とんでもない重圧を心に感じたんです。その圧の強さをしっかりと舞台の上に表せられるようにしたいですね。ちゃんとその時代の風が、劇場に吹けばいいなと。
今、本当に戦争の最中であるという現実、ニュースの映像に対して、どこまで僕らがリアリティを感じられるのか…といったことも考えずにはいられません。それでも僕たちは生きていく、そうした小さな、灯火みたいな命のエネルギーに、向き合える時間になればいいなと思っています。
<山崎一 コメント>
ミラー作品は「これでもか!」としつこいぐらいに打ちのめされるようなところが面白いと思える人と、そこが苦手な人と、二手に分かれる気がします。僕はこのヒリヒリする感覚が好きですね(笑)。
それにやっぱり構成が上手いんですよ。サスペンスめいた部分もありつつ、でも全てが理詰めで成立しているわけじゃない。すごく曖昧な部分も残されている。
おそらくケラー家っていい家族だと思うんです。でも一つの嘘だけが重くのしかかっている。もちろんそれは許されないことだけれど、寛容な心を持って見るならば、その一点のみで友達関係を壊すことをしなかったんじゃないかな。加えて、戦場を経験しながらピュアな心を持ち続けているクリスの存在も(自身が演じる)ジムの心を動かしたんじゃないか…と、勝手に解釈しています(笑)。
ジムは知的で、ちょっと皮肉ったジョークも言い、周りが見える人物。ユーモアがありつつも視野が広く、やさしい眼差しを持っている、そんな風にできればいいなと思っています。
奇しくも今、ウクライナで戦争が起きて、現実と作品がリンクしています。戦争で犠牲になるのは誰にとっても「我が子」なのにと思ってしまいますね。
<伊藤蘭 コメント>
繰り返し台本を読んでみると、登場人物一人一人の悩みや葛藤に改めて惹きつけられます。一日に凝縮された中で濃密すぎる出来事が起きていきますが、時に滑稽でもある人物たちが愛おしくなってくるんです。心理的サスペンスのような側面もありつつ、そんな風にそれぞれの人間らしさが浮き出てくるところが、このお芝居が長く愛されてきた理由ではないかなと思っています。
強烈な個性の母親役はいろいろと経験してきましたが、ケイトはひときわアップダウンが激しくて、まるでジェットコースターみたい(笑)。精神的に不安定な人のように見えて、並外れてエネルギーが大きい人だと思います。彼女の判断や深謀は自分でも言う通り愚かかもしれませんが、最後まで揺るがない夫婦の結束、夫に対する愛情という一点は大切にしたいです。
ケイトとしては子供たちに愛情を分け与える一面と、感情が沸騰して心の奥底が覗く部分と、メリハリをつけて表現できればと思います。
<COCOON PRODUCTION 2022 DISCOVER WORLD THEATRE vol.12「『みんな我が子』-All My Sons-」公演概要>
出演:堤真一、森田剛、西野七瀬、大東駿介、栗田桃子、金子岳憲、穴田有里、山崎一、伊藤蘭
東京公演:5月10日(火)~30日(月)/Bunkamura シアターコクーン
大阪公演:6月3日(金)~8日(水)/森ノ宮ピロティホール
最新情報は、COCOON PRODUCTION 2022 DISCOVER WORLD THEATRE vol.12「『みんな我が子』-All My Sons-」公式サイトまで。
<あらすじ>
第二次世界大戦後の特需景気に沸くアメリカ合衆国の地方都市の夏のある日。
ジョー・ケラー(堤真一)は、飛行機の部品工場を経営し、戦争特需によって財を成し、家族で幸せそうに暮らしていた。しかし、戦争で行方不明となり、いまだ帰還しない次男ラリーの残像が、妻ケイト(伊藤蘭)をはじめ家族に暗い影を落としていた。
嵐の次のある晴れた朝。ジョーと隣人のフランクとドクター・ジム(山崎一)が談笑している。
しかし、前夜の強風により、ラリーの記念樹が倒れてしまい、ケイトは不吉な予感に錯乱気味であった。そこに一家の幼馴染のアン・ディーヴァー(西野七瀬)が数年ぶりにケラー家を訪ねてくる。
長男クリス(森田剛)は、還らぬラリーの婚約者であるアンに密かに恋焦がれ、互いに弟と婚約者を失ったもの同士、躊躇いながらも次第に心を通わせていく。
そこへアンの兄ジョージ(大東駿介)の突然の来訪──。
実のところケラー家とディーヴァー家には深い確執があり、ケイトがラリーの死を信じない本当の理由の根本もそこにあったのだ。
家族の知らない、知られたくない真実が語られ始める──。