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『グラップラー刃牙』がBL作品なのではと思い始め、人生が変わったBL研究家・金田淳子に聞く刃牙の魅力!_site_large

『グラップラー刃牙』がBL作品なのではと思い始め、人生が変わったBL研究家・金田淳子に聞く刃牙の魅力!

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シリーズ既刊136巻、発行部数は累計7500万部を突破(2019年12月現在)している漫画『グラップラー刃牙』(板垣恵介著/秋田書店)。

格闘技の世界を舞台に、超人的なキャラクターたちが「地上最強」を目指して縦横無尽に闘い合う、言わずと知れた格闘漫画の金字塔。アニメ化もされ、現在もシリーズ最新作『バキ道』が『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で連載中だ。

しかし、これだけの人気と発行部数を誇りながらも、作風と独特な絵柄ということも影響しているのか、女性の読者はたった5%以下だという(*発行元の秋田書店の体感)。

そんなハードな男性向け格闘漫画に新たな視点で切り込んだ書籍がいま話題を呼んでいる。

男性向け格闘漫画をBL漫画だと再解釈

この男と男の真剣勝負と繰り広げられる“殺し合い”の物語が実は“殺し愛”なのでは…?『刃牙』は実はBL(ボーイズラブ)作品だったのでは?と思い始め、毎日毎日妄想し、刃牙のことしか考えられなくなり、つぶさに日々検証し続けた、BL研究家・金田淳子が「『グラップラー刃牙』はBLではないかと1日30時間300日考えた乙女の記録ッッ」(河出書房新社)をこの度上梓した。

刃牙の魅力に取り憑かれ、男性向け格闘漫画をBL漫画だと再解釈してしまった、“一人のBL格闘家によるB(刃牙たちの)L(ラブ)との闘いの記録”とは?

12月5日に開催された刊行記念トークイベント『刃牙の良さをいまこそ女子にもワカッてもらうプレゼン大会2019 男子も来てね!』の様子と、金田淳子インタビューをお届けする。

超実戦ボーイズラブ、金田淳子の登場だッ!

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刃牙には頻繁に使用される語尾「ッッ」をさり気なく盛り込んだイベントタイトル

イベントには著者の金田、お菓子研究家にして大の漫画好きでBLにも造詣の深い福田里香、刃牙の愛読者で、刃牙検定2級保持者の覆面ブロガーである三角絞め、の3人が登場。

刃牙を未読という福田に金田が刃牙の魅力をプレゼン、そして三角絞めが刃牙愛読者、格闘技好きという視点から作品の魅力をフォローしていく。

『グラップラー刃牙』21巻で描かれた有名な「全選手入場シーン」になぞらえて、「やおい、ボーイズラブは実戦で使えてナンボのモン!!! 超実戦ボーイズラブ!! 日本から金田淳子の登場だッ!」と自らを紹介する、金田のアナウンスでイベントの幕は切って落とされた。

これは完全に男たちの“殺し合い”ならぬ“殺し愛”と思える箇所を金田がスクリーンに映し出し、『刃牙』が格闘漫画ではなくBL漫画であることを「おわかりいただけたろうか」と分かりやすく提示していくたびに「ワッショイッ ワッショイッ!」と、刃牙の死闘に興奮する地下闘技場の観客 (*『グラップラー刃牙』3巻に登場) のように盛り上がる満員の会場。

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満員の会場はおよそ男女比半々、『刃牙』未読者も多数見られた

「刃牙さんはジルベール(*竹宮惠子著の名作『風と木の詩』に登場する、男たちを翻弄する小悪魔的な美少年)」という金田独自の説と検証に、福田も「えっ!同じ!?」と驚きながらも、刃牙とジルベールの生い立ち、置かれた環境の相似についてひとしきり解説を受けると、大きく頷いた。

そして福田の提唱する「フード理論」(*作品に登場するフード表現を読み解くことで、作品を深く味わうための独自の“フード・ステレオタイプ”を提唱)をもとに、刃牙を解説するという書籍にはない検証も行われた。

<フード3原則>
「1.善人は、フードをおいしそうに食べる」
「2.正体不明者は、フードを食べない」
「3.悪人は、フードを祖末に扱う」 
(出典:『ゴロツキはいつも食卓を襲う』福田里香著/太田出版

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金田による刃牙におけるフード描写についての解説スライド

栄養と即効性を求めた刃牙の独特な試合前の食事(タッパいっぱいのおじや、炭酸抜きコーラなど)、闘いを美食に例える(刃牙の父)範馬勇次郎の筋の通った言動などについても理解を深めていった。

会場には特別ドリンクとして「炭酸抜きコーラ」(*刃牙が試合前に飲む高カロリー飲料を模して、開場前に金田らが振って炭酸を抜いた)も提供され、観客も刃牙と同じ味を共有した。

まだ刃牙を読んだことのない人、刃牙の愛読者、BL作品に興味のない人、BL作品をこよなく愛する人…、書籍同様にそれら全ての人に向けて開催された今回のイベント。

板垣恵介という天才が生み出した恐ろしいほどの引力を持つ作品に、新たな視点を提示した金田。

会場はまるで素晴らしい試合を観戦した後のような高揚感に包まれていた。

刃牙を読んでこなかった人、BLを読んでこなかった人にも刃牙の魅力を伝えたい!

画像ギャラリー【全5枚】を見る 刃牙本を持ち微笑む金田淳子

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トレードマークの萌えジャージを着た金田淳子

イベント終了後、フジテレビュー!!ではこの1年を刃牙に捧げたというBL研究家・金田淳子にインタビュー。

BLという視点を持つことで「より鮮やかな色彩を持った」と刃牙について語る金田。 “BL目線”で見る刃牙の魅力、好きなものにのめり込むことの楽しさを聞いた。

<BL研究家・金田淳子インタビュー>

――書籍の反響はいかがですか?

金田:いまのところ、“刃牙を読んだことのある人で、BL目線に抵抗のない人”が、本書を読んでくださっているのかなと思います。

昔から刃牙ファンだという方々から、「作品の細かい部分に気付いている」とほめて頂いたのがとてもうれしいです。

格闘技目線で読んでいる人たちはあまり気付いていなかったらしいのですが、「愚地克巳の私服が変」(*金田の推しキャラの空手家、一見ゴミ袋のような衝撃的な服を着用)ということや、特に作中で克巳の服装が変だった時期が、加藤清澄と末堂厚が入院している時にあたっているとか、作品を読み解きながら細かく検証しているのですが、「初めて気づいた」と言って下さいますね。

もともと作品の枝葉の部分を見ていくのが好きなので、巻末にモブキャラ一覧表(*刃牙シリーズにちょっとだけ登場した気になったキャラを、金田がひとことコメントで10ページに渡って紹介)を作ったのですが、それを作成している時もすごく楽しかったです。

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――そもそも『刃牙』シリーズにハマった経緯は?

金田:去年の8月に『グラップラー刃牙』『バキ』『範馬刃牙』という3シリーズの1巻~3巻を何気なく読みました(*ネットの無料試し読み)。

その時はたまたま自分が強烈にハマっているものがなく、自分の人生がちょっと乾いてるなっていう自覚はありましたね。

年齢を重ねると、年々新しいものを学習したりハマったりするのが難しくなってくるので、昔から好きなものはずっと好きだけれども、ビビッドにハマっているものがなかった。

とはいえ『刃牙』は、事前にBL臭を感じたとか、ハマりたくて読んだというわけではなく、すごく有名な漫画だから、古典的名作の『火の鳥』(手塚治虫著/朝日新聞出版)を読むみたいな気持ちで、「知っておいた方が良いな」くらいの気持ちで読み始めたんです。

――実際に読んでみていかがでしたか?

金田:独特すぎる筋肉・肉体表現に対して、「怖いな、気持ち悪いな」という先入観は正直持っていました。

でも、最初のシリーズ『グラップラー刃牙』の絵柄は今とは全然違っていて、昔の少年漫画の可愛い絵という感じで、読みやすかったです。今の刃牙さんはすごく妖艶な顔立ちをしていますが、初期はすごく可愛くて。

こんな可愛らしい青虫から、サナギへ、そして蝶へ…どんな過程があったんだろう…と驚きましたね。長く描いている漫画家さんにはよくあることですが、それにしてもこんなに画風変わる人いる?(笑)。

でも作者の板垣先生が、その時々に一番美しいと思っている顔だちで、刃牙さんを描いているんだなっていうのが分かるんですよね。なのでとにかくどのシリーズも刃牙さんが可愛くて美しいと思います(*刃牙はグラビアアイドル説を金田は提唱)。

そこから翻って考えてみると、「独特すぎる筋肉表現」も、刃牙さんの顔だちがそうであるように、美しいものを描こうとしているのだと思います。

そういう、男性美を追求する漫画だとは正直思っていませんでした。だってみんなネットで面白おかしく範馬勇次郎の画像ばっかり貼るから!(*刃牙の父、地上最強生物と言われる範馬勇次郎の人間離れした画像はネットのネタ画像として人気。例:背中の筋肉に鬼の顔が浮き出るなど)

刃牙がこんなにも自分のBL心にグサッと刺さってくる作品だったんだと知ることができたのは、私にとっては大事件でした。

既刊130巻を一気に注文し読んだところ、大事件が起きた!

金田:刃牙さんが美しくて小悪魔的だというだけではなく、範馬勇次郎は強い男を見ると「いい芳香(かお)りだ…」「アンタとヤリたかった」とつぶやき、「闘いはSEX(セックス)以上のコミュニケーションだ」とか、台詞がそのものずばり「BL!」ってことを言ってくれる。

9冊の試し読みを終えた時点で、「これはBL的な意味でただならぬことが起きるだろう…」という予感を持ちました。だって、こんなこと(*すれ違いざまに殴りかかってきた愚地独歩の攻撃をかわしながら拳にCHU♡とキスをする刃牙)が平気で行われている世界なんですよ!!「もうBLの第1話やん!」と思いました。

それから一気に既刊130巻以上を注文したんですが、電子ではなく紙の書籍を選んだため、全巻揃って届くまで3週間くらいかかってしまったんです。

なのでその3週間は自分の中で、「これからどういうことが起きるのだろう」と妄想が止まらなくなってしまいました。

で、実際に届いたものを大切に読んでいったところ、また私にとって大事件が起きたんですね。

以前の私だったら絶対に好きになっていないはずの、愚地克巳(*金田の推しキャラ、神心会空手の使い手で、“空手を終わらせてしまった男”と呼ばれる天才)をすごく好きになってしまって…。これについては自分の可能性が広がったなって思いましたね。

やっぱり優れた作品、優れたキャラというのは、「自分のタイプじゃないし…」って思っていても、不可抗力で好きにさせてくるんだなって思い知りました。

一ヵ月くらい耐えて読んでいると独特な筋肉表現も気にならなくなりますし、私みたいに「推し」との思いがけない出逢いがあるかもしれないので、ぜひ未読の方には、刃牙を読んでほしいです。

無数の漫画がある中で、なんで筋肉を我慢してまで読まなければいけないのか、と思われるかもしれませんが、読んで損はないと思います。私の周囲で刃牙を未読だった女性たちも、私の圧に負けて読んでくれているんですが、「面白い」と言ってくれています。

小さな悩みがどうでもよくなる、刃牙の恐るべき効果

――刃牙と出会い、金田さん自身に変化はありましたか?

金田:先日、ある媒体で日本のBLの歴史と現状について取材を受けたんですが、記者さんはそれまでBLや二次創作についてほとんど触れる機会が無かった方でした。

ですがネガティブな偏見が全くない方で、いまBLが非常に流行っている東南アジアを中心に、熱心に取材されていました。

その記者さんが教えてくださったのですが、BL目線で作品を語ったり、創作したりしている方たちは皆、心底、楽しそうで、エネルギッシュだと。記者さんは、「わたしもBL目線がわかるようになりたい!」とまで思われたそうです。

やはり何かに強烈にハマるというのは、他にかけがえのない楽しいことですよね。さらに、そちらに意識が向くので、何か小さな悩みがあっても「そんなことにかまってる暇はない!」という状況になれたりしますね。私も刃牙を始めてから小さい悩みでくよくよしなくなりました。

積極的に深堀りしたほうがいい悩みももちろんあると思うのですが、ここで私が言っている悩みというのは、例えばなんですが、私が大学時代に住んでいた寮の床に貼られていたタイルの色が嫌がらせのようなどす黒い赤色だったんですよ(笑)。

大学側が支給してくれたトイレ用のサンダルも嫌がらせとしか思えない真っ赤と真っ青で。「逆に、どこでこれが買えるの?」というようなものを支給してくるんですよね。

とはいえ、何十年も前に貼られた寮のタイルについてはもう変わらない、どうしようもないこと。私もしばしば、タイルの赤黒みに何らかの悪意を感じてイライラしていたのですが、これぐらいのことは、のめりこめる趣味があるとあまり気にならなくなって、むしろ笑えて来たりしますね。

今だったら、「地下闘技場っぽい! 寮生(グラップラー)たちの血と汗と涙がしみこんだ床だ!」と喜ぶかもしれませんね(笑)。

この1年間は刃牙のことばかり考えていたのですが、感想を語り合える人が幸か不幸か周りに誰もいなかった。

これがもし女性向け同人業界ですごく流行っている作品だったら、好みが似ている人たちが見つかるので、ワッショイッワッショイッと楽しく騒いで、同人誌を買ったりして「決(け)ッ~~~~~~~~~ちゃ~~~~~~~く!!!」と、けっこう簡単に満たされることができたんでしょうね。

でも刃牙に関しては周囲に読んでいる女子がおらず、同人でも全然流行っていなくて、自分の感想をwebのプラットフォームサービスに叩きつけるしかなかった。

孤独がなせるワザでしたが、そのおかげで書籍になったというのは、ありがたい話ですね。

こういう、不運が重なって幸運に転じるという部分にも、「毒が裏返ったァッッ」という刃牙イズムを感じています。

何かに熱中している人、まさしく刃牙のことを語る金田は多幸感に溢れていた。どんな人でもこの「『グラップラー刃牙』はBLではないかと1日30時間300日考えた乙女の記録ッッ」を読んだら、その熱量と視点の秀逸さに驚くだろう。そして気付いたら新しい目線の扉が開いてしまうかもしれない…。そんな圧倒的な何かに触れたい人におすすめしたい書籍だ。

金田淳子(かねだ・じゅんこ)
社会学研究者。やおい・ボーイズラブ・同人誌研究家。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。共著に『文化の社会学』(有斐閣)、『オトコのカラダはキモチいい』(角川文庫)がある。ジェンダー論、社会学の視点からやおいや同人誌文化を研究。
webプラットフォームサービス「note」にて、「乙女の聖典~女子こそ読みたい「刃牙」シリーズ」を連載中!

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