FIFAワールドカップ2022カタールに向けて、さらなる進化を続ける森保JAPANは、1年ぶりに南米の強豪・ベネズエラ(FIFA世界ランキング26位)と対戦する。
11月19日(火)19時から、フジテレビではこの注目の試合を『キリンチャレンジカップ2019 日本×ベネズエラ』として生放送する。
また今回は、放送中にスマホを片手に試合観戦を楽しむための、画期的な試みを実施することが決定した。
その試みとは、注目選手密着カメラ、通称「超リアルタイム“サムライCAM”」だ。通常、テレビの試合中継では、ピッチ全体を映した映像が多いが、この“サムライCAM”では、注目選手にクローズアップした映像を、テレビの映像と時差がほとんどない状態で、スマホのブラウザーで見ることができる。
テレビで&スマホ(PC)の連携
そのため、テレビで試合全体を、スマホで特定の選手のプレーを同時に楽しめるようになる。初めてこのシステムを導入し大好評だった『FIVBワールドカップバレーボール』に続き、フジテレビのサッカー中継でも初めて導入することとなった。また、今回は全てフジテレビの機器を使っての配信となる。
このシステムを技術的に支えるのは、フジテレビ技術開発部の伊藤正史だ。
以前からテレビカメラの映像をスマホに配信する技術はあったが、テレビ画面に比べて約30秒から1分程度の遅れが生じていたという。しかし、伊藤は、ULL CMAF(Ultra-Low Latency Common Media Application Format)と呼ばれる最新の動画配信方式を始めとする「超低遅延ライブ配信」の技術実証にいち早く取り組み、今回のシステムでは地上波放送から数秒程度の超低遅延ライブ配信を提供する。
もともと“放送と通信の連携技術”を専門としていた伊藤は、「以前から配信の遅延を少なくする技術を研究していました」と語る。
その技術が形になってきたころ、スポーツ番組の制作担当から、「この技術を応用して、試合を別アングルから映したものを配信できないか」と提案があり、2週間弱というかなり短い準備期間でこのシステムを完成させたのだという。エンジニアの持つ高い技術と、番組制作者のアイデアが融合し、今回の企画が生まれた。
2001年にフジテレビに入社した伊藤は、小さな頃からプログラミングやモノ作りが好きで、様々な機器を開発してきたという。
インターネットが広まり始めた20年以上前、既に自宅の照明や音響機器を友人が遠隔で動かせる仕組みを作るなど、今では一般的な技術をいち早く開発。
東日本大震災では、東北に設置された臨時災害放送局の相談に応え、放送を支援するシステムを自作して無償提供している。そんな一方で、小学生の頃には、ゲームプログラムを作って友人たちに楽しんでもらったり、“好きなアイドルの声を録音してキーボードで文字を打ちこむと、まるでそのアイドルがしゃべっているかのように音声が再生される”という、なんともマニアックなソフトウェアも作ったりしていたそうだ。
そんな根っからの技術好きである伊藤、43歳には見えない恰幅(かっぷく)の良さと愛嬌(あいきょう)のある笑顔が印象的だ。“サムライCAM”の技術について、「放送業界の大勢の技術仲間との切磋琢磨(せっさたくま)があって実現したもの」と話す。
<フジテレビ 技術局技術開発部 伊藤正史インタビュー>
――このシステムを開発した経緯を教えてください。
私は、もともと「放送と通信の連携技術」を専門で研究開発しているのですが、現在使われているような同時配信の技術は、一般的に放送から30秒~1分の遅延があるというのが当たり前でした。
そこで“低遅延化”の技術を研究していたのですが、その中で番組の制作担当から「その低遅延の技術を、試合中継で別アングルの映像をネット配信したら、より楽しく番組を視聴することができるのでは?」と提案がありました。
私たちエンジニアはそのような技術は持っているのですが、それを利用するアイデアがなかなか浮かんでこないので、そこがうまく融合して、この企画が生まれました。
――子供の時はどんなものを作っていたのですか?
小さい頃からモノ作りが好きで、小学2年生の頃にはプログラミングを始めていました。親にパソコンを買ってもらって。当時はパソコンでゲームなどはできなくて、自分で作らないと何もできなかったので、自分でゲームなどを作っていましたね。
あとは、お恥ずかしいのですが、小学5年生の頃に“好きなアイドルの声を録音してキーボードで文章を打つと、それをアイドルがしゃべっているかのように音声が再生される”システムを作りました。
――モノ作りに興味を抱いたきっかけは?
たとえばファミコンだったら「遊ぶより、作ってみたい」という感覚はありました。いろんなものを分解して遊んでいましたね、分解したものが元に戻るということはほとんどありませんでしたが(笑)。
――大学時代はどんなことを研究していたのですか?
大学のときは、通信系の研究をしていて、特に「暗号化」の研究をしていました。ネットで買い物をするときに自分の個人情報が他人に分からないようにするとか、人を守る技術を開発していました。10数年前にプロ向けの暗号技術の解説書を出していて、最近、それについての子供用の本も出しました。
――発明の原動力は?
「人に使ってもらうこと」ですね。あとは、使った人のリアクションです。今回も自分の作ったシステムをサッカー中継に活用してもらうので、いろいろな人に見てもらって、いろんな意見を聞きたいです。SNSなどでたくさん反応があると、やりがいになりますね。自分が作ったもので、びっくりしたり、喜んでもらえたりしたらうれしいです。
――「超リアルタイム“サムライCAM”」のおすすめの楽しみ方はありますか?
スマホではなくパソコンで“サムライCAM”の映像を見ることです。テレビとパソコンを並べて、両方の画面を俯瞰して見たらおもしろいと思います。監督になった気分で見てもらえたらいいと思います。
――今後どんなことにこの技術を使ってほしいですか?
テレビを見るのに、とんがった見方をしてくれている人に使ってほしいです。バラエティでもいいですし、アイドルの映像を見るのにも使えるかもしれません。
明石家さんまさんの番組だったら、テレビ画面にさんまさんがアップで映っているところで、スマホではどきどきしている他の芸人さんを映すとか、スタッフを映すということもできると思います。