<試写室>“真っ白なキャンパス”サチ(井桁弘恵)の成長がすこぶる楽しみ!さらなるドラマティックの予感
3月4日(土)スタート!毎週土曜23時40分~土ドラ『自由な女神―バックステージ・イン・ニューヨーク―』(全4回)
突然ですが、「土ドラ」めくるめくチャレンジヒストリー、作ってみました。
殺人鬼の手作りバームクーヘン
(記念すべき「土ドラ」第1作・2016年『火の粉』)
タクシーと並走する不死身のストーカー
(2019年『リカ』)
ママ(本上まなみ)がおっさん(塚地武雅)に!?
(2020年『パパがも一度恋をした』)
コンプライアンス無視の血しぶき&生首
(2020年『恐怖新聞』)
隕石衝突により氷河期となった地球のサバイバル
(2021年『#コールドゲーム』)
ドケチ美容外科医の金満ファンタジー
(2021年、2022年『最高のオバハン 中島ハルコ』)
そして、今作『自由な女神―バックステージ・イン・ニューヨーク―』は…
ドラァグクイーンとの出会いから始まる超濃厚上京物語
一言でまとめ過ぎて『火の粉』はなんのこっちゃだし、『恐怖新聞』はあらすじゼロだし、『最高のオバハン 中島ハルコ』にいたっては悪意すら感じてしまうキャッチフレーズになってしまいましたが(“金満ファンタジー”は自分でも謎)、こうして並べてみると、どうでしょう(何が!?そして、いろいろごめんなさい)?
今回スタートする『自由な女神』ってドラマは、キービジュアルを見れば一目瞭然だし、あらすじにも明記されている“ドラァグクイーン”(ド派手な衣装を身にまとった人物)が登場するお話だというのに、こと「土ドラ」においては、びくともしやしない“通常運転感”。
主人公なのに殺人鬼だなんて当たり前だし(『真昼の悪魔』『限界団地』)、性別が変わってしまうのも“おっさん”だけじゃないし(『個人差あります』)、隕石衝突だってもう2回目だし(『隕石家族』)、こちとら高齢ホステスバーを舞台にした成長ドラマもやってんだから(『その女、ジルバ』)、「土ドラ」(「オトナの土ドラ」含む)はもう“チャレンジの向こう側”に位置しているのです。
だもんで、この物語を通常のドラマ枠でやるとなった場合、どうしても滲(にじ)み出てきちゃう、「挑戦してます!」という独りよがりや、キャッチーな人物を登場させることへの安易さや、ダイバーシティを題材にした社会性とか、そういうの?(どういうの?)。えぐみやいやらしさや、堅苦しさとか、そういうの、一切感じさせない屈強さ。
「土ドラ」だからこその“当たり前”。あらすじ的にも画的にもインパクト抜群だというのに、ここまで平然と、何食わぬ顔で、“いつも通り”であり続ける「土ドラ」の姿勢。これを “多様性”と言わずに、何と言うでしょう?
“達観してる人物はいいこと言いがち”みたいな、特別感をもたせない
と、毎回「土ドラ」の試写室を担当してるせいで、肩入れと妄想、思想がよくわからない方向へ行ってしまいましたが、そんなことよりも今作のあらすじ。
地元の工務店で働く主人公・サチ(井桁弘恵)は、一人密かに“服作り”を楽しみながらも、それを誰かに発信しようとはしない…“あと一歩”を踏み出せない女性。そんなサチが、“ドラァグクイーン”のクールミントさん(武田真治)と出会い、上京し、夢への第一歩を踏み出す!?…というお話。
なぜ、地方の工務店勤務のOLが、ドラァグクイーンと出会うのか?という“唐突”にみなさんは引っかかるのでしょうが、そんなことは置いといて(いや、この出会いもさりげなくて素敵に描写されてます)、このドラマの何が素晴らしいかって、“ドラァグクイーン”という圧倒的なキャラクターが登場するというのに、こういう系統のドラマにありがちな、“達観してる人物はいいこと言いがち”みたいな、特別感をもたせないこと。
もちろんクールミントさんが発する言葉には金言も多いんだけど、ちゃんと人間らしさも失わない、誰だって同じ、一人の人間として当然持ち合わせているわがままで傲慢な部分も描いているから素晴らしいのです。
というより、武田真治さん演じるクールミントさんが、見た目の作りこみに反してあまりに自然すぎる…クールミントさんと同化し過ぎてるもんだから、金言なはずなんだけど、いいこと言ってる感が一切ないので、すごくチャーミングで応援したくなるようなキャラに仕上がっています。
で、その、見た目の作りこみが過剰なクールミントさんと相反するように、主人公のサチちゃんの造形も素晴らしい。井桁弘恵さんは、“THE真っ白なキャンパス”という感じで、クールミントさんというド派手なペインティングのキャラクターと交わることで、彼女がどう成長していくのかすこぶる楽しみです。
さらなるドラマティックがこの先びっしり詰まっていそうな予感
「服作り」や「ドラァグクイーンとの出会い」、それによる「主人公の成長」も描かれる今作ですが、クールミントさんが経営するバーのバーテン・ケン(古川雄輝)との恋模様も!?というてんこ盛り。…なんだけど、個人的には、サチの幼馴染、篤史くん(三浦獠太)が気が気じゃありません。この篤志くん、何のためにいるのかよくわからない上に、まったく役にも立たないので、その異常なまでの無意味さがクセになります。
初っ端から、「コイツマジで役に立たなそう…」と感じたその第一印象(ごめんなさい)のまま、ラストまでマジでなんの役にも立たない、無意味なキャラをまっとうする篤志くん。無意味過ぎて“無意味である”という意味を持たせるところまで到達した篤志くん。さて、どこまで無意味なのか、注目です。
主人公の服作りに対するクリエイティブにはワクワクさせられるし、クールミントさんの造形、衣装には気になるところばかりだし、イケメンバーテンとの恋模様?にはイラっとするし(嫉妬)、篤志くんの無意味さにはなぜか癒されるし、第1話からとてつもなく濃厚!なんだけど、まだ第1話の段階では導入部といった感じ。さらなるドラマティックがこの先びっしり詰まっていそうな予感です!
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