村瀬歩さんが、自身の演じる役の魅力を語りました。
出演作のことをはじめ、“声優”について語ってもらう連載企画「声優FILE.」。第13回は、アニメ『王様ランキング 勇気の宝箱』(フジテレビ)でカゲの声を担当している村瀬歩さんが登場。
2011年に声優デビュー。2014年に『ハイキュー!!』(TBS系)で初主演を務めると、その後『あんさんぶるスターズ!』(TOKYO MXほか)、『魔入りました!入間くん』(NHK Eテレ)、『バクテン!!』(フジテレビ系)、『大雪海のカイナ』(フジテレビ系)など、数々の人気作で声を担当。
今作では、前作テレビシリーズ『王様ランキング』(2021~2022年)から引き続き、主人公・ボッジ(cv.日向未南)を支える“相棒”のカゲを、特徴的な声色で魅力的に演じています。
前作放送時の反響やカゲ役を演じるうえで大切にしていること、ボッジを演じた日向さんへの思いのほか、声優を目指したきっかけや声優の魅力などを聞きました。
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続編決定に「いちファンとして楽しみでした」
──今作『勇気の宝箱』が制作されると決まったときの心境を聞かせてください。
めちゃくちゃうれしかったです。オーディションのあとに原作を読ませていただいたんですけど、本当に面白くて。ただ、物語としては前作の終わりくらいで原作に追いついてしまっていたので、「続編をやるとしても、かなり先になるだろうな」と思っていました。
そこにお話をいただいたので、うれしい反面、「何をやるんだろう」という思いもあったのが正直なところです(笑)。
でも、スタッフさんから、前作で描き切れなかったお話を作りたいと丁寧に説明していただいて。作品のいちファンとして「なるほど!」「見てみたい!」と、楽しみでした。
──前作放送時も含めて、『王様ランキング』に関する反響はありましたか?
反響はすごく大きかったです。僕が声を担当しているアニメを、親はいつも見てくれていますが、『王様ランキング』も見てくれていて。実家に帰ると、カゲのモノマネをされます(笑)。
ほかにも、仕事でご一緒するスタッフさんからも「面白い」「いい役だよね」という声をいただくのですが、普段アニメを見ないという方からも感想をいただくことが多くて。すごくいろいろな世代に刺さる素晴らしい作品なんだな、と改めて思いました。
──『王様ランキング』は、主人公・ボッジとともに村瀬さんが演じるカゲの成長も見どころの一つ。演じていてカゲの変化はどのように感じていますか?
カゲは、お母ちゃんと別れて、その後1人で生きていくなかでいろいろなことがあり、他人を信用できなくなっていました。でも、ボッジと出会い、徐々に信用できるようになっていくのです。
最初の頃は自分の気持ちを否定するところがあって、ボッジに対してちょっとデレッとなりそうな場面でも、少し壁を作り、「自分は強くて、怖いんだぞ」と見せることが多くあって。
たぶん、盗みをして生きていたときに、危ない目に遭うことも多々あったと思うんです。そういうときに自分を強く見せなきゃ、悪そうに見せなきゃと意識していたのかな、と。そういう意識は、ボッジとのやり取りのなかで、だんだん忘れていく感じを出すように演じていました。
そして、前作の最終話でカゲは、王になったボッジのもとを離れる決断をしました。「ボッジのために、自分はいないほうがいい」と、自分の思いを捨てても、ボッジのことを考えて旅立ちを決意したカゲは立派でしたよね。僕自身にも追いつけない成長ぶりで、すごいなと思っていました。
──今回、改めて演じることで感じたカゲの魅力は?
自分の信念を貫く強さを持っているところですね。前作の第2話で、ボッジに対して「お前の味方になりたいんだ」と言う場面があったのですが、「味方」という単語ってすごいな、と。友だちでもあり、理解者でもあり、でもすべてを肯定するわけではない存在というか。
どんなときもくじけずに、ボッジのためになることを全力で考えている、その強さはステキだなと思います。
──カゲを演じるうえで大事にしていることを教えてください。
カゲが動く目的はすべてボッジなので、「ボッジのために」「ボッジの味方である」ということさえ外さなければ、どんな表現をしても大丈夫だろうと思っています。
あとは、ボッジと対等であること。カゲは、(言葉が話せない)ボッジの思いを言語化する役割もあるので、“言ってあげている感”が出てしまいがちで。その塩梅は、自分でも意識して調整したり、音響監督にご指摘いただいたりして、気をつけています。
これは、アニメーションならではの難しさなんですよね。漫画など1枚絵のなかの文字で見ているとサラッと読めるのですが、声で聞こえると「すごく説明するな」という感じになってしまう。そこを「カゲが伝えたいから伝えている」という衝動のように見えるといいなと思っています。
日向未南はユニークさが魅力!「ボッジが日向ちゃんでよかった」
──ボッジを演じる日向未南さんの印象を聞かせてください。
日向ちゃんに最初に会ったのは、ボッジのスタジオオーディションのときでした。僕が何人かの方と掛け合いをする形式だったのですが、「この子、大丈夫かな!?」と思うぐらい、緊張されていたのを覚えています。
でも、オーディションが始まるとスイッチが入って、キャラクターを表現したい、という熱い思いが見えたのが印象的でした。
収録のたびに成長を感じましたし、ボッジの発する何気ないひと言も「こういう感じだな」と、説得力がすごくあって。ボッジが日向ちゃんでよかったと思います。
──今作で久しぶりに掛け合いをして、変化は感じましたか?
前作、23話をやってきたので、アフレコ前にいただく、声の入っていないアニメーションのVTRを見ると、僕のなかで「こういう感じかな」と頭の中で再生される声があるんです。
でも、現場に行って一緒にアフレコをしていると、そのイメージとは違うお芝居を持ってくることもあって。「そういう表現で来るか」という、ユニークさが面白いな、魅力的だなと感じました。
──日向さんは前作で「さまざまなことを村瀬さんから教えてもらった」と話していました。村瀬さんはどのように日向さんと向き合っていたのでしょうか?
模索しているようだったら、みんなで「こうじゃない?」と声をかけていました。でも、自分で気づくことも必要なので言い過ぎず。SOSを出してきたら、自分の持っているものを伝えるようにしていました。
実は、アフレコをしていたスタジオが、僕が初めて主演を務めたアニメのスタジオと一緒だったんです。『王様ランキング』は日向ちゃんにとって初主演の作品だったので、自分の初主演当時を思い出すこともあって。そのとき教えてもらったことを日向ちゃんに伝える、ということをしていました。
例えば、「セリフは、自分のものじゃない」ということとか。自分の役に責任を持ってセリフを発しなければいけないのですが、そのセリフは、ほかの人から刺激をもらったり、誰かに影響を与えたりして、物語を紡いでいくためのもの。
初主演当時、すごく尊敬する先輩からそう教えられたときに、ハッとしたことを思い出して。それを日向ちゃんにも伝えていたのですが、自分なりにその言葉を咀嚼していて、今作のアフレコでは何も言うことはなかったですね。
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──今作で注目してほしいポイントを聞かせてください。
「このとき、実はこんなことが起きていました」というエピソードが描かれます。前作では見られなかったキャラクターたちのステキな表情がたくさん見られるので、楽しんでいただけるとうれしいです。
声優を目指したきっかけは…お金が貯まったから!?
──ここからは、村瀬さんの声優としてのお話をうかがいます。まずは、声優を目指したきっかけを聞かせてください。
大学の一回生のときにアルバイトで意外とお金を貯めることができて。これだけ貯められたのに、何もしないのはもったいないな、と思っていたんです。
そこで、就活が始まる前に何か習い事をやってみようかな、と。もともと舞台などを見るのが好きだったので、表現を学ぶのもいいなと思い、声優の養成所に通い始めました。
そうしたら、お芝居することの楽しさに気づかされて、「ちゃんとこの職業を目指したいな」と思ったのがきっかけです。正直、そのときまでは声優になる道は考えていませんでした。
──それで、役者ではなく声優を選んだ理由は?
よく周りの人に「声が変わってるね」「いい声だね」と言われていたので、やるなら自分の長所を生かせるものがいいなと思っていました。
それに…舞台などでお芝居をする場合、全身で表現するじゃないですか。僕、運動がからきしダメなので、「舞台とか、できないんじゃない!?」と思ったという理由もあります(笑)。
──声優のどんなところに魅力を感じていますか?
作品をつくる場合で言うと、絵を描く人、劇伴(音楽)をつくる人、自分たちの声、監督たちのアイデア、みんながそれぞれのフィールドで力を発揮して、一つの面白いものをつくる“フュージョン感”が魅力だと思います。
声優の仕事だけで言うと…例えば、カゲという役に関する解釈は人それぞれあって。僕は直感タイプなので、「だみ声っぽいな」とイメージして今の声をつくっているのですが、もし他の方が演じていたら全然違う声になっていたかもしれません。
そうやって「どう表現しようかな」と考えること、個人の考えを持ち寄って作品がつくり上げられていくところが面白いなと思いますね。
──仕事をするうえでのポリシーはありますか?
どんな役でも平等であることです。『王様ランキング』は、一個人としての村瀬歩がすごく好きな作品で、ファンなのですが、お芝居をするときに贔屓をすることはありません。
主人公でも、カゲのような役でも、1話だけしか出てこない役でも、自分にできる準備をきちんとしてアフレコに臨んでいます。
──どういう準備をしていますか?
原作がある作品なら、原作をチェックします。あとは仮説演繹(えんえき)的思考といって、一つのセリフに対して、「なぜこのセリフになったんだろう」と仮説を立てて考えていく方法が好きなのですが、そうやって台本をしっかり読み解く時間も取ります。
いただいた役に対しては、誠実にいたいですよね。原作者の先生はもちろん、アニメーションのスタッフも、監督やプロデューサーも、みんなが生みの親なので、自分のエゴでキャラクターを決めちゃいけないな、と思いながら役を演じています。
──村瀬さんは、男女問わずさまざまな役を演じていますが、これから挑戦したい役柄などはありますか?
『王様ランキング』のカゲも含めて、ここ数年で「これ面白そう」「こういう役をやりたい」と思っていた作品にご縁をいただいていて。
カゲは一頭身というか、普通の“人”ではないキャラクターで、「どう表現しよう」と一筋縄ではいかないけど、自分の力の見せどころだなと思いながら挑んでいました。
そうやって、いろいろと挑戦させていただいているので、パッと新しく「こんな役をやりたい」ということが思い浮かばなくて(笑)。逆に「こんな役をやらせたい!」という役があったら、お声がけいただけると喜びます!
【コラム:最近、気になる“声優さん”】
一緒にお酒を飲んだり、仲良くさせてもらっている黒田崇矢さんです。
もともと俳優としてドラマや映画、舞台などにも出演されていて、そこから声優になられた方だからだと思うのですが、声の芝居にすごく立体感があるんですよね。“そこにその人がいる”という。
そして、声のよさだけじゃなくて、芝居に関する考え方もすごく面白いので、話をしていてまったく飽きないんです。
声の畑は違いますが、すごく憧れの人ですね。
撮影:河井彩美
スタイリスト:ヨシダミホ
ヘアメイク:谷口あゆみ
<アニメ『王様ランキング 勇気の宝箱』概要>
■イントロダクション
耳が聞こえず、話すことができない非力な王子・ボッジと、その親友・カゲの冒険を描いた テレビアニメ『王様ランキング』。
本作『王様ランキング 勇気の宝箱』では、ボッジやカゲ、彼らの周りに集いし仲間たちの、知られざる“勇気の物語”が描かれる。
■作品紹介
放送:フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて毎週木曜24時55分~放送中
※放送日時は予告なく変更になる場合があります
配信:Prime Videoにて見放題独占配信、毎話フジテレビ放送開始1時間後より配信予定。他各配信サイトにて配信予定。
原作:十日草輔 『王様ランキング』(ビームコミックス/KADOKAWA 刊)
スタッフ
監督:八田洋介
シリーズ構成:岸本卓
キャラクターデザイン・総作画監督:野崎あつこ
サブキャラクターデザイン・総作画監督:村田理
チーフ演出:渕上真
美術監督:金子雄司
美術設定:藤井一志
色彩設計:橋本賢
撮影監督:上田程之
編集:廣瀬清志
音楽:MAYUKO
音響監督:えびなやすのり
音響効果:緒方康恭
アニメーションプロデューサー:岡田麻衣子
アニメーション制作:WIT STUDIO
キャスト
ボッジ:日向未南
カゲ:村瀬歩
ダイダ:梶裕貴
ヒリング:佐藤利奈
ドーマス:江口拓也
ベビン:上田燿司
アピス:安元洋貴
ドルーシ:田所陽向
ホクロ:山下大輝
デスハー:下山吉光
デスパー:櫻井孝宏
オウケン:遊佐浩二
ミランジョ:坂本真綾
公式HP:https://osama-ranking-treasurechest.com/
公式Twitter:@osama_ranking
©十日草輔・KADOKAWA 刊/アニメ「王様ランキング 勇気の宝箱」製作委員会
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