ファッション企業のアダストリアが展開する着圧下着ブランド「HAKUTORIKO」のヒット商品“バストも姿勢も欲張り補正” メイクトリコブラの誕生ストーリー

2021年３月、“履くとトリコになる”というコンセプトから誕生した女性の美ケアを提案するブランド「HAKUTORIKO(ハクトリコ）」。

ハクトリコが展開する商品の中でも発売以来累計約２万枚を販売するヒット商品の「メイクトリコブラ」の開発ストーリーをご紹介します。

ヒットのカギとなったのは、「アクティブな女性」へ焦点を当てた商品開発でした。

ファッション企業がファッションの視点で提案する「女性の美と健康」に着目した「メイクトリコブラ」の商品企画についてHAKUTORIKOディレクターの石川からお伝えします。

※渋谷MODIのポップアップストア（出店期間は終了しております）

HAKUTORIKO （ハクトリコ）は、2021年の3月末に女性の美と健康をファッション企業の視点で提案するインナーのブランドとしてデビューしました。

実はデビュー当時は「Sable madle(サブレーマドレ)」というブランド名で、「HAKUTORIKO」はサブレーマドレの中の一つのシリーズという位置づけでした。

着圧シリーズとしてレギンスやガードルを展開していた「HAKUTORIKOシリーズ」がヒットしてブランドを象徴するアイテムとなり、ブランド名もHAKUTORIKOに変えたという経緯があります。

ブランドデビュー当初は国内着圧工場と取り組んで、ファッション企業ならではのカラーバリエーションやブランディングなど、こだわりを詰め込んだ商品を展開してました。

デビューからしばらくの間は、国産・高品質・高機能が商品開発の主軸となっていました。しかし、どうしてもコストが抑えられず、評判はいいけど実売には繋がらない……。

「どうすればお客さまに選ばれる商品」「価値を感じてもらえるブランド」になれるのか。というのが開発チームメンバー全員の悩みでした。

そんな中でも、HAKUTORIKOと言ったら「これ」と言われるようなブランドの看板商品を作りたいという開発メンバーの気持ちは一致していました。そこで、改めて「価格」「商品構成」「販売先」の見直しをはじめたのです。

開発にあたり手探りで新商品開発へのヒントを集める日々が始まりました。

※こちらの写真は当時のサンプル写真です

アダストリアは、洋服に限らず、食やインテリア、スポーツなど様々な趣味を持ち、人生を楽しんでいる女性が多く在籍する会社です。ですので、開発のヒントは女性社員から得ようと相談やアンケートを行っていました。

ある時、女性社員数十人を対象にとったアンケートの中に気になる声を見つけました。

「今欲しいものは何か、日常のちょっとした悩み事はないか」という質問に対する、

「朝出社前にジムに行くと下着の替えを持って行かなきゃいけないのが面倒」という回答でした。

この声を深掘って、改めて”アクティブな女性”の目線でブラジャーについて考えると次のような女性の日常のシーンに気が付きました。

就寝時につけるナイトブラ
軽い運動時にはスポーツブラ
日中にはワイヤー入りブラ

アクティブな女性はそれぞれのシーンに合わせて何度もブラを付け替えていたのです。

「そんな女性の手間を１枚で解決できる下着が作れないか」これが、メイクトリコブラの開発のきっかけとなりました。

HAKUTORIKOのブランドテーマである「女性の美と健康」を叶える今までにない、新しいインナーとは何かを突き詰めるために、社内では新商品開発会議を重ねていました。

ちょうど同時期、取引きがあった日本の着圧工場の担当者へ相談をしたところ、ある京都の下着メーカーを紹介していただきました。自社でも積極的に商品開発をされている企画力の高い工場でした。

「ここなら私たちのこだわりを形にしてくれる」そう思えたことがきっかけで、その出会いから1か月後、メイクトリコブラの開発を依頼することになりました。

開発会議を重ねる中で、開発目標を次のように定めました。

肌触りの良いナイトブラをベースにし着心地を重視
ジムなど軽い運動時にも使用できるシーンレスで使いやすさを追求
さらに姿勢補正サポート機能を充実した欲張りなアイテム
”１度着けたらトリコになってしまうような”ブラ

この開発目標が決まったときに商品のキャッチフレーズ「バストも姿勢も欲張り補正」が誕生しました。

実際に開発を進める上で、チームメンバー以外の女性社員にも着用モニターを募ることがあるのですが、これまで開発してきた着圧商品の時と比べて、補正サポートブラの人気が圧倒的だったことに驚きました。「これはヒットするかもしれない」と手ごたえを感じられましたね。

また、モニターからの「着圧商品は１〜２枚持っていれば十分だけど、ブラなどのアンダーウェアは何枚持っていてもいい」という声も、ヒットへの期待を後押ししました。

外販やポップアップストアの展開を広げていく中で、「ナイトブラというものがずっと気になっていたけれど、なかなか手を出せなかった」という方や「姿勢の悪さが気になるけど補正下着は苦しそうで…」といった方が、はじめての姿勢補正サポートブラとして手に取ってくださる機会がだんだんと増えていきました。

※社内展示会の様子

 商品自体が好調でしたが、ヒットしたもう一つのきっかけとして、パッケージや販促物のデザインを変えたことも大きかったです。 

最初はファッション企業らしい、華やかでアパレルショップに置かれても映えるようなパッケージや販促物をイメージしてデザインしていました。

ところが、ポップアップストアの出店や展示会を繰り返すうちに、このブランドのボリュームゾーンは「わかりにくいけどなんかおしゃれ」なものより「わかりやすく効果を期待できそう」なものを求めていることがわかってきました。

また、接客が大きな購入きっかけとなりうるアパレルショップとは違い、ドラッグストアやWEB通販サイトでは無人販売となるので、より目を引くパッケージと販促物である必要性を感じたのも商品の見せ方を変える大きな要因となりました。

そこで、2022年秋冬商品の展示会のタイミングで「等身大パネル」を作成しました。

大きさが「等身大」なのはもちろん、掲載している内容も「等身大」である、かなりインパクトのある販促物です。

親近感を感じられるようなリアルな体系モデルを起用し、実際に商品を着用した際のビフォーアフターが一目でわかるデザインにしました。

試験的にポップアップストアで先行販売していましたが、これまでのパッケージに比べ、販売員が説明するよりも早く、具体的に商品の効果を訴求できたと実感しています。

これにより、ポップアップストアで実際に商品を手に取って購入を決めるまでのスピードが格段に上がりました。

本部で商品企画をしていると売上は数字で追うことができても、こういったお客さま一人ひとりの購入きっかけを目の前で見る機会はなかなかありません。

ポップアップストアで実際にお客さまの反応が見られたのは、商品開発の先を見ることができたいい経験となりました。

HAKUTORIKOの販路は、アダストリアの公式WEBストア　.st（ドットエスティ）と、某大手バラエティショップやドラッグストア、大手WEB通販サイトなど です。

ブランド認知を広めるため、商業施設さまよりお声がけをいただき定期的にポップアップストアも展開しています。

ポップアップストアでは実際に開発メンバーも販売員として店頭で接客させていただきました。

直にお客さまと接する機会が増えていく中、「前回〇〇でも出店していたわよね？あの時迷っていたのだけれどまだあの商品残ってる？」というお客さまや、「初日に購入したんだけどすごく良くて！追加で他の色も買いに来たの！」と言ってくださるリピーターのお客さまに実際にお会い出来たことがとても嬉しく誇らしかったです。

今回お伝えしたメイクトリコブラ以外にも、ファッション企業としての目線や経験を活かして、ウエスト周りやレッグ関係の商品開発を続けていきたいと考えています。

ファッション企業から誕生した はじめての美ケアシリーズとして多くの方に認知してもらえるような、ナショナルブランドに育てていくのが目標です。

アダストリアは、基本的に自社生産商品を自社が展開する直営店舗で販売しているため、HAKUTORIKOに携わるまでは、企画した商品が自社のブランドの店舗に並ぶことが当たり前だと思っていました。

HAKUTORIKOで他社の販売チャネル展開を広げ、有名バラエティショップや他社のアパレルブランド店舗、ついにはドラッグストアにまで自分たちの商品が並んでいるのを見たときは「垣根を超えたな」というなんとも言えない喜びがありました。

また、BtoBでのお取引先さまからのアドバイスや、BtoCでのWEBの口コミやポップアップストアにご来店くださったお客さまの声など、自分たち開発チームだけでは気づけなかった、知り得なかったことを今までたくさん学ばせていただいています。

商品開発から始まり、パッケージ作成、販売方法に至るまで、都度お客さまの声をもとに、何度も繰り返しブラッシュアップをしてきました。

それが結果として目に見えていくにつれて、ブランドも商品もそしてスタッフも成長していく、それがHAKUTORIKOというブランドの在り方であり、強みです。