3月6日(土)21時より、フジテレビでは、スペシャルドラマ 土曜プレミアム『死との約束』が放送される。
『オリエント急行殺人事件』(2015年)、『黒井戸殺し』(2018年)に続く、「野村萬斎主演×原作・アガサ・クリスティ×脚本・三谷幸喜」の夢のコラボレーション、待望のシリーズ第3弾。
このたび、事件の根幹に関わる本堂家の三人を演じる、山本耕史、シルビア・グラブ、市原隼人に作品への思いを聞いた。
三谷作品の常連である山本が演じるのは、本堂家の長男・本堂礼一郎(ほんどう・れいいちろう)。山本が演じる礼一郎は、世間に対してどこか冷めていて、後ろ向き。長男でありながら、家族の問題からも距離を取り、夫人(松坂慶子)には一切、口答えをしない。
同じく、三谷作品にはおなじみのシルビアが演じるのは、礼一郎の妻・本堂凪子(ほんどう・なぎこ)。凪子はそんな夫の態度を好ましく思わず、本堂家に対しての距離の取り方も、気をつかいながら微妙なバランスを保っている。
市原が演じるのは、次男・本堂主水(ほんどう・もんど)。主水は、幼いころから夫人に支配され、外の世界をまったく知らずに育ってきた。そんな自分の葛藤を、旅先で声をかけられた沙羅(比嘉愛未)に見透かされ、心を開き始める。市原は、今作が三谷作品初出演となる。
<山本耕史 コメント>
――今回の出演の話が来たときの気持ちは?
『オリエント急行殺人事件』を見た時に、三谷さんらしいし、萬斎さんが特殊な世界観を醸し出しているなと、とても印象に残っていました。今回のお話をいただいた時は、ちょうどPARCO劇場で「大地」という三谷さんの舞台をやっている最中だったと思います。
「ああ、あのシリーズの世界観に入れるんだ」と率直にうれしかったのと、続けてまた三谷さんの作品に出演できるという安心感もありました。
――台本を読んだ印象は?
このドラマは、面白いボタンの掛け違いがあって、三谷さんがすごく得意とする分野の脚本。結構入り組んだ難しいミステリーを三谷さんがうまく書いている本だと思いました。
謎解きのシーンは、三谷さんらしい密室劇というか。ゆるやかなところから追い込んでいって、トンネルを抜けて、抜けて、こう出る、みたいな。長尺のワンシチュエーションのシーンは、撮影は大変ですけれど、昔は結構こういう感じの緊張感あったなあと。
最近はいろいろな場面で、いろいろなことが起きて、というテンポの速い作品がわりと多いと思うんですけれど、今回のように同じセットでじっくり話が展開していくという脚本は、僕は演じていてとても楽しかったです。
――今回の役を演じるにあたって気をつけたことはありますか?
実をいうと、今回のドラマで着ている衣装は「大地」の時に使っていた舞台衣装なんです。三谷さんに「あの役のイメージで」と最初に言われて、「あ、そのままでいいんだ」というところもあったので。
もちろん全然違う役ではあるんですけれど、出で立ちや、醸し出すうさんくささは、ゼロからよりは、役に入りこみやすかったです。
――実際に演じてみていかがでしたか?
自分にも他人にも諦めていて、後ろ向きで、世間に背を向けたような影のある役なので、逆に楽しみながら演じました。「この人だったらどんな行動をするだろうか」とか、ちょっと普通でない、社会に適応していないところをさまざまな場面でどうやって表現しようかなと、アイディアも出しながら演じました。
――共演者のみなさんの印象は?
萬斎さんとは初めてご一緒したのですが、やっぱりこの役は萬斎さんにしかできないなと改めて感じましたし、その空気感を間近で浴びている感じでした。
松坂さんは、昔からドラマでお世話になっていて、息子役も今回が二度目なんです。前回も僕が母に支配されている役だったので、松坂さんに「こういう役多いんですか?」と聞いたら、「全然ない」とおっしゃって。そんな貴重なあまりない役を二回もご一緒させていただいて光栄でした。
現場では、にこやかで、ふわーっとなごませてくださる雰囲気の方なので、(大先輩ですけれど)現場に安心感を与えてくださっていました。
――視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
ちょっとしたことでみんなの思惑が偶然重なってしまって、そしてお互いがお互いをかばったり、怪しんだり。その一人ひとりのボタンの掛け違いでこういうストーリーが生まれて。
「この人が犯人だ」と最初に見せてから解いていくパターンではなくて、一緒に見ながら、考えながら、最後まで楽しめるドラマだと思います。僕たちも撮影しながら、時々「ん?」と考えながら演じたくらいです。
視聴者の方には、その空気感や緊張感を楽しんでいただきたいですし、ずっと見入ってしまうような作品に仕上がっていると思います。
<シルビア・グラブ コメント>
――今回の出演の話が来たときの気持ちは?
びっくりしました。三谷さんからまず連絡がきて、「来月何やってる?」って(笑)。まさか、呼んでいただけるとは思っていなかったのですが、スケジュールの調整もついて出演できてよかったです。
――台本を読んだ印象は?
三谷さんは、コメディ色が強いものをよく書かれているのですが、はじめに台本を読んだ時は、実はコメディ色はあまり感じられなかったんです。
ちょっと珍しいなと思ったんですけれど、演じてみるとやっぱり面白い。個々のキャラクターもきちんと立っていて、すべてわかった上で書かれている台本だと思いました。
――今回の役を演じるにあたって気をつけたことはありますか?
今回のキャラクターがわりとおさえめな印象なので、舞台でのお芝居のような大きい表情や動きをしないように、かなり努力しました(笑)。
普段の動きの大きい明るいシルビアでやってはダメなんだろうなと思って。たぶん、今まであまり見たことのないキャラクターにしたいんだろうなということをメッセージとして受け取りました。
――実際に演じてみていかがでしたか?
すごく楽しんで演じさせていただきましたが、どう映っているのか?放送がすごく楽しみです。ドラマはシーンの順番に撮らないこともあるので、特に“凪子”というキャラクターについてはどう仕上がっているのだろうか、まったく想像がつかないです。
萬斎さんとははじめての共演でしたが、お声に特徴があるので、その声の響きを間近で聞けたことはすごく勉強になりました。そしてあのすごいセリフ量のシーンに、その場にいられることもすごく幸せでした。
本堂家は、山本さんがムードメーカーになっていたので、和気あいあいと現場の空気が明るくなっていました。松坂さんもおだやかで。
あまり映像の現場を経験していないので、はじめは少し不安を感じましたが、最初からみなさんが話しかけてくださったので、ちょっとホッとしました。舞台の稽古くらい濃厚な時間を過ごすことができました。
――視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
脚本も素晴らしいし、演者も素晴らしいし、監督の演出も素晴らしいので、演じていてすごく楽しかったですし、それは絶対伝わると思います。
また、ロケ場所の美しさやセットの世界観もいざなってくれたので演じる側としてはすごく助かりました。
サスペンスの中にもコメディの要素があって、それをわかっているスタッフ・キャストのみなさんが作り上げている作品、絶対に面白いと思います。ぜひ御覧くださいね!
<市原隼人 コメント>
――今回の出演の話が来たときの気持ちは?
三谷さんの作品に出演させていただくのは初めてだったので、率直にうれしかったです。直接お会いしたことはなかったのですが、舞台や映画やドラマで演じる上で、いつも(存在を)感じている方だったので、わくわくしました。
イギリスのミステリーの女王と言われるアガサ・クリスティの作品の世界観に入れるということもうれしかったです。
――台本を読んだ印象は?
今回の三谷さんの脚本は、普段、人に見られたくない感情や繊細な影の部分を書かれているのですが、セリフが自然と体になじみ、気がつくと作品全体のテンポに乗せられ、読んでいくうちにどんどんスピードが上がっていく脚本から、すぐにその世界観に入り込むことができ感激しております。
――今回の役を演じるにあたって気をつけたことはありますか?
そもそも「日本人がアガサ・クリスティの作品をやるというのはどうなのかな?」と初めは思ったんですけれども、日本に武士がいたように、イギリスにも騎士がいて。おのずと主君に仕える精神、家族に対する思いは似ているところがあると思うんです。
そう置き換え、その主君が母親であり、血のつながりを大切にしながらも“母親に見せていかなくてはいけない姿”というものを自分の中で使い分けることに注意しました。
また、主水は母親の支配下にいる、外の世界を知らない人間で、どこかぎこちない部分があると思いますので、常に自然体ではない影のある男という人格を魅せたいと思いました。母親が囲む陣地の中から出るべきか…己との葛藤やさまざまな環境での心の逡巡(しゅんじゅん)、繊細な感情からくる動きも意識しました。
――実際に演じてみていかがでしたか?
主水は、本当は殻を破って新たな自分の人生を切り開きたいけれども、その勇気が持てない。今、なかなか自分を出しきれない現代の人とも似ている気がしましたし、自分の心も投影しながら演じました。
――撮影現場の雰囲気は?
僕はもう夢の中にいるみたいに楽しくて(笑)。萬斎さんとは「陰陽師Ⅱ」(2003年)で、鈴木京香さんとはデビューして間もない頃にご一緒させていただき。
また、改めてこうして時を経てご一緒させていただくと、照れくさいような、はがゆいような…実際、すごくうれしかったです。「役者の醍醐味とは、また違う役でこうしてお会いすることなんだな」と感じさせていただきました。
そして「蒲田行進曲」(1982年)は、僕が一番好きな映画といっても過言ではない映画なので、その松坂さんの息子役を演じることができたことも、すごくうれしく舞いあがる思いでした。
萬斎さんが創りあげる勝呂は、これはもう萬斎さんにしかできない、唯一無二の、お芝居というか“表現”で、同じ時間を過ごさせていただき、とても勉強になりました。
実際の撮影は、緊張感のあるシーンが続いたのですが、その半面、カットがかかるとみんなで「こう演出しようか?」とか「こういう人間性や関係性にしていこうか?」など、包み隠さず、壁を作らずに一緒に制作していける現場で、すごく居心地がよかったです。
熊野古道でのロケもとても気持ちがよくて。我々が住む日本にまだこんなに素晴らしい所が残っているんだなと。ご覧いただく視聴者のみなさまにもいろいろな日本のわびさび、古い伝統を残していく場所があるということを感じていただきたいです。
――視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
年齢や性別を選ばず、純粋に楽しめるエンターテインメントです。ぜひ、みなさまにもいろいろ推理や意見を交わしながら見ていただくことで、人と人との絆が、また深まることを願っております。
<あらすじ>
休暇で和歌山の熊野古道を訪れた勝呂武尊(野村萬斎)は、ホテルのラウンジで医学書を読んでいた医師の沙羅絹子(比嘉愛未)に声をかける。沙羅は勝呂のことを新聞で見て知っていたため、二人はすぐに打ち解ける。
そこに、本堂家の夫人(松坂慶子)、次男の主水(市原隼人)、長女の鏡子(堀田真由)、次女の絢奈(原菜乃華)がやってくる。どこか異様な雰囲気をかもしだす夫人は、やってくるなりホテルのスタッフをどなりつけ、子どもたちにはあれこれと命令し始める。さらに遅れて、長男の礼一郎(山本耕史)と妻の凪子(シルビア・グラブ)もやってくる。
夫人の言動は、まるで一家の独裁者のようで、子どもたちはみな完全に彼女の支配下に置かれていた。その風変りな家族の様子に、勝呂はあっけにとられてしまう。一家と古くからのつきあいがあるという男・十文字幸太(坪倉由幸)によると、主である本堂氏が、家族が一生遊んで暮らしていけるほどの十分なお金を残して死んだため、本堂家は家族全員で日本中を旅しているのだという。
沙羅から誘われて本宮大社を訪れ、散策をしていた勝呂は背後から声をかけられる。振り返ると、婦人代議士・上杉穂波(鈴木京香)と編集者の飛鳥ハナ(長野里美)だった。穂波は、自分を見つめ直すために熊野を訪れたというが、どうやら勝呂とは古くからつきあいがあるようだ。
二日後、貸し切りバスで古道散策ツアーに向かった本堂一家と勝呂、沙羅、穂波、飛鳥。霊峰と言われる熊野には神秘的な山道が多く、昔から天狗(てんぐ)の目撃談も後を絶たない。そんな中、参道沿いのベンチで休んでいたはずの本堂夫人が、遺体となって発見される。
地元の警察署長・川張大作(阿南健治)に事件解決を要請された勝呂は、早速捜査をはじめる。夫人は普段から心臓が弱かったというのだが、勝呂は、その右腕に注射針の後を発見する。
勝呂は、ホテルに到着した晩に、偶然耳にした言葉をふと思い出す。「分からないのか、こうなったらもう殺すしかないんだっ」。ぎくしゃくしていた家族の誰にも動機があり、全員に殺害するチャンスがあった。