3月26日(金)21時より、フジテレビでは、十三代目市川團十郎白猿襲名記念ドラマ特別企画『桶狭間〜織田信長 覇王の誕生〜』が放送される。
今川義元の大軍を数的に遥かに劣る織田軍が打ち破り、日本史上最大の逆転劇と謳(うた)われ、織田信長を一躍戦国時代の主役に押し上げた伝説の一戦、“桶狭間の戦い”を題材とした本格歴史エンターテインメントだ。
そんな『桶狭間〜織田信長 覇王の誕生〜』より、信長と斎藤道三の間を取り持つ、今作品のキーパーソンの一人、堀田道空役を演じる竹中直人、信長の家臣で、信長の懐に入り込もうと策略を練る木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)役を演じる中尾明慶、同じく信長の家臣で、その戦法やある種の非情さを間近で見ることになる服部小平太役を演じる味方良介に今作品への思いを聞いた。味方は、今作で自身初めてとなるナレーションも務めている。
<竹中直人 コメント>
――今回、出演の話が来たときは、どんな気持ちでしたか?
僕は、撮影現場は音楽でいう“セッション”のようなものだと思っています。台本はある意味、譜面。声をかけていただいて、現場に行くとそこに共演の方やスタッフがいる。その空気を感じながら、自分がどの音でゆくのか…。いつもそんな感じなので、役のことを考えて行くことがないのです。今回も現場を自分がどう感じられるのか、それだけでした。
――海老蔵さんが演じる信長についての印象は?
海老蔵さんとは、一度、映画「一命」(2011年)でご一緒させていただいています。今回は、もうそのまま“信長”でしたね。海老蔵さんならではの信長になっている…と感じました。
――歴史上の人物を演じることについてはいかがですか?
現代人であろうが、歴史上の人物であろうが、そこで生きている人間ということですから、特に意識はしていません。撮影のその瞬間、瞬間をとらえるのが監督の仕事だと思うし、その監督を感じて演じるのが役者の仕事だと思っています。
戦国時代の人だからとか、考えたことはないですね。大河ドラマで1996年にはじめて「秀吉」を演じた時も、「とにかく、でたらめにしましょう」っていうことがプロデューサーとの約束だったんです。所作とかそんなものはすべてとっぱらってって。
――そのインパクトが強くて、のちに何度か“秀吉”のオファーが…。
ふと考えると三池監督の映画「熊本物語」(2002年)や大河ドラマ『軍師官兵衛』(2014年/NHK)、昨年はゲームソフトでも秀吉のキャラクターになって。ずいぶん秀吉役はやっていますね。
でも戦国の武将はほかにも何人かやっているんですよ。信長も実は2回やっていますからね。加藤清正や石田三成もやりました。でも(歴史上の人物だからといって)特に意識はしていないですね。いつも、現場の雰囲気や空気を感じるだけです。
――中尾さんが演じる木下藤吉郎(秀吉)の印象は?
中尾君とは『軍師官兵衛』の時も一緒でしたし、昔からよく知っていて。今回久しぶりに会うので、とても楽しみにしていました。「久しぶり。秀吉なんだ!」ってね(笑)。共演のシーン、とてもうれしかったです。
――視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
なんといっても、“海老蔵さんの信長”だと思います。海老蔵さんの信長、僕自身も楽しみです。広瀬さんとは2019年に、野田秀樹さんの舞台「Q:A Night At The Kabuki」で一緒でしたが、とてもパワーのある女優さんだなと思いました。今回は共演シーンがなくて残念です。初時代劇だとは知らなかったので、広瀬さんの“濃姫”も楽しみですね。
<中尾明慶 コメント>
――今回、出演の話が来たときは、どんな気持ちでしたか?
とにかくやらせてください、その思いだけでした。豊臣秀吉となると…もしかしたら僕ではなかったかもしれませんが、あくまで木下藤吉郎ですからね。たくさんの想像を膨らませて、のちの秀吉という期待感も持ちながら、全力で演じたいと思いました。
竹中さんは『軍師官兵衛』でもご一緒させていただきましたが、今回久しぶりに会うことをとても楽しみにしてくださっていたと聞いて、とてもうれしかったです。
――実際に演じてみて、いかがでしたか?
今回、藤吉郎を演じることができたということがすごくうれしいですし、そこに声をかけていただけたということは、僕の“人の懐に入るずるさ”がちょっとばれてしまったかなって(笑)。とにかく偉大な人物ですからうれしかったです。
演じてみて、改めてここから天下をとるまでのぼり詰めたこの男はやっぱりすごいなあ、と感じました。本当に身分の低いところから始まって、僕だったら間違いなくその時点であきらめていると思います。
セリフにも「商人で終わるつもりはない」とあるんですけれど、そこから何とかしてのぼりつめていく姿というのは格好いいなあと思います。そして信長の懐にも何とか入っていこうとするのですが、そこも基本的にはきっとすべて計算で、まずはこの殿の中で自分が上にいくことを考えて…そういう覚悟を決められるというのもすごいと思いますね。
――海老蔵さんとの初共演はいかがでしたか?
海老蔵さんは本当に“殿”って感じです(笑)。まさに信長を見ているようでした。一緒にお芝居をさせていただいて、僕が演じやすいようにというか、僕の演じたいことをわかってくださって、それを引き出してくださる…すごく相手のことを考えてくれているなって感じました。二人だけのシーンでも、そういう時にきちんと相手の引き出しを引っ張り出してくれて、すごく尊敬しています。
海老蔵さんには、お食事にも誘っていただいて、すごく美味しいものをたくさん、ごちそうになりました(笑)。僕のクランクアップの日も朝電話がきて、「今日オールアップだけどすぐに帰るの?」って。「帰りますよ!」って言ったら、「え?帰っちゃうの?」って。そんなやりとりでした。
僕の役が藤吉郎だし、そうやって二人の時間を作ってくださって、より演じやすいように考えてくださったのではないでしょうか。
――竹中さんとは久しぶりの共演でしたが…。
竹中さんとは、今までに何度かご一緒させていただいて。再会がうれしかったし、「頑張ってね~秀吉だね~」っていう声もかけていただいて。大先輩ですから、そこはもうとにかく一生懸命やろうと、より一層思いました。
――二度目の共演となる三上博史さんの印象は?
三上さんとは、前に一度NHKのドラマでご一緒させていただいたことがありますが、あこがれの先輩で。その時、いつかまたご一緒して勉強したいなと思っていたので、うれしかったです。三上さんにしかできないだろうなというくらい、三上さんならではの今川義元がそこにいて、義元がすごく輝いていました。
ほかにも、僕は今回共演シーンはなかったですが、佐藤浩市さんをはじめとして豪華なキャストの方ばかりで。本当にすごいドラマに自分が出させていただいて、そんなところで俺、藤吉郎なんて…というプレッシャーはありましたけれど、ニコニコして切り抜けようって思っていましたね(笑)。
――桶狭間の戦いのシーンはいかがでしたか?
京都の殺陣のチームのみなさんは、素晴らしい方々がそろっているので、絶対にいいシーンが撮れると(リハーサルの時から)思っていましたし、実際にすごく迫力のあるシーンが撮れたと思っています。
――視聴者のみなさんへメッセージをお願いします。
最近なかなか時代劇を見る機会も少なくなってしまってきていますし、この戦国時代では合戦がどうしてもフィーチャーされると思うんですけれど、そこにはやはり命をかけて戦ってきた人たちのいろんな葛藤があって。たくさんの人間ドラマがある中で、一人ひとりがそれぞれの思いを背負って戦う姿は、ぜひ見てほしいなと思います。
そんな中で、僕がどんな藤吉郎を演じているかも見てほしいなと思うし(笑)、本当に多くの人に見てほしいです。僕が出させていただいて、こんなこと自分でいうのも何ですけれど、本当にすてきなドラマができたな、と思っています。
<味方良介 コメント>
――今回、出演の話が来たときは、どんな気持ちでしたか?
舞台の稽古中にこのお話をいただいたのですが、「僕ですか?」というのが正直な気持ちでした。テレビドラマの撮影は『教場』に続いて2本目でしたし、本格的な時代劇もあまり経験がなく、まずは、本当に驚きの気持ちが強かったです。
――台本を読んでの印象は?
僕自身、あまり時代劇を見る機会が少なかったので、「桶狭間の戦いをやるんだ」というワクワク感と高揚感を感じました。我々の中にも脈々と受け継がれている300年ほど前のこの時代は、こうだったんだなと。そして、これだけ丁寧に、純粋に、この時代の織田信長を描くということがすごく興味深かったですね。
僕の役(服部小平太)は、実は知らない人物でしたので、深掘りしていくうちに、こういう人がいたんだということを再認識しました。
――役を演じるにあたって準備したことはありますか?
京都の撮影現場ももちろんなのですが、はじめてのことばかりでしたので、これは中途半端に下準備をしてもしょうがないと思い、あえて「捨て身で行こう」と思いました。
もちろん、この時代の歴史の書物は読みましたし、台本もしっかり読み込んで、芯はぶれないように心がけていたので、これといってほかに特別な準備はしませんでした。この作品を通してこの時代を知っていく方が大切なのかなとも思って。現場で実際に“殿(信長)”を見て感じたことを大切にしようと思いました。
――実際に演じてみていかがでしたか?
僕は、津島衆と言われる織田信長に少年期から傾倒する家臣団の一人でしたが、信長様が入ってきた瞬間に、「織田信長だ!本物だ」とすぐにスイッチが入りました。海老蔵さんのたたずまいは、「きっと織田信長ってこうだったんだろうな」と思わせてくださるものがあり、「捨て身でこの人に仕えていこう」と、自然と立ち振る舞うことができました。
――海老蔵さんの印象は?
まねしようとしても一生できないし、吸収しようとしてもできない。それは殿だけが持っているもので、でもそれをそばで感じることが楽しかったです。
普段はフランクでやさしい方だし、気を遣ってくださったのですが、やはりどこかでずっと緊張感を持ち続けていました。
――ほかの共演者のみなさんの印象は?
信勝を演じる馬場徹さんとは、普段から仲良くさせていただいていたので、「この信勝を謀殺するシーンはどうなるんだろう?」という話をしていました。あの瞬間の小平太は、忠誠のかたまりで、味方良介個人としては、抜群に爽快感は感じました。殿、柴田勝家、信勝、毛利新介だけの空間で、独特の空気と緊張感があり、この作品を通して一番緊張感を感じたシーンです。
松田龍平さんは、普段は何を考えているのか、どういうふうに思っているのかわからないのですが、柴田勝家を通して対峙(たいじ)すると、とてつもない熱い魂のようなものを持っていて。小平太はずっと勝家のことを疑い続けますが、最後には、納得させられてしまうのは、松田さんの唯一無二の力があったからだと思いました。
津島衆のみなさんとは、はじめは探り合いの状態でした。「でも俺たち、同じ殿に仕えているから仲間だよね?」というように、すぐに一体感が生まれたように感じました。
――はじめての京都の撮影現場の感想は?
独特ですよね。「こんな世界があるんだ。なるほど!これが、今まで映画やテレビで見てきたものなんだ」というワクワク感。そこに踏み込んだ瞬間に背筋がピンとなるというか…スタッフさんもキャストのみなさんも、すごいなと思いました。
――桶狭間の戦いのシーンはいかがでしたか?
僕は殺陣はそこまで得意ではないのですが、河毛監督が「味方は(殺陣が)できる」と胸を張っておっしゃったので…できることになっていて(笑)。そんな状況で、殺陣のシーンが次々と行われていくのは怖かったです。
でも“今川(義元)を討つ”という使命感で、合戦という凝縮されたシーンではいい経験をさせていただきました。生き死にが目の前にあり、必死にくらいつきましたね。この時代は、周りがどんどん死んでいく中で命をかけて戦っているのですから、自分も命をかけて戦わないといけない…と思いました。
殺陣の出来栄えはどうだったかはわかりませんが、最後は「なんとか討ち取った」という実感はありました。
――ナレーション務めたことについては?
ナレーション自体が今回初めてで、とても緊張しました(笑)。(こういうコロナ禍の状況で)撮影から期間があいていたので、当時のことが薄れてはいたのですが、体にしっかり染みこんでいたので、少し間があき、逆によかったなと思いました。
記憶を探りながらではなく、自分の中で眠っているものを呼び起こしていく感覚でした。時代劇独特の言葉やイントネーションも事前に調べはしたのですが、自分のクセがでてしまう瞬間があって、自分に対していらだちを覚えました。
――視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
本当に、最初から最後までが見どころだと思います。“桶狭間の戦い”にフォーカスするのはすごくチャレンジな企画だと思いますが、その中で一人ひとりの人物や関係性がすごく凝縮されて描かれていて。日本人の熱くなれる魂、パッションみたいなものを感じられる作品だと思いますので、そこを感じながら、ぜひ見てほしいと思います。