“うちのパパはお笑い芸人”、で…、
“家族で漫才GP”…。
あー、はいはい、漫才に家族のドキュメンタリーを絡めたりした、笑いとハートウォーミングの融合、かつ、僕も超大好きで、今や伝説にもなっている(多分)、2009年放送『お笑い芸人どっきり王座決定戦スペシャル』の、“ナイツ解散ドッキリ(※)”に通じる、ああいうエモーショナル企画!つまり、泣くんだよね!!きっと泣く、泣くに違いない!!!って意気込んだ結果…。中盤、やっぱり、案の定、涙止まらなくなってる自分。この番組の餌食、…ですね!
※ナイツ土屋が相方の塙に「コンビ愛を確かめたい!」とコンビ解散を申し出、その反応をうかがうというドッキリ。中盤に起こるどんでん返しに衝撃を受け、笑いと涙の大フィナーレを迎える。
いや、そうはいっても、絶対に勘違いしてはいけないのが、この番組、決してエモくしようだなんて、これっぽっちも思ってないんです!僕が超大好きな“ナイツ解散ドッキリ”は、エモーショナルにしようとする演出もありつつの涙であり、あちらは仕掛け人から、見ている観客、司会者、審査員まで一人残らずの大号泣だったのに対し、こちらの番組は、ご家族は泣いていらっしゃる方もいたものの、MC、審査員は、泣いてない。
ウェットにすらなってない…。そう、僕が、勝手に、エモーショナルを感じとり、琴線へ引き寄せ、自ずから、一人で泣いてしまっているのです…。それはただ単に、僕が情緒不安定だからじゃん?…とも言えますが、いいや、きっと違う。おそらく誰でも、この番組は、少なからず、感情を揺さぶってくる…そんなバラエティです。そもそも、僕だって馬鹿じゃないんですから、はいはいエモい系ね!って、先入観のまま、再生ボタン押して、まんまと泣くような男じゃないですよ。高めのハードルを自らに課していたにも関わらず、中盤、わけもわからず泣くのですから、結構な確率でみなさんもエモーショナルになること間違いありません!
さて、この番組は、お笑い芸人とその家族が漫才を繰り広げる!…とそのネタの前に、ちょっとしたドキュメンタリー…というよりオモシロ密着映像を見せ、芸人家族へより親近感を持ったところで、それ込みでネタを楽しんでもらおうという企画。“うちのパパは”と銘打ってはいますが、今回は性別、未既婚関係なく様々なお笑い芸人が集まり、息子や娘たちはもちろん、お父さんやお母さん、妻にお姉ちゃんに孫と、他では絶対見ることのできない、家族との新感覚なネタを披露してくれます。
だけど、芸人の家族だからって、素人が、テレビ番組によって、無理やり、ネタをやらされてるんじゃ…という邪推…。するよね。だけど、その辺は、しっかりとした動機が語られるし、何よりみんな楽しそうだから好感が持てます。見ているこちら側の、テレビ的な思惑にひっかかる余地を与えず、ネタを純粋に楽しむことができるのです。中には“パパがテレビに出られるのであれば…”と協力する息子や、“反抗期ですれ違っていたあの頃を振り返り、思い出作りをしたい…”と自ら父を誘う芸人など、動機はさまざま。その背景をこちらが勝手に読み取ることで涙腺が緩んでくる…という、そんな構造になっています。うん、だけど、その辺は、まったく、泣かせようっていう演出意図はなく、こちら側の“勝手な読み取り”だからこその“泣き”であり、その辺関係なく、普通にバラエティを楽しみたい!笑いたい!!という視聴者も、最後の最後まで隙間なくVTRとネタが敷き詰められているので飽きることなく楽しめます。
で、僕が、ついつい、泣いてしまったというのが…。2丁拳銃の小堀家親子。
ご存じの方もいるかもですが、2丁拳銃の小堀さんは、一言で言って…、“最低”、なんです!(ひどい…けど、いやホントに)マジでひどい最低なパパ。
その最低具合は今回の密着VTRでも炸裂しているので、詳細はお楽しみに…なのですが、そんな最低なパパ…であるにも関わらず、父の笑いの才能に尊敬の念を抱き、自分もお笑い芸人を目指し、父が書かないからと言って自らネタを書く息子(ここからも滲み出てくる最低具合)…の、純粋すぎる眼差しに、僕は勝手に涙腺が緩まるのです…。で、その息子の書いたネタが良くできててさ…。最低なんだけど、切っても切れない親子の絆と、引き継がれているお笑いのDNA…それを確信する、父の最低っぷりを、笑いへと昇華させる、息子の見事なツッコミ…に…、涙腺崩壊!!してしまうです。
…とは言っても、画面の皆さんは全員大爆笑!僕だけ泣いている…という構図。バラエティにドラマをやたら感じすぎてしまう自分…に反省かもですが、それよりも、これだけのドラマ、感情の波を短時間のVTRに詰め込み、それを平然と笑えるバラエティの演出で仕上げるのだから、制作陣に拍手です。
もちろん、例に挙げた小堀親子だけでなく、芸達者すぎる“クセスゴ”でもお馴染みトータルテンボス大村親子(×息子)、ハートウォーミング全開のエハラ家(×3人娘)、リアルに“クセ”が止まらないプラス・マイナス岩橋夫妻(×妻)、親子三代の器用さを確信する3時のヒロイン福田親子(×母)、ネタ登場時からおもしろい納言幸親子(×父)、笑いへの厳しさを伝承するオール巨人一家(×孫二人)、微笑ましさとアバンギャルドの融合天竺鼠瀬下親子(×息子)、非凡な演技力を発揮する母タイムマシーン3号関親子(×母)、売れない演歌歌手のパパが暴走する鬼越トマホーク金ちゃん親子(×父)、リアルと虚構のはざまを行き来するしずる村上姉弟(×姉)と、2時間弱の時間に、これだけのネタとドラマとエモーショナルをぶち込んでくるのでどれも見逃せません。
そして片方は素人…とはいえ、ネタの完成度はどれも非常に高く、ともに舞台に立つ家族たちのお笑いDNAをやはり感じざるを得えません、またネタ前に繰り広げられるVTRとネタ、セットだからこそ楽しめる…という仕組みにも新感覚を覚えます。
僕は勝手に泣いてしまったけれど、あおりや扇情的な演出は一切ない、家族そろって笑って楽しめるバラエティに仕上がっております。必見!
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)