終始優しい笑顔でインタビューに応じたのが、フジテレビの西毅ディレクターだ。入社6年目の西ディレクターは、3月10日(水)深夜に放送の『令和にはありえない!?ニュースになったアゲ人生』で企画・演出デビューする。

一億円を拾った男性や、試合中かつらが取れたボクサーの話…「若い世代が楽しめるはず!」

この番組は、かつて大きなニュースになるほど有名だった人物の、その後の「アゲ」(いいこと)「ショゲ」(悪いこと)人生を楽しく学んでいくもの。かまいたち、あんり(ぼる塾)、渋谷凪咲(NMB48)をスタジオに迎え、当時のニュース映像はもちろん、取材を元に主人公たちの人生のアップダウンをひもとく番組だ。1980年にたまたま1億円を拾い時の人となった大貫久男さんや、2005年にボクシングの試合中にかつらが取れてしまい“かつらボクサー”としてワイドショーなどをにぎわせた小口雅之さんなどが登場する。

記念すべき初演出番組。そのこだわりは?西ディレクター本人に話を聞いた。

――なぜ今回の番組を企画したのですか?

入社して2年間人事部にいた私が、今所属している情報制作センターに異動になったのは4年前のことです。AD(アシスタントディレクター)を1年、そしてディレクターになって3年になります。『めざましテレビ』のニュース班に所属してるので、日々発生するニュースの現場に行って取材し、放送するという生活を送っています。

このご時世ということもあり、暗いニュースが多い中、若い世代にも楽しめる温かい気持ちになれるニュースバラエティ番組が作れないかな、とずっと考えていたんです。たまたま上司と雑談していたら「一億円を拾った大貫さんって知ってる?銀座に札束が落ちてたんだよ」という話を聞いて。そんな映画みたいなことあるかー!って思ったのですが、これは番組になるのでは!と。

人生っていいことばかりではないから面白い

――それで企画書を作ったということですか?

そうです!でもこの3年間で20本は企画書を出し続けていたので、通るのかどうか…正直不安でしたが、「今、君の企画書が議論のテーブルに乗っている」と上司から連絡を受けたときから嬉しかったですね。もちろん「通った」と聞いたときはもっと嬉しかったです。

――昔のニュースを振り返る番組は過去にもあったと思いますが、今回は何が違うのでしょうか?

確かに過去のニュースをこする番組は多いですが、これはその人物の「その後」そして「今」にも迫っています。有名になったことで経験した「アゲ」の部分と実は苦労もしていたという「ショゲ」の部分を、しっかりとした“取材”を通して「ひとりの人生」として描くことにこだわっています。人生っていいことばかりではありませんから。

――人の人生に興味が?

実は、フジテレビへの入社を志した頃はドラマ志望で、学生時代はドラマばかり見ていて情報番組やドキュメンタリーはほとんど見たことがなかったんです。でも、今の部署に来て、ニュースだけではなく、『ザ・ノンフィクション』などのドキュメンタリーの取材のお手伝いをさせていただく機会があり、カメラで追い続けることで伝えられる人生があるんだ、と。そこにはちゃんと意味があり情報もあると思いました。ドラマが好きという時点で人の生き様に興味があったのかもしれませんね。

今回もかつらボクサーの小口さんを取材していくと、実はタイトルマッチまで戦っていたこともわかり、本当にすごい人なんだと感激したのを覚えています。

かまいたちとの打ち合わせに緊張も…

――初めての演出はいかがでしたか?

情報番組って、企画立ち上げから会議、取材、撮影、編集、ナレーション作りまで全部関わることができるんです。大変ですが、先輩たちに助けていただきながらなんとかやってこられました。この企画が通ったのが昨年10月なので、そこから毎週2時間の会議を行っていました。番組を面白くする話し合いって楽しいなー、と毎回新鮮な気持ちでのぞんでいました!

かまいたちさんとの打ち合わせは緊張しました(笑)。ニュースばかりやってきたので、タレントさんとお仕事で直接話すのは初めてだったので。でもおふたりが興味を持って話を聞いてくださったのでありがたかったです。

――苦労よりも楽しんでいるようですね?演出のこだわりは?

初めて通った念願の企画ですから!
こだわりは、ニュース当時のことやその後の人生をクイズっぽく紹介していくのですが、その際にスタジオがプチ大喜利大会のように進行していくところです。あとは、再現VTRにAI機能を使った仕掛けをしているところでしょうか。

でも、やってみて足りないところや、次にやれるとしたらこう変えたい、というポイントも見えてきました。今後の理想は、とにかく何でもやりたいんです!ドラマもバラエティも。近々また企画の募集があるので、今2本準備しています。人の人生は、SNS動画ではおさまりませんから、がっつりテレビで楽しく描いていきたいのです。