3月24日(水)24時55分より、フジテレビで放送される堀田真由主演ドラマ『サロガシー』(関東ローカル)。
建築士として働く主人公の環(たまき/堀田)が、ゲイの兄のために代理母として、妊娠・出産を決意することから始まるヒューマンドラマだ。タイトルの『サロガシー』とは、“代理母出産”のことを言う。
この作品は、若手脚本家を発掘するフジテレビヤングシナリオ大賞、通称“ヤンシナ”の第32回の大賞受賞作であるが、ヤンシナは同時に若手演出家の登竜門でもある。
『サロガシー』脚本家・的場友見さんインタビューはこちら
今回、『サロガシー』の演出を手がけることになったのは、フジテレビドラマ制作センター所属の清矢明子(せいや・あきこ/2013年入社)ディレクター(以下、清矢D)。フジテレビュー!!では、清矢Dを取材し、初演出にあたり心がけたこと、現場でのエピソード、見どころなどを聞いた。
――まず、的場友見さんが書いた脚本をどう読みましたか?
書き出しが、「お兄ちゃんの子を妊娠した」というシーンで、良くも悪くもキャッチーだなと思いました。ただ、読み進めていくとテーマ性だけで書かれた脚本ではなくて、言葉の通り家族の話で、登場人物の感情の機微がすごく繊細に描かれている作品だなと思いました。
――そこからドラマにするにあたって、どのような変更や修正がありましたか?
ヤングシナリオ大賞作という大前提があるので、あまり手を加えたくなかったのはあります。ですが、その中で、放送尺にはまらないことが判明し、脚本を大幅に短くしなくてはいけなくなりました。
そこで、脚本家の的場さんとも話し合い、登場人物それぞれにストーリーがあるから群像劇のような描き方もできるけど、環(堀田真由)を中心として、環と家族の話に凝縮させようということになり、そういう本の作り方にしました。
――今回、チーフ監督として初演出になりますが、どんなことを心がけましたか?
当たり前のことなんですけど、環の気持ちに寄り添うことを大事にしました。環は言葉数が少ないというのもあるんですが、育ちのせいか本音を言えなかったり、素直じゃなくて、装っている部分があったりして、「心情が読み取りにくい」というのがあるんです。
妊娠に至る経緯も描かれていないので、サロガシーという思いきった決断も、もしかすると、「なんでそんなことするの?」「この人、よくわからない」で終わってしまう危険性もあるのではないか、と思いました。
その中で、元の脚本の良さを生かした上で環の心情にちゃんと寄り添って、ひとつのセリフ、ひとつ仕草の意味を、きちんと表現することを心がけました。
「これが新しい価値観ですよ」と打ち出したいわけではない
――ドラマを試写して、重いテーマなのに、笑えるところがあって驚きました。
台本を読んで、繊細な人間の心理描写と、コミカルな要素が混在していて、それもこの本の個性だと思ったんです。その面白さを決して失ってはいけないと思い、緩急をつけて作りたいと思いました。
――聡と水野のカップルの描き方も、とても自然でしたね。
細田さん、猪塚さんにお伝えしたのは、聡の両親が思い描くようなステレオタイプの色濃いものではなく、すぐそこにいそうなカップルにしたいということ。どこにでもいる、子どもがほしいと願う男女のカップルと同じように見せたいです、と話しました。
後半で出てくる彼らの家のインテリアもそうなんですけど、ゲイのカップルだから、といって特別なものは一切なく、あたたかい家庭を作りたいと願う恋人同士として描きたいと思いました。自然に、すぐそこにいる存在に見えたらいいな、と思っています。
だからといって、自然に描くことで「これが新しい価値観ですよ」と打ち出したいわけではなく、サロガシーという事象と向き合う人々をそのまま描いただけ、と感じています。
――細田さん、猪塚さんのカップルをはじめ、ドラマ初主演で壮絶な出産シーンにも挑んだ堀田さん、憎らしい役柄をクールに演じていた斎藤工さんなど、みなさんのお芝居が光っているのが印象的でした。
堀田さんは、実際の年齢は22歳で、高校生役などもやられていますが、今回の環は、脚本では28歳の設定なんです。堀田さんならできるだろうと想像はしていましたが、その想像をはるかに超えてきたな、と感じました。
出産のシーンで、看護師さんから「お母さん」と声をかけられたときに「お母さんじゃない!!!」って絶叫するところとか、どの表情をとっても、すべてが本当に素晴らしかったです。
今まで、いじめっ子や、スクールカーストで上の方にいる子を演じることが多かったそうですが、今回、これまでの堀田さんのイメージにない役柄にも入り込んでいて、その演技の幅に驚かされっぱなしでしたね。
――改めて『サロガシー』の見どころを教えてください。
サロガシー=代理母出産というものを、純粋に「そんなのあるんだ」と思う環の同僚・野池(田村健太郎)のような人、「そんなのありえない」と思う母親・彰子のような人、そして、その当事者である人と、ご覧いただく人の気持ちも、きっと劇中の人物の誰かと同じだと思うんです。
だからこそ、登場人物たちがサロガシーにどのような思いを抱えて向き合っているのか、その感情と、移ろいに注目してご覧いただければと思います。
そのときに、自分が自然と感情移入してしまう人だけじゃなくて、そうじゃない人の気持ちや考え方を見て「そういう考え方もあるかもしれない」と180度視点を変えて見てもらうことができたら、そういうきっかけにもなるといいな、と思います。
『サロガシー』の最新情報は公式サイトまで