6月12日(土)、現在公開中の映画「明日の食卓」公開記念トークイベントが行われ、本作で“第4の母”耀子役を演じた、大島優子と瀬々敬久監督が登壇した。

本作は、椰月美智子の2016年に出版された同名小説を原作に、子を持つ親なら誰もが直面する問題を、社会派エンタテインメントの旗手である瀬々敬久監督が映画化。

菅野美穂を主演に迎え、高畑充希、尾野真千子らが母と子の壮絶なドラマが展開される。

冒頭で大島は「本日は、コロナ禍の中でご来場いただき、鑑賞していただいて心から感謝しております」、瀬々監督も「今日は、大島さんのファンの方々がたくさんいらっしゃっているので、生大島優子を堪能して帰ってください!」と、笑顔で鑑賞後の観客へ向けて挨拶した。

公開前日に、“第4の母”耀子役での出演が解禁となるや、SNSを中心に大きな話題を集めた大島。瀬々監督も「『大島優子さんが素晴らしい』という反響が結構きている。誰だかわからなかったと。それだけ素晴らしかったということ」とコメント。

以前のイベントで「10年に1本の作品」と語っていた瀬々監督だが、「長いこと作っていると、そんなつもりはなかったのに、ラッシュを観ると『すげぇことになってるな』って作品が10年に1本位あるんですけど、その1本」だと改めて語った。

実はこの日、別の劇場で本作を鑑賞してきたという大島。「一人でこっそり。誰も気づかず」だったといい、「母親ってすごい鬼みたいな顔をしてる時もあるけど、仏のように微笑んでいる時もある。それって子どもからの主観として見ていて、そういう表情とかだけで親の心情を察知していた。親と子って鏡みたいだったなって思い出した。自分の母親もこういう瞬間があったんだろうなと思い出しながら観ましたね」と告白。

すると、瀬々監督も本作に出演している渡辺真起子から「(本作を観て)『お母さんに会いたくなった』ときたんです。やっぱり、お母さんを思い出したりするんだな」とエピソードを披露。

大島は「改めて感謝しなきゃなとも思いました。私は、父子家庭なので割と父親とばっかりずっといるんですけど、でも母親は母親なりの目線で子どもを見て、自分を奮い立たせるというか、母親って父親よりも信じたいっていう気持ちが強いのかなって思って…。架空でもいいし、何かを信じながら生きていこうっていう力が強いのかなって映画を観て思いました」とも語った。

「この映画の“隠れたMVP”だと思っている」(瀬々監督)

また、大島のアイドル時代について、瀬々監督から質問が飛ぶと「(アイドル業は)私は天職だと思っていました。女優業ではなく、アイドルのほうが天職だったかもと思っているんですけど、でもずっと続けられるほどエネルギーを作っていくことがアイドルは難しいかなと…。女優さんは、作品によってエネルギーチャージが違うから、それがまた面白いなとも思って、もっとずっとチャレンジし続けていきたいなという職業ですね」と女優業に対する思いを明かした。

今回、瀬々監督と初タッグとなった大島。本役についての思い入れを聞かれると、「瀬々監督のファンだったので、お話が来た時は二つ返事でやらせてくださいと。でも1シーンだけというのは、やっぱりすっごく恐かったですね。それまでの背景とか流れがない中で、唐突に出ることほど恐いものはないなと。撮影の1週間前くらいから耀子のバックボーンを考えながら、毎日毎日ずっと考えていました」と述懐。「とにかく『石橋耀子という人生がここにある』って思いながらやるしかなかった」とその苦労を吐露した。

そんな大島の演技に対し、瀬々監督も「素晴らしいなと思いました。凝縮された時間の中で出すのは大変だと思うし、ポンと出てきて断片だけで勝負するというのは、本当に恐い仕事だと思う。それに果敢に臨んでいただいたってことだけでもありがたい。この映画の“隠れたMVP”だと思っているんですけど。それくらいのシーンだったと思う」と大絶賛。

これに大島は「すっごくうれしいです。ほかの共演者の方々がすさまじく迫力あるお芝居をされていたので、自分の中では『あーっ…』ていう感じで思っていたら、監督が(出演解禁時のコメントで)『あっぱれ』だと仰ってくださっていて…。公開前に胸をなでおろせました」と安堵したことを振り返った。

耀子役を演じるにあたって、大島は実際に子どもがいる友人に話を聞いたといい「温厚で子どもも好きな方なんですけど、『初めて育ててみてわかったよ』って。『1回プチッとなる瞬間が訪れるんだよね。そういう瞬間が自分にもあることに気づいた』って言っていて、誰にでも起こりえることなんだなと思って、そこを反映しました」とも明かした。

最後には大島が、「改めて今こういう時代になって、誰かに寄り添う気持ちというのを感じ取ってもらって、持って帰ってもらえたらと思います。誰かと触れ合うとか連絡取るとかが薄れているので、誰かを思う、寄り添うというのを思い出してもらえたら」とメッセージ。

瀬々監督も「『紙の月』を見た時に『この人すげえ』と思って、『スカーレット』で『またすげぇな』と思って、今回こうして出ていただいて本当うれしく思っています。これからも映画を観ることを大切にしてもらえたらと思います」とイベントを締めくくった。