11月19日(木)、「Amazon Audible プレス向け戦略発表会」が行われ、堤幸彦監督、窪塚洋介、梶裕貴、山寺宏一が登壇した。また、三石琴乃が“影ナレ”として舞台裏から声のみ出演し、MCを務めた。堤監督は別件の予定が長引いてしまったためフォトセッションからの参加となった。
Amazon Audibleは、約40万のコンテンツ数を誇るオーディオブックおよび音声コンテンツの制作・配信サービス。このたび、堤監督が“聴く映画”として初めて手がけ、窪塚、梶、山寺、三石らが声優として参加した作品「アレク氏2120」が、19日(木)16時より配信されている。
ここでは、トークセッションの模様を【ほぼ全文書き起こし】で前後編にわたって紹介する。
<トークセッションの前編はこちら!>
<窪塚洋介、梶裕貴、山寺宏一、三石琴乃 トークセッション 後編>
三石:収録で大変だったことを教えてください。
梶:叫ぶシーンが多かったので、体のコンディションを維持するっていうのも大変だったなというのはありつつ。あとは、僕が演じる慧(けい)くん(※AIスピーカーが大好きな大学生。「アレク氏2120」の主人公)が般若心経を唱えるシーンですね。唱えるさいの気持ちの込め方やリズムやニュアンスが場面の状況に応じて変わるので、変化をつけるのが難しかったです。
山寺:私が演じるAIのアレク氏(※2120年から来たポリスAI)は、語尾がおかしいんですよ。「おじゃる」とか「いまおりはべり」とか。ずっと語尾の練習だけしていました(笑)。
梶:そんな中で瞬時に声色やイントネーションを変えられるのは、山寺さんならではだなと思いましたね。
山寺:あと、アレク氏が故障した時の「…」というセリフを、どう表現したらいいのかも、難しかったですね。ぜひそこを聞いていただけたらいいですね。
三石:今回はほぼ一発本番だったんですよね。
窪塚:以前、実写版の吹き替えを井浦新くんとやったことがあるんですけど、その時は「もう二度とやるまい」と思ってたんですよ。でも、こういう“聴く映画”ならば挑戦したいなーと思い参加したのですが、やっぱり現場で“ヒマラヤ山脈”(声優陣の実力の高さを表現)を見て、梶くんの力強い雄叫びとかで、すごくエネルギーをもらって。
あと、山寺さんは演技中にちょっと手が動くじゃないですか。それが「ラッパーみたいだなぁ」と思いながら見させていただいたり、三石さんは可愛い綺麗なおねーさんの声だったりと、本当に新しい刺激をいっぱいもらえて、楽しかったです。
山寺:ご自身が演じたASKR(※2120年から来たクライムAI)の役はどうでしたか?
窪塚:普段の僕の喋りよりも、ちょっとトーンを落として、感情があまり出てこない感じにしていて、ちょっと大変でしたね。
三石:窪塚さんが「台本のめくり方、面白いですよね」とおっしゃっていたのが印象的だったのですが。
窪塚:目的は「音を立てない」ということだと思うんですけど、声優の皆さんのめくり方に個性があって。
梶:そんなところまで気づいていたんですね。
三石:私たちは気づいていないんですけど。
窪塚:なんというか、(再現しながら)「あ、体でめくるんだ」と思いました。
梶:この中に、そういうパターンの人はいましたか?
窪塚:え、梶くんもそうですよね。こう、膝でめくるみたいな感じで。
梶:そうですね(笑)!声優は膝も大事(笑)。今回の台本は音が鳴りやすかったんですよね。
山寺:普段のアニメの台本は、もっとペラペラでめくりやすいんですけどね。今回はちょっと良い素材の台本だったんですよね。
三石:皆さんはオーディブルエンターテイメントの魅力をどう考えますか?
梶:実際に完成したものを聞いて、本当に映画を観ているような感覚になりましたし、堤監督だからこそ表現できる音の使い方や世界観というのが詰まっていると思いました。今後も、既存の作品がオーディブルとして浸透していくのはうれしいことだと思います。
山寺:この「アレク氏2120」にしてはエンターテイメント性が高い上に、脚本がめちゃめちゃ面白い。これを音声だけで楽しんでいただくというのはね、本当にすごいことだと。よく「すごい小説作品は映像化不可能だ」といいますが、音声化は可能なんですよね。僕は一生この仕事をやっていきたいと思ったので、よろしくお願いします(笑)。
窪塚:聞いてくれた人の数だけ「アレク氏」という作品があると思うんですよね。送り手と受け手の間で、僕らが普段やってる映画などの映像作品とはちょっと違う関係性になれるのかなと。例えば車を運転しながら、とか、料理をしながらとかでもこの作品を楽しめると思うんですけど。あの、かなり面白いんで、気をつけてくださいね(笑)。
梶裕貴、“スペックホルダー”認定の役柄に興奮
三石:この作品を聴く皆さんに向けてのメッセージをお願いします。
梶:ようやくお披露目できてとても嬉しく思っております。堤監督とのお仕事や僕の尊敬する大好きな先輩方とのお芝居は本当に素敵な時間で、収録の時のことを鮮明に覚えております。この発表会の前に確認したのですが、慧くんは、「スペックホルダーである」ということで良いそうですよ。イチ視聴者として『SPEC』を拝見していた立場としては、声でその世界の一部になれて、ちょっと夢のようで非常に嬉しいです。
山寺:この作品は、バディものでもあり、SFやAIの要素もあって色々楽しい面白い作品なんですけど、最高の極上のエンターテイメントだと思っております。聴き方としては、ご自由に気楽になられても良いし、没入しても良いし、それぞれの楽しみ方で味わっていただければと思います。
窪塚:この作品に関われたことを本当にありがたく思っています。新しい可能性だったり、新しい世界を感じられています。皆さんにも「こんなジャンルがあったのか」と次世代を感じてもらえると思います。声優の仕事、本当に楽しかったので、お仕事お待ちしております(笑)。ありがとうございました。
さらに、発表会終了後、窪塚、梶、山寺の3人は記者からの質問に応じた。
――声優の声が、AIの技術で多言語再現・制作できてしまう時代が来ようとしています。AIが声優の役割を担うことについて、どのように考えますか。
梶:とても面白いんじゃないかなと思います。まあ役者としては、人間にしかできない心の機微や表現を大事にしたいなと思っていますね。当然、技術が進歩をしていけば、生身の声優の特徴とか個性をすべて含めて再現できる日が来るのかもしれないですけど、それでもやっぱり、「叫びすぎて声がかすれてしまう・ひっくり返ってしまう」とか、予想もできなかったことが起きるのが人間であり、ライブ感かなと思うので、そういうところでは「負けないぞ!」という気持ちでお芝居したいですし、上手く共存できたら楽しいのかなって思います。
山寺:今の段階では、なかなか細かい感情表現とかは難しいと思うんですね。技術がどんどん進歩してるわけですから、その流れは止められないわけですが。それすらも活用して行くべきだと思います。AI超え。藤井聡太さんのように、どんどんスペックを上げていかなきゃと思うし、もし自分たちの声を基に外国語の音声データが作れるんだったら、いただけるものはいただきたいなと(笑)。そういう権利関係はちゃんと処理しなきゃいけないなと思っていますね(笑)。
窪塚:僕は、自分自身が見てみて、「ああこれならいける、まあ間違いない大丈夫だ」ってなったらまあ、ハワイでも行ってますね。
梶:委ねましたね(笑)。
窪塚:AIに仕事をしてもらって、それでいけちゃうんだったら、空いた時間でバカンスに行きます(笑)。