ワケありだけど人当たりのいい大人と、天才肌で“手がかかる”若者の凸凹コンビが、ぶつかりながらも難題を解決していく――。
なんとなく想像できる“バディもの”かと思いきや、予想以上に心をつかまれ、最後はニヤリとできるのが、10月13日(金)スタートのドラマ『うちの弁護士は手がかかる』。
蔵前勉(くらまえ・べん/ムロツヨシ)は、人気女優・笠原梨乃(吉瀬美智子)の敏腕マネジャーでしたが、ある日突然クビに。ひょんなことから、超エリートの新人弁護士・天野杏(あまの・あん/平手友梨奈)のパラリーガル(※)に転身して奮闘する、という物語です。
(※)パラリーガル:弁護士の指示・監督のもとで法律に関する事務を行い、弁護士の業務をサポートする専門アシスタントのこと
金曜の夜にピッタリ!“くらあん”コンビの活躍にスカッとする
第1話を見て感じたのが、これ、金曜の夜にピッタリだなということ。多くの人がもっともリラックスできる金曜の夜に、いいテンポ感でドキドキハラハラでき、最後はスカッとする、なんともいい塩梅に仕上がっています。
その最大の要因は、蔵前(ムロ)&杏(平手)の“くらあん”コンビの軽妙な活躍ぶり。
蔵前は、奔放な女優・梨乃(吉瀬)のマネジャーとして、スケジュール管理やプライベートのトラブル処理、さらにはテレビ局員のご機嫌とりまで、サッと機転を利かせて華麗にさばきます。惚れ惚れするほどの仕事っぷりです。
ああ、こういう人がいるから業界はうまく回るんでしょうねぇ…などと思っていると、梨乃から突然のクビ宣告が。その理由たるや、あまりに理不尽ですが、これこそが奔放な女優たる所以(ゆえん)ということなのでしょう。
マネジャーを天職だと信じていた蔵前は絶望しますが、そこに現れたのが、新人弁護士の杏。
グレーが蔓延する芸能界で生きてきた蔵前と、法律こそが正義で、徹底的に“勝ち”にこだわり白か黒しかない杏。どう見ても、折り合わないふたりが、パラリーガルと弁護士としてコンビを組むことに。
杏は、最年少で司法試験に合格した超エリート。法律の知識はずぬけているのに、猪突猛進的な性格が空回りし、事務所のお荷物的な存在になっています。
終始、何かにイラついているようで、敵対心むきだしの目をしている杏。「いくらエリートだからって、実際にこんな新人がいたらキレるわ!」とツッコみたくなるほどですが、そこは、芸能界の荒波にもまれてきた蔵前。
自分の娘ほどの年齢の杏に無礼でつっけんどんな対応をされても、ときに柳に風のように受け流し、ときに海のように広い心で受け止めます。その器の大きさ、自虐とツッコミを交えながら場をとりもつ、大人の余裕。
そんな場面で見せるムロさんの凛々しさといったら!酸いも甘いも噛みわけてきた人生の片りんが透けて見えるようで、「こんな頼れるバディがいたらいいな」なんて夢見てしまいます。
平手友梨奈 ぶっ飛んでいるけど愛らしい杏を好演
一方、杏を演じる平手さん。強く個性的なキャラであると同時に、法律のプロとして、専門用語を立て板に水のごとくしゃべったり、法廷に立つシーンでも身ぶり手ぶりを交えた堂々たる演技をみせます。
笑顔を見せるようなシーンは一切ないものの、目の動きや仕草で巧みに感情を表現し、ベストマッチな衣装とヘアメイクとも相まって、ぶっ飛んでいるけれど、愛らしい杏をつくりあげています。
よくよく見ると、実は相性抜群なのでは、と思えるコンビが最初に挑むのは、テレビ局でのパワハラ問題。蔵前も付き合いのある社員プロデューサーを、フリーランスのアシスタントプロデューサーが訴えるという事案です。
テレビ局の話とはいえ、描かれるパワハラやセクハラが、どんな世界でも起こりうるリアリティを感じさせるのもポイント。その解決に向けて交わされる会話や法律用語も「これ覚えておいたら役に立つ日がくるかも」とも思わされ、勉強にもなります。
また、法律の素人の蔵前が、杏をどうサポートしていくのかも見どころのひとつ。
芸能界と法曹界、グレーが蔓延vs白か黒か…という、互いに真逆の世界で生きてきた者同士が交じり合っていくさまは、かみ合っているようで、いないような…。
でも、なぜかできあがっていく絶妙なコンビネーションに、気づけば釘づけになっていること請け合いです。