宝塚歌劇団の元スターに、輝く秘訣やこだわりを語ってもらう「宝塚OG劇場」。第14回は、綺咲愛里(きさき・あいり)さんが登場。
その愛らしさと華やかなオーラで、星組トップ娘役として注目を集め、2019年の退団後は、舞台を中心に活躍中。現在上演中のミュージカル「She Loves Me」で、ヒロイン・アマリア役を演じています。
本作は、1963年にブロードウェイで初演され、日本でも4度上演された人気作品。香水店で働き、文通相手の女性に恋をしているジョージ(薮宏太/Hey! Say! JUMP)と、犬猿の仲であるアマリア(綺咲)の、キュートでロマンチックな物語です。
フジテレビュー!!は、綺咲さんにインタビュー。
前編では、作品への意気込みや、物語にちなみ、手紙や香りにまつわるエピソードを聞きました。また、タカラジェンヌOGといえば、オシャレで個性的なファッションも魅力のひとつ。そこで、私服から“こだわりの一着”も紹介してもらいました。
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手紙から遠ざかっている時代だからこそ、響くものを伝えたい
――「She Loves Me」は、どんな作品だと思いますか?
かわいくてハッピーな雰囲気でありながら、人に気持ちを伝えることや、人を好きになることの大切さが、奥深くに詰まっている作品だと思います。メールやSNSが発達して、手紙というものからちょっと遠ざかっている今の時代だからこそ、皆さんに響く何かを伝えられたらと思います。
――綺咲さん演じる、アマリアの魅力を教えてください。
アマリアは、本当にまっすぐな子だと思います。まっすぐすぎて、言わなくていいことまで言って、意図せず周りを振り回してしまうことも。でも、悪気はないので、みんな放っておけなくて、つい気にかけてしまうのだと思います。
そして、まだ見ぬ文通相手に恋をして、1人で盛り上がってしまうくらい、ピュアな女の子です。現代なら、SNSで相手のことを調べたりもできますが、そういう時代の物語ではないからこそ、揺れ動く気持ちや、言葉で言い表せないもどかしい気持ちが、この作品の真髄になっていると思います。
――アマリアを、どう演じようと考えていますか?
私自身は、アマリアのように思ったことをパッと口に出せるタイプではないので、自分を打ち破って、アマリアとして猪突猛進に生きていきたいと思います。
そしてとにかく、考えるよりも先に口が動いているのではというくらい、今回はセリフの掛け合いが多いです。何度もお稽古すると、慣れた言い方になってしまいそうですが、毎回、本番で新鮮に見せるためにも、私自身がアマリアとして生き抜くことが大事だと思っています。
新車と新築の匂いが大好き!前向きな気持ちになれる
――キャストの皆さんとは、ほぼ全員初共演だそうですが、印象はいかがですか?
先日の制作会見のときに、初めてお会いしたのですが、皆さんすごくフランクで。皆さんの空気感を見て「これは絶対に毎日楽しいぞ!」と、確信しました。経験豊かな方ばかりなので、私も一生懸命ついていきたいですし、一緒にお芝居をさせていただくのが楽しみです。
主演の薮さんは、“テレビで拝見するスター”という印象が強くて、初めてお会いしたときも、「本物の薮さんだ!」と思いました。劇中では、薮さん演じるジョージとアマリアのお芝居のテンポ感がすごく重要になってくると思うので、私も殻を打ち破って、突き進んでいきたいと思います。
――この作品は“手紙”がキーアイテムですが、ファンレターなどを受け取ることも多い綺咲さんにとっては、どんなものですか?
お手紙は、便箋や文字から、その方の人となりがすごく見えてくるので、大きなパワーを感じます。消しゴムで消した跡や、筆圧の具合にも“生感”があると思いますし、やっぱりメールとは違うあたたかさや、生のエネルギーがあると思いますね。
――物語の舞台は香水店ですが、日常のなかで好きな香りはありますか?
私、新車と新築の匂いがすっごく好きなんです!あの新鮮な匂いが、たまらなく良くて。あまり共感してもらったことはないんですけれど…(苦笑)。新しいものが好きなのかもしれません。
人って、何か新しいステップへ進むときに、物の力に頼ることもあると思うんです。お家を買う、引っ越しをする、新しい車に乗る、新しいお洋服を買う、断捨離をする…そういう何かの力を借りて、次のステージへ行くことってありませんか?
私の場合は、そういった体験と匂いがすごく結びついているのかもしれません。新車も新築もしょっちゅう買うものではないですけれど(笑)、新しいものの匂いを嗅ぐと、心機一転、前向きな気持ちになれます。
<こだわりの一着>「CELFORD(セルフォード)」のワンピース
ミュージカル「東京ラブストーリー」に出演した際、笹本玲奈さんや夢咲ねねさんなど、キャストの皆さんと仲良くさせていただいて、地方公演が終わった後、みんなで観光をしたんです。お買い物をしたり、名物を食べたり、目いっぱい“思い出作り”をしたのですが、そのときに買ったお洋服をご紹介します。
このワンピースは「CELFORD(セルフォード)」というブランドで、私はもともと、ここのお洋服が好きなんです。シンプルでありながら、バックリボンがついたデザインがかわいくて、シルエットもすごく素敵で。タイトですが、上がオーガンジーの生地でフワッと包まれていて、「かわいい!」と即決でした。
お仕事では、スタイリストさんがお衣装を用意してくださることが多いのですが、宝塚のときは全部自分で用意していたので、そのときの習慣で、気になるお洋服を見つけたら迷わず買ってしまいます。「これ、何かの撮影に使えそう」「これはパーティに着られそう」って。…パーティの予定がなくてもです(苦笑)。
その感覚は、皆さんと通じるところがあったので、ものすごく楽しいショッピングになりました!ハイテンションで、“衝動買い”に近い感じで(笑)。みんなでワイワイしながら買ったな、という思い出が詰まっています。
後編では、宝塚時代から変わらないこと・変わったこと、今ハマっているというスポーツ観戦について聞きます。
撮影:河井彩美
ヘアメイク:奥川哲也(JOUER)
<ミュージカル「She Loves Me」>
【東京公演】2023年5月2日(火)〜30日(火)/日比谷シアター・クリエ
【大阪公演】2023年6月3日(土)・4日(日)/東大阪市文化創造館Dream House 大ホール
【愛知公演】2023年6月8日(木)〜10日(土)/御園座
出演:薮宏太(Hey! Say! JUMP)、綺咲愛里、宮澤佐江、竹内將人、岡田亮輔、岸祐二、坂元健児、他
台本:ジョー・マスタロフ
作曲:ジェリー・ボック
作詞:シェルドン・ハーニック
翻訳・訳詞・演出:荻田浩一