2月19日(日)の『ボクらの時代』は、鈴木亮平さん、宮沢氷魚さん、阿川佐和子さんが登場しました。
3人は、公開中の映画「エゴイスト」で共演しています。
阿川佐和子「『すみません』はとっても便利」
映画の中で出てくる「ごめんなさい」というセリフをきっかけに、3人は「日本人は、すぐに謝りたがる」と、日本の文化について語りました。
鈴木:僕も、日本生まれ日本育ちで。ふとしたときに、階段で転んだことがあったんですね。で、周りの人が見るじゃないですか。そうすると、「すみません」って言ったんですよ。
阿川:(笑)。うん。
鈴木:言うじゃないですか。みなさんの時間を、こちらに注目させてしまって「すみません」みたいな。
宮沢:うん。
阿川:そうそう。
鈴木:これって、少なくとも僕の知る英語圏ではないなって思って。
これには、生まれがアメリカで、年に2回ほど祖母に会いに行くという宮沢さんも「ないですね」とうなずきました。
宮沢:向こうでは「もうちょっと謝った方がいいんじゃないの?」ってくらい、謝らないんですよ(笑)。
鈴木:謝る文化は、ある種、日本人の美徳であると思いますし、よく考えたら不思議な部分だなと思いますね。
阿川:昔、あるアメリカ人の知り合いが「日本語はとても便利ですね」って。「何が?」って聞いたら「『すいません』は、何にでも使えます」って(笑)。
鈴木&宮沢:ああー。
阿川:「お願いします」も「すいません」、謝るも「すいません」…。
鈴木:「ありがとう」も…。
阿川:「ありがとう」も「すいません」。
鈴木:「すいません」って、何かいただいたときにも言いますもんね。
阿川:「すいませんは、とっても便利ですね」って言われたときに、なんか恥ずかしくなっちゃって(笑)。
3人は、普段からお辞儀もよくしていると盛り上がり、鈴木さんは「僕も、(映画の役で)帰り際に何度もお辞儀している姿を見て、自分、こんなにお辞儀してるのか」と笑いました。
宮沢氷魚「現場で失敗したくないんです」
モデルからキャリアをスタートし、俳優としても活躍中の宮沢さんに、阿川さんは「俺って今、登り龍?みたいに思わないんですか?」と聞きました。
宮沢:ありがたいことに、どんどん仕事も増えていって、すごく幸せも感じるんですけども。「今、自分ってどんな状態なんだろう?」とか、考える余裕が、意外とないような気がしていて。
阿川:自分のことは、好きですか?
宮沢:好きなときもありますけど、基本、コンプレックスの塊なので。
鈴木:へぇー。
阿川:どこに、コンプレックスがあるの!?
宮沢:いっぱいありますよ、もう。言えないことも多いんですけど…。
阿川:(笑)。
宮沢:現場で、失敗したくないんですよ。
阿川:ああ。失敗は、しておいた方がいいって。
宮沢:そうなんですよ、自分でもわかっているんですけど。恐怖にかられているんですね。
鈴木:それは、いいことだと思うな。
宮沢:あ、本当ですか。
鈴木:うん。20代で、僕は仕事でもたくさん失敗をして。もう呼ばれなくなったとか、たくさんあるし。
阿川:そんな時期があったんですか?
鈴木:ありますね。「こういうお芝居をしたいな」って、独りよがりの芝居をして編集で全部カットされたりとか。
阿川:傷つく~!
宮沢:(笑)。
鈴木:まぁ、自分のせいなんですけど。でもそれって、トライしてみたから、何がダメかっていうことがわかって。「あのときにあの失敗をしたから、30代でこれがうまくいった」とか。「あんな大恥かいたから、今回の小恥では何も動じませんけど」とか、だんだん思えるようになってきたかな。
先輩の言葉を真剣に聞き入る宮沢さんに、鈴木さんは「失敗するなら、前のめりに倒れたいよね。ビビッてうしろに倒れるのは一番悔しい。でも、倒れないってことは前に進んでいないってことだから、失敗する方がいいんですよ」と語りました。
鈴木亮平「自信はないですし、いつもヘコんでます」
阿川さんは、鈴木さん、宮沢さんに「何が面白いと思って、この役者稼業を続けているんですか?」と問いかけました。
宮沢:僕は、現場は…もちろん楽しいこともたくさんありますけど、つらい時間の方が多くて。
鈴木:へぇ。
宮沢:とにかく現場では悩んで、悩んで。「大丈夫なのかな」「これ、ずっと続くのかな」と思うんですけど、完成したものがみんなに届いたときに、それが全部払しょくされるんですよ。「やってよかった」って。
もともと役者になりたかったという宮沢さんは「モデルをやりながら芸能界であったり、カメラの前に立つという経験を自分の中で増やしていって、自分を磨いていった」といいます。
鈴木:「これ、ずっと続くのかな」って、そういう不安はある?
宮沢:もう不安です。「この作品で結果を残さないと、次はないだろうな」っていう気持ちになるんですよ、毎回。
鈴木:それは、自分の中の何かが冷めるとかじゃなくて。
宮沢:たぶん、自信がないんだと思うんですよ。絶対的な自信。だから、不安なんですよ。
阿川:絶対的な自信なんて、つくときがあるのかな?
鈴木:阿川さん、どうですか?
阿川:ないですよ。70になるのに、私。
鈴木:ないですか。
阿川:インタビューの仕事も、書く仕事も、全然ダメだなって。年がら年中思うし。
宮沢:そうですか。
阿川:いろんな人に会って、いろんな大御所に聞くけれど、例えば、100歳近い絵描きさんだって「満足した絵なんて、まだひとつもない」とか。この間、役所(広司)さんだって「僕は、演技がまだわからない。ダメだと思う」みたいなことをおっしゃるし。みんな、そうなんだなって思ったんだけど。
宮沢:わぁ、ちょっと、救われますね。
鈴木さんも「自信はないですし、いつもヘコんでます」といい、撮影現場を知る友人からも「(OKが出て)終わったシーンを、ずっと練習しているよね」と言われると明かしました。
阿川:ええ?
宮沢:あ、わかります。
鈴木:わかる(笑)?「こっちもあったな」とか「あの間だったかな」とか。
宮沢:そう。
鈴木:でもこれ、不思議なもので、年齢そこそこ行くと、その悩みにどこかで区切りをつける術を覚えてきました。
阿川:ああ。
鈴木:悩み続けない。
宮沢:へぇ。
鈴木:ここまで悩んだら反省の域だけど、ここからあとは、ただの無駄だって思ったら、もう、スパンと切れる。
宮沢:ああ、なるほど。僕は、寝るまで(ヘコみます)。家に帰ってセリフ何回も言って、最終的にうわーっとなって。強制的に寝て、やっと解放されるんです。
阿川:起きたら、ケロっとするの?
宮沢:起きたら、意外と大丈夫なんです。
それを聞いた鈴木さんも「同じですね。さっき言った区切りつけるって、寝ることなのよ」と共感。宮沢さんは「一緒ですね」と、少し安心した様子でした。