『スタンドUPスタート』第5話完全版
三星大陽(竜星涼)は、「三ツ星重工」をリストラされた元社員・武藤浩(塚地武雅)がスタートアップするための準備を手伝っていた。
武藤は、三ツ星重工が長崎で行っていた造船所事業の現場責任者だった男。だが、造船所閉鎖の決定に最後まで反対運動を続け、三ツ星重工社長であり大陽の兄・大海(小泉孝太郎)が進めたリストラの対象になっていた。
<ドラマ『スタンドUPスタート』これまでのあらすじ完全版>
事業計画書の作成を任されていた林田利光(小手伸也)は、楽しそうに作業を続けている大陽と武藤が気になって仕方がない。
同じころ、三ツ星重工を退任した元常務の山口浩二(高橋克実)は、山口の退職後、後を追うようにして会社を辞めた加賀谷剛(鈴木浩介)に会いに行く。
山口は、加賀谷とともに「山谷コンビ」と呼ばれ、現場の最前線で活躍して会社に貢献してきたが、航空部門の不適切な会計処理が明るみになり、その責任を取る形で退任させられていた。
そんな山谷コンビの前に現れた大陽は、いきなり「俺たちと一緒にスタートアップしよう!」と切り出し、武藤と一緒に進めてきた計画に2人を誘う。
だが、三ツ星重工が見放した長崎・風汐市の造船所跡地を巨大なネットスーパーとしてよみがえらせるという大陽の計画は、実現が極めて困難と思われたため、2人は誘いに乗らなかった。
それでも諦めない大陽は、必ず山口たちを長崎に連れて行くと武藤に約束。それと同時に、小野田虎魂(吉野北人)に協力を依頼し、配送システムのAI開発を任せる。
それは、不在配達を解消するために、配送先の在宅状況をリアルタイムで把握して、それを踏まえた配送ルートを提示できるようにするというシステムだった。
風汐市に戻った武藤は、土地の買収を進めるために、購入に手を挙げている地元の水産会社・豊光水産の社長・豊水幸男(小沢和義)のもとを訪れる。
しかし豊光は「よそ者には土地は渡さない」と武藤の話に耳を貸そうとはしなかった。
そんな折、大陽は再び山口と加賀谷に会いに行く。再就職先を探していた山口たちは、その実績が知られていることもああり、どこの会社でも「それなりのポストを用意する」と歓迎されたが、現場でバリバリやりたいという希望は通らずにいた。
一緒に飲もうと誘って半ば強引に2人を「サンシャインファンド」に連れ帰った大陽は、武藤をスカウトしたときのことや、彼が風汐の町に恩返ししたいという強い思いを持って自力で「武藤本舗」という会社を立ち上げたことなどを話す。
ネットスーパーというアイデアは、大陽が武藤に会いに行った際、買い物に苦労している人たちを見かけたからだった。
すると大陽は、東京でこの話をしているのが気持ち悪い、と突然言い出し、勝手に航空券とホテルを予約して、山口たちを長崎に連れていくことに…。
大陽たちが武藤に会いに行くと、彼はまだ何も進めることが出来ずに落ち込んでいた。知り合いの商店街の会長からは、詐欺師呼ばわりされたらしい。そんな武藤を怒鳴りつけたのは加賀谷だった。
「どんなに強い思いがあっても、形にならなければ意味がないでしょう。本気で我々を引き入れたいのなら、ちゃんと我々を信頼させてくださいよ」。加賀谷の言葉を受け、決意を新たにした武藤は、商店街との交渉はこのまま自分の一任させてほしいと大陽に申し出る。
武藤は、入念に準備をして、商店街の重鎮たちを集めた説明会を開催。だが、店主たちは武藤の話を聞かないばかりか、「三ツ星重工に戻ってもらえばいい」と言い出す。武藤も元三ツ星なのだから交渉しろというのだ。
「私はやっぱり、錆びた部品でした。結局、誰の心も動かせなかった」と肩を落とす武藤。大陽は、武藤の思いが自分を動かした、と言って彼を励ますと、食事に誘った。
大陽たちが訪れたのは、武藤が揉めている商店街の中にある食堂。そこで大陽は、STPというマーケティングのプロセスについて話し始める。
Sはセグメント<市場の細分化>、Tはターゲティング<市場の選定>、Pはポジショニング<商品をどう見せるか>ということ。
若い男性向けのメニューを中心に揃えているその食堂は、造船所があったときはそれでよかったが、彼らが出て行ってしまった今は現状とズレていた。つまり、武藤のプレゼンが間違っていたのではなく、市場の細分化が甘かったのだ。
食事を終えた大陽たちは、味噌を扱う商店で「味噌クッキー」を味わう。店先には高齢者が休憩できるスペースを設けていたその店は、ニーズに合わせ、味噌の量り売りをしていた。
「武藤さんの思いを届けるべきは、こういうお店じゃないかな?」。大陽からそう言われた武藤は、店主の女性(西原亜希)に、ネットスーパーの説明会に来たのかどうか尋ねる。すると店主は、「自分たちの組合は、重鎮たちが全部決めてしまうので出る幕がない」と返し…。
数日後、武藤は再び説明会を開く。集まったのは味噌店の店主ら、働き盛りの若い世代ばかり。彼らもどうにかして町を救いたいと思っていることを知った武藤は、「思いが一つになれば、より多くの人を巻き込んで町に活気が出る」と訴え、彼らの賛同を得ることに成功する。
プレゼンの後、大陽たちは長崎料理店を訪れ食事をすることに。武藤のプレゼンに心を動かされた山口と加賀谷は、一緒にチャレンジしたいと申し出る。
武藤の希望で、3人の新しい会社の名は「株式会社ワカラン」に決定。日本の和、中華の華、オランダの蘭…異国の文化が混ざり合って育まれた長崎料理にちなんだものだった。
一方、三ツ星重工では、コア事業である産業ロボットの遅延問題が起きていた。大海は、社長秘書の高島瑞貴(戸次重幸)に最優先で対応するよう命じていたが、いまだに解決の目途は立っていなかった。
社長がワンマン過ぎる、山谷コンビがいなくなってから誰も意見を言えない、という社員の批判を耳にする大海。副社長で大陽と大海の叔父・義知(反町隆史)は、困った時はもっと周りを頼ってもいいのではないか、と大海に助言する。
同じころ、株式会社ワカランには、1本の電話が入っていた。それは、ワカランの存亡にかかわるもので…。