現在開催中の「Dr.コトー展」へ“行ってみた”。
16年ぶりによみがえった『Dr.コトー診療所』。テレビ放送開始70年、また、12月16日に劇場版が公開されたことを記念し、神奈川県横浜市にある放送ライブラリーでは、「特別展示『Dr.コトー展』」を開催しています。
『Dr.コトー診療所』(2003年/フジテレビ)は、山田貴俊さんの同名漫画をもとに、木曜10時枠で放送された連続ドラマ。主人公の“コトー先生”こと五島健助に扮した吉岡秀隆さんの人間味あふれる繊細な演技、そして、島民との心温まるふれ合いは瞬く間に評判となり、最高視聴率22.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区 世帯視聴率)大ヒット。2006年に放送されたシーズン2は、前作を上回り、最高視聴率25.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区 世帯視聴率)という高視聴率を記録。ドラマ史に残る名作となりました。
そして2022年。続編となる劇場版には吉岡さんのほか、彩佳役の柴咲コウさん、剛利役の時任三郎さん、彩佳の父・正一役の小林薫さんらレギュラー陣が再集結。さらに、芸能界を離れていた剛利の息子・剛洋役の富岡涼さんが今作限りで俳優復帰したことも大きな話題です。
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特別展示が開催されている放送ライブラリーは、放送法の指定を受けた放送番組専門のアーカイブ施設で、NHK、民放のテレビ、ラジオ番組、CMを無料で公開しています。
そこで、当サイトのドラマ放談コーナー「信子と庸平」を担当する編集&ライターの信子が「Dr.コトー展」へおジャマ。今回の劇場版から美術プロデューサーを務めている三竹寛典さん(フジテレビ)に制作秘話をうかがいつつ、イベントの見どころをレポートします。
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与那国島では、スタッフ総出のゴミ拾いから開始
連ドラ撮影時の小道具やセットについて、三竹さんは、「残ってないんですよ。もう10年以上空いてしまっているので、連ドラのDVDを見ながら、記憶をたどって仕上げました」と、劇場版制作にあたり、美術セットを組む過程を振り返ります。
展示室へ入ると、まず右手上部に「ドクターコトー診療所」と描かれた旗が2点。シーズン1の初回で、船上で急性虫垂炎の手術をしてもらった剛洋が、感謝の印として、島の子どもたちと一緒にコトー先生へプレゼントしたものです。
旗の下には、セットの図面が展示されており、診療所内部の意外な広さにビックリ。その隣のモニターでは、診療所を上空から撮影した映像が。紺碧の海と白い砂浜のコントラストに目を奪われます。
「人が立ち入らないところだと海洋ゴミや木の枝が散乱しているので、連ドラ撮影時から現地へ行くとまず、スタッフが横一列に並んで砂浜のゴミ拾いから始めたそうです。今回の映画も美術、制作のスタッフ総出でゴミ拾いをしたのですが、軽石が次から次へと流れつくため、どうしようかと思っていたところ、『CGで消すから大丈夫です』と言われて、『早く言ってよ』って(笑)」と三竹さんは裏話を披露してくれました。
コトーの年齢を考慮し、往診に欠かせない自転車にも変化が
総工費4000万円で建てられた診療所は「裏に水の神様が祀られているそうで、そのおかげか、台風が多い場所にも関わらず、20年間無事に建っている」という逸話も。
展示の目玉は、劇場版の撮影で実際に使用された志木那島診療所の入口セット。“使い込まれた感”のある扉や、南の島には欠かせない玄関前の砂落としマットなど、今にもコトー先生が現れそうな佇まいです。
扉の右側には石垣、その上にはクロトンなど南国の植物が。「ブロックは、1から作るとなるとやはり質感が表現できないので、船便で運んできたもの。石垣は途中までがスチロールで、扉に近い部分は本物の石を積んでいます。当初はスチロールですべて作りましたが、撮る角度によっては『バレてしまう』って」。
さらに、「苦労したのは植物ですね。(ロケ地である)与那国島の植木屋さんにロケで使ったものをコンテナに詰めて送ってもらって。船に揺られてくるので、枯れずに届くか心配でしたが、ほとんど枯れずに到着しました」と三竹さんは振り返ります。
ファン必見の衣装や小道具、台本をズラリ展示
劇場版公開直前には、吉岡さんが『めざましテレビ』などにゲスト出演。連ドラの撮影が始まった2003年頃は「与那国の人たちになかなか受け入れてもらえなかった」と明かしていましたが、三竹さんによると当時の美術進行を担当し、今回の劇場版にアートコーディネーターとして参加している藤野栄治さんの尽力で車両を借りられるようになるなど、「徐々に人脈ができていった」そう。
また、映画の制作を発表していない時期に、与那国島を訪れていた中江功監督と遭遇した島民が「中江さん!」と声をかけ、続編の制作がバレそうになったという、今となっては笑い話ともいえるエピソードも。
吉岡さんや柴咲さん、劇場版ゲストの生田絵梨花さん、髙橋海人さん(King & Prince)らが着用した衣装や、和田さん(筧利夫)のカメラなど小道具も展示されているほか、映像ホールでは、歴代のポスターや台本、『Dr.コトー診療所』(2003年)、『Dr.コトー診療所2004』、『Dr.コトー2006』から、9本の上映を実施。この日も訪れていた作品ファンの皆さんが、真剣なまなざしでモニターに見入っていました。
『Dr.コトー』シリーズには、南の島でゆったりと流れる時間同様、時代や風潮の変化などとは無縁の、穏やかでやさしい時間に包まれています。
年末年明の慌ただしい時期ですが、コトー先生や志木那島の皆さんの息づかいを感じるようなひと時を「Dr.コトー展」で過ごしてみてはいかがでしょうか。
「Dr.コトー展」イベント概要
テレビ放送開始70周年企画 特別展示『Dr.コトー診療所』
2023年1月29日(日)まで開催中。
*休館:月曜(月祝の場合は翌日休。12月29日(木)~1月4日(水)。
時間:10時~17時
会場:放送ライブラリー(イベントホール、映像ホール)
入場:無料
主催:(公財)放送番組センター、フジテレビジョン
放送ライブラリー公式サイト:https://www.bpcj.or.jp/