AIがはじき出した未来の凶悪犯罪を未然に阻止する「未然犯罪捜査班」、通称“ミハン”の捜査員たちの活躍を描く刑事ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』。
第1話の衝撃のラストシーンを覚えているだろうか。
大規模テロが起きようとしている都内のとある場所で、ミハンのリーダー・井沢範人(沢村一樹)が拳銃を手にして立ち尽くし、目の前には銃殺された女性が横たわっている──という場面だ。
その女性は、法務省官僚にしてミハンの統括責任者・香坂朱里。 殺された人物は明かされたが、真相はいまだ謎のままだ。
このもう一つの物語のキーパーソンとなる香坂を演じているのが水野美紀。久しぶりの刑事ドラマに出演している水野に、役柄についてやドラマの世界観などを聞いた。
<水野美紀インタビュー>
──ここまで演じてきて手応えはいかがですか?
最初は、台本の文字だけで事件を理解するのが大変でした。いろいろな人が出てくるので、「あれ?この人はだれだっけ?」と、行きつ戻りつしながら読んでいます。
「途中で事件を解決してやる!」という意気込みで読んでいますが、まったく追いつかないです(笑)。
ドラマとしては、この先描かれる大きな展開へのフックと、1話ごとに解決される未然犯罪と、二つの柱があります。
そして、見終わった時のカタルシスと、この先どうなっていくんだろうという展開を楽しみにさせる強烈な期待感があるので、見応えのある作品だと思います。
──第1話のラストは衝撃的でした。先が見えている中で、香坂朱里という役柄を演じるのに意識していることはありますか?
初回のラストが、いきなりの山場ですからね(笑)。
なぜ死んだのかもわからないし、香坂が善人なのか悪人なのかもわからないところからのスタートだったので、つかみどころがなくて。
石川淳一監督は、クールでかっこいいエリート官僚で、強い女性というイメージをお持ちのようでしたが、それ以外にも、いろんな面が見えた方が人間味も深くなっていくし、むしろ、香坂の強さやクールさが際立ってくると思うので、そこはチャレンジをしています。
でも、回を重ねるごとに、香坂のバックボーンが明かされて、ミハンメンバーとの関係性や距離感も変わってきたので、もっとも変化の大きい役だと思います。
──26年前、父親が無差別殺人を犯し、香坂は加害者家族としてつらい人生を送ったという過去が明かされました。
香坂の最終目標は、ミハンを法制化することですが、そこには彼女の過去が絡んでいます。
あのときミハンシステムがあって、父親の犯罪を防ぐことができたら、きっと自分の人生も家族の人生も違っていたという強い思いを持っているからです。
だから、香坂は常人を超える正義感がある人だと思います。
ベクトルは違いますが、妻と娘を惨殺されて激しい凶暴性を秘めた井沢さんと似た者同士かもしれません。
私が子供のころは、お財布だけしっかり持っておけば大丈夫だったのに(笑)
──ドラマはフィクションですが、前作の1年半前よりもAIなどが生活の中で身近なものになっています。
未来のことというより、まるで現在のことのように感じます。
海外では顔認証システムが導入されて、コンビニで何も持たずに買い物ができるとか、空港で税関を通らなくても出入国ができたりしているところもありますよね。
日本でもきっとそうなるのでしょうけれど、結局、自分の情報が筒抜けになるということですから、それを便利だと思うか、怖いなと思うか…。
ドラマはフィクションですが、ミハンチームがやろうとしていることは、日本ではハードルが高そうです。犯罪を未然に防ぐことができるのは夢がありますけど、そのシステム管理をどうするか、それを悪用した人をどう罰するかなど、それこそ法整備がもっと進まないと怖いですよね。
──いまや家電にもAIが搭載されたものが増えていますが、水野さんはそういうものを積極的にお使いですか?
つい最近、わが家もインターネット配信を介してビデオコンテンツなどが視聴できるデバイスを入れました。旦那は、「未来、来たな」と言っています(笑)。
今の子供たちは、そういう環境が当たり前だから、私たちとは全然違う感覚で育つのだろうなと思います。私が子供のころは、ケータイもなくて、お財布だけしっかり持っておけば大丈夫だったのに(笑)。
──『絶対零度』は、まさにそういう世界観ですが、その一方で、アクションシーンも大きな見どころです。香坂もかなり強いですね。
それがまた謎ですよね。めちゃくちゃ強いっていうことが、さらに役柄を複雑にしていて(笑)。
アクションは、ちょっと動いたら思い出してきました。せっかくですから、ゆくゆくは犯人と対峙するようなアクションシーンが出てきたらいいなと思っています。
そうそう、監督もアクションシーンに対するこだわりがすごいなと思ったことがありました。
沢村さんと手合わせするシーンで、中段くらいの回し蹴りをするという殺陣がついていたので、「ああ、ここはパンツ姿でいくんだな」と思ったら、当日スカートが用意されていて。
スカートだと足が上がらないから、回し蹴りはなくすのかと思ったら、監督が衣装さんにスカートをリメークしてもらっていたんですよ。スカートの後ろを切って布を足して、蹴りができるスカートをオリジナルで作っていたんです。
しかも、スカートに黒いストッキングでって。そこまでスカートにこだわるのかって思いました。(笑)。
──沢村さんとお芝居されてみての印象を教えてください。
本当に素敵な方です。井沢というキャラクターは、とても重い過去を背負っているのに、そんな人間をひょうひょうと軽やかさを持って演じられる人は、ほかにいるかなと思うくらい。
軽口をたたいたり、笑顔を見せたりすればするほど、見ていて切なくなるんです。深い人間味を井沢というキャラクターに乗せて表現されているのが、本当にお見事だと思います。
──最後に、視聴者へのメッセージをお願いします。
香坂は、なぜ殺されたのか。井沢さんが殺したのか。正義とは何か。香坂の企みは何なのか。見応えたっぷりの展開になっていますので、ぜひご覧ください。