1粒およそ10ドルの宝石のような和菓子。

アカデミー賞・エミー賞の前夜祭に採用されるなど、和菓子ブランド「MISAKY.TOKYO(ミサキ・トウキョウ)」の人気の勢いが増しています。

このフードテック事業をアメリカで始めたのが、日本人の三木アリッサさんです。

かつては日本で、「イスラエルで実践されている、家庭も、仕事も両ドリできる術」を提供する「イスラエル女子部」を立ち上げ、「Forbes JAPAN 地球で輝く女性100人」に最年少で選ばれたこともある彼女。

順風満帆の人生に見えますが、子ども時代の不登校や25歳での望まぬ妊娠・流産など、たくさんの困難や苦悩を経験してきたと言います。

YouTube番組『#シゴトズキ』に出演した三木アリッサさんに、人生の充実度の波を可視化したライフチャートを使ってこれまでの人生を振り返ってもらいました。

同時多発テロを経験…和菓子事業への原体験

――どんな子ども時代だったのですか?

ニューヨークで生まれて、9歳まで日本とアメリカを行き来するような生活をしていました。

アメリカではこんな性格なのでクラスの人気者で、モテまくっていたんですよ。人生のモテ期をそこで全部使いました(笑)

本当に楽しくて、成績も優秀だったので、先生からもちやほやされていたのですが、9.11の同時多発テロを経験したことが大きかったです。

ニューヨークに、おじいちゃん、おばあちゃんも含めて遊びに行っていたのですが、フロリダ行きの飛行機が取れて、「じゃあディズニーワールドに行こう」と。そうしたら9.11が起きた。

もしあの飛行機が取れなかったら実は私、父と祖父と一緒に、あのビルにのぼっている予定でした。

当時9歳で、今でも9.11っていうと、つんと鼻の奥が痛くなるように思い出すのですが、やはりあの時は本当に怖かった。苦しかったです。

そこから完全に日本に帰ったのですが、ここが1つ原体験で、和菓子事業をやろうと思ったきっかけです。

9.11の3日後にJFK空港で、家族が日本行きの飛行機を探していました。でも人がいっぱいで、負のオーラでどんよりしていて。

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椅子も見つからなかったので、おじいちゃん、おばあちゃんと私は床の上で座って「はぁ…まだ帰れないね」みたいな話をしていました。

その時に、赤十字の人がどこからともなく現れて、私に小さいお菓子のスイーツバッグをくれたのです。

グミベアでした。

グミベア(イメージ)

今となれば何でもないグミベアですが、あの日の私は、あのグミベアで本当に救われて。あれを食べた時にほっとできたのです。

それから、いつか何かお菓子でできないかなとずっと思っていました。

小学校で不登校に。中学でも高校でも大学でも…

帰国した後は苦しかったです。

私のベースはアメリカ人なので性格が合わなくて苦しくて、小学校で不登校になりました。

中学に入ってからも保健室登校でしたし、高校も全然友達がいませんでした。

大学でも学校に行けない時期があって、社会人になってからもやっぱり合いませんでした。

小学校の時は「中学に行ったら大丈夫だから」、中学に行っても「高校に行ったら大丈夫だから」、大学に行ったら「社会に行ったら大丈夫だから」と言われて。

でも、全然大丈夫ではなくて。

自分が生きている価値を見出せなかった時期でした。

どんどん、どんどん絶望して。ただ、仕事だけは何か忘れられて、仕事の結果だけは伸びていました。でもまた会社と合わないし、上司と合わなくて、すぐ転職もしてしまって、本当にしんどかったです。

本当にもがいていた25歳でした。

――25歳からプラスに上がったきっかけは何ですか?

イスラエルに行った経験が大きかったです。

人生の転機となるイスラエル時代

当時、実はイスラエルに行く直前に、妊娠・流産をしてしまいました。

流産したこと自体がショックという訳ではなく、一番ショックだったのが「妊娠したこと」だったのです。

25歳、キャリアはまだこれからというタイミングに妊娠したので、「もう人生終わった」と思ってしまいました。

今度はそれに対して、「子どもを素直に喜べない女」ってどうなんだと落ち込んで。色々ぐちゃぐちゃになった時に、イスラエルにいくことになりました。

イスラエルは、OECD(経済協力開発機構)ナンバー1の出生率で、当時3人を超えていました。しかもジェンダーギャップ指数も凄くて、トップ10入り。

まさに女性がバリバリ仕事しながら子どもをボンボン持つみたいな社会で、「えっ…何これ」と驚きました。

イスラエルの女性たちに驚き

私は当時25歳で結構ビジネスでも成績が良くて、色々なイスラエルのスタートアップの日本法人の代表をやらせてもらっていたのですが、イスラエルの私が憧れている女性たちから「あなた25歳なのにすごいじゃない、何でできるの?」みたいに逆に聞かれたのです。

「えー!私すごいの?」と。

それまで、日本人になりきれない自分に苦労して、自分のことが大嫌いだったのですが、尊敬している彼女たちから「すごい」と言われてから完全にアイオープン。

「私、すごいのかも…」

そこで、「このハッピーな生き方をイスラエル女子部として何かボランティアで説明できないかな」と思った8か月後ぐらいに、「Forbes JAPAN 地球で輝く女性100人」に最年少で選んでいただいて、そこから人生が変わりました。

イスラエルに行ってから人生が変わった

それまで「あいつ、やべぇ」「あいつは本当に近寄るな」みたいなことまで言われていたのに、いまはその人たちが「すごいですね~」と手のひら返しで。

私、大体2割の人に好かれて8割に嫌われるんです。

でも、日本国民でも1億2000万人超いるじゃないですか。その2割と考えると「2,000万人に好かれるんだ、私」と。

「2,000万人もいたら、ちょっとしたビジネスができる。私が今までとらわれていたものって本当にどうでもいいことだったんだな」と本当に感じて、そこから人生楽しくなりました。

スーツケース2つと200万円を持ってアメリカへ

――27歳でちょっと下がっているのはなぜですか?

起業です。やはり起業には、色々葛藤がありました。

特に和菓子事業は理解されなくて、資金調達に最初苦労しました。

スーツケース2つと200万円だけを持って、アメリカに渡りました。

最初は朝9時からお昼12時までレシピ開発して、お昼12時から真夜中2時、日本のリモートでアルバイトして。

レシピの反応を見るため自らファーマーズマーケットで販売

今でも覚えています、2019年12月10日。自分の貯金残高が遂に10万円になってしまいました。

でも翌日20万のキッチンを払わなきゃいけなくて、「うわー、終わった」と思ったんです。

そしたら最初の投資家さんからの着金があって、首の皮1枚つながりました。今でもその投資家さんに頭が上がりません。その方の英断のおかげで弊社がいま残っているわけですが、やはり苦労しましたね。

――アメリカへ行くにあたって勝算は自分の中ではあったのですか?

一応オーストラリアでテストマーケティングをして、反応良かったので「まあいけるだろう」というのもありましたが、正直どうなるか分かりませんでした。

「行ってみなきゃ駄目だな」と。

しかも当時、旦那も置いて1年間別居して、苦労しました。でもあの苦労があるからこそ、「是が非でも成功しなきゃ」というギラギラ感はできました。

――そして今が1番高い位置に?

最高にハッピーです。やりたいことがやれて、こんなにたくさんの方から応援いただいて、こんなにたくさんの従業員と一緒にやれて。

今回MISAKY.TOKYO が大ヒットしましたけど、今後、また違う海藻を使った色々なプロダクト展開を準備していて、またそれが反応良いんです。

私の活動を通じて、世界中の人を幸せにできている自信もまた楽しくて。

10年前、自分の生きている価値が分からなかった私が、いま確実に人々を幸せにできているのがすごいハッピーです。

若い方には、「人生何があるか分からないから、どうかもがいて下さい」と言いたいです。

生きていれば何か良いことがあるし、もがけばもがくほど本質的なものを否が応でも見つめ直すじゃないですか。

自分の生きている意味は何だろう、何でこんなに苦しまなきゃいけないのだと。

その哲学的な自分のマインドセットを持てば持つほど、それが武器となって自分の個性となって返ってくるから、どうかどうか、いま苦しんでいるということは、つまりむしろ個性の何かを持っている証だと思うので、腐らないで頑張ってほしい。

絶対未来がある。頑張っている人には、誰かが絶対応援してくれるので、その応援者を見つけるまで頑張って欲しいなと思います。

「仕事がつまらない、つらい」としたら…

――三木アリッサさんにとって仕事とは何ですか?

仕事は「夢を実現するための1つのツール」だと思っています。

私は本当に日本の文化を誇りに思っていて、それを世界に伝えるための1つのツールにしています。

自分が幸せであるかどうかをまず大事にしていて、その上で仕事をやれていると思っています。

「仕事がつまらない、つらい」という方がいたら、あなたの人生に向いていない場所にいるだけかもしれない。自分の夢を実現するために、本当に今、正しい場所にいて、正しい職業をやっているのか見つめ直して欲しいなと思います。

本当に1つのツールでしかないから全てでもないし、もっともっと自由に羽ばたいてほしいです。

こんなに世界は広いし、こんなに日本は素晴らしい国なので、それを皆忘れているだけなので、どうかどうか思い出してほしいなと思います。