夏菜さん、新川優愛さん、白洲迅さんが、“異性化”という架空の設定を表現する難しさを語りました。

8月6日(土)からスタートする土ドラ『個人差あります』で、トリプル主演を務める夏菜さん、新川さん、白洲さん。

本作は、突然、身体的性別が変わってしまう架空の設定、「異性化」を切り口に、夫婦や恋愛のあり方を問うラブストーリー。夫・磯森晶(いそもり・あきら)が異性化した女性を夏菜さん、異性化前の男性を白洲さんが2人1役で演じ、新川さんは、晶の妻・苑子(そのこ)を演じます。

フジテレビュー!!は、3人にインタビュー。役への取り組みや、作品の魅力、究極の愛についてなどを聞きました。

「演じれば演じるほど難しい役。固定概念を壊しながら闘っています」(夏菜)

<夏菜・新川優愛・白洲迅インタビュー>

──作品の印象と役どころをお願いします。

夏菜:私が演じるのは、ひょんなことから異性化し、中身は男性で体は女性になった晶です。原作や台本を読んだ時は、すごく面白くて、「やりたい! これは私にピッタリの役だ」と思ったのですが、読めば読むほど、演じれば演じるほど難しい役。

今は恋愛も多様化していますが、人を愛することや自分を愛すること、男性とは、女性とはなどがテーマの本作に出演することは、すごく責任を感じるし、私自身も固定概念を壊しながら、闘っているところです。

新川:私が演じる晶の妻・苑子は、ある日、突然夫が異性化してしまい、悩み、苦しみ、戸惑いながらも、物語を通して一番晶のことを思いやり、支えたいと思っている強い女性です。折れない心を持った女性を演じていきたいと思っています。

とても難しいテーマではありますが、男性女性というのではなく、人として魅力を感じて、愛して、一緒にいたいと思う。そういった本質的な人間の気持ちをお届けできたらうれしいなと思います。

白洲:僕は、異性化前の晶を演じます。夏菜さんの言う通り、やればやるほど難しさがわかっていく役だと感じています。晶のような境遇はありえないことですが、だからこそ一つひとつのセリフに重みがあって迷うことも。でも、その迷いが正解なのかなと、最近は思うようにしています。

晶を演じる僕たちも大変ですが、晶と接する苑子や会社のメンバー、それぞれの家族は、より大変だと思います。晶とどう接したらいいのか、同じ役だけど演じる人間が変わるというのは、対応するのがなかなか大変だと思います。「みなさんすごいな!」と感心しながら、楽しんでやらせていただいています。

──夏菜さんと白洲さんは、2人で1役を演じるうえで、打ち合わせなどはしましたか?

夏菜:収録に入る前に、本読みとリハーサルをしました。そこで、白洲さんと「晶に一つクセをつけてみよう」という話になって。台本に、眉毛をかく仕草が描かれていたので、眉毛のどの部分をかくか、どの指でかくか、かき方などを決めましたけど、あとは意外と自由に演じています。

白洲:本当にそれくらいでしたね。なんと言うか…真似をしあっているわけではないのですが、お芝居を見ながらお互いに歩み寄っている感じです。例えば、リハーサルをした時に、セリフの語尾が“夏菜晶”のほうが男っぽいんですよ(笑)。

夏菜:男っぽくしようと思うと、言い回しがべらんめえ調になってしまって(笑)。だから、口調やしゃべり方は、私に合わせてもらうようになりました。

白洲:そのほうが、夏菜さんも演じやすそうでしたからね。やっぱり、女性が男性を演じるのは、なかなか表現が難しいと思うので、わかりやすくするためにもそうなりました。

「同じ相手役が2人いるのは難しい。初めての経験です(笑)」(新川)

──コメディかと思いきや、重いテーマの本作。それぞれの役柄で難しさを感じていることはありますか?

夏菜:私自身は中身も外見も女性ですが、晶は、中身は男性で外見は女性です。“夏菜晶”が苑子を好きになるということは、私としては同性を好きになるということ。その気持ちがどうしてもわからなくて、苦労しました。

今でも理解しきれたかというとそうではありませんが、演じる前と比べたら、いろいろな資料などを見て、知ることができた分、理解はできたかなと思います。

白洲:僕も、異性化する前は、普通の1人の男性として演じていればいいので問題ないのですが、女性化したあと、また男性に戻ることがあるんです。女性化を経験し、女性の気持ちが少しわかった晶をどう演じるか…。

女性化した晶が会社の女性たちと接したからこそわかることもあるだろうし、肉体的に女性になったことで精神的に変わることもあると思うんです。ただ、その現象はなかなか勉強のしようがなくて。

だから、想像の範囲内でしかないですけど、晶とともに悩んで迷いながら演じています。

新川:苑子はまず、相手役が同一人物だけど2人いるということが難しいですね。初めての経験です(笑)。さらに、晶が男性になったり女性になったりするんです。それだけでも苦しいのに、その中で起きる事柄に向き合っていかなければならなくて、これは本当に難しいです。

最初に晶は、ある日突然、体調が悪くなって女性になってしまうのですが、それ以降、男性に戻る、また女性になるということが繰り返されて、そこにはまた違う理由があって…。

そうすると、苑子は、最初の“夏菜晶”と、2度目に会う“夏菜晶”に対しての接し方が違ってくるので、そこが一番難しいですね。

──みなさんは、作品のどこに面白さを感じていますか?

夏菜:私の役は、端から見たら、女性が女性を好きになるわけです。でも、それは突き詰めて考えていくと、人として好きということなんですよね。以前は、そこまで考えたことがなかったですし、知りたいとか理解しようという気持ちより、他人事のような気持ちでした。

でも、本作に携わって、晶と苑子の関係性がうらやましいと思いました。やっぱり、究極の愛なんですよ。私の中で理想の2人です。こうやってお互いに思いやりあって生きていけたらいいなと思いました。

新川:プロデューサーや監督は、「コメディにしたくない。真剣にやっていきたい」とおっしゃっていました。大切な人に何かが起きた時、一緒に苦しんだり、支えになってくれたりする人は必要です。

男女関係なく、本当に大切な人は誰かと気づかせてくれるのが、この物語なのかなって。そこが面白いところであり、じんわりするところではないかと思います。

白洲 テーマがなかなかに重いものなので、ただのコメディにはしたくないというのはありますが、やっぱり、コメディ要素があるところが面白いと思います。

それには、晶のキャラクターがすごく大きいと思っています。晶は、良くも悪くも素直な人間で、すごいことが起こっても、それを素直に受け入れたり、苦悩したりできるんです。

女性になってしまって、この先、どうするのか。戻るのか、戻らないのか…。このテーマを面白く見られるかどうかは、晶のキャラクターにかかっていると思います。

パートナーが異性化したら「理解しようとするとは思うけど…」(白洲)

──もし、ご自身のパートナーが異性化したら、どうすると思いますか?

夏菜:なかなか想像できないですが…苑子が晶に対してそうだったように、相手を妹のように思ったり、お母さん目線になったりしそうな気がします。「洋服はこれ着て!」とか「もっとメイクはこうしたほうがいいよ」とか、やりそうです(笑)。

新川:女性ならではの生理現象もそうですけど、大変なことって多いと思います。

生まれた時から女性として生きているから普通にとらえていることでも、男性がある日突然女性になると、きっと私たちより大変だろうなと思うんです。だから、私もたぶんいろいろ言いたくなってしまうし、気にかけてしまうと思います。

白洲:僕も想像するのは難しいですが、理想論でいえば、もうジェンダーを飛び越えて、「人として好き同士であれば大丈夫。一緒にいられるね」というところにいきたいですね。

実際のところ自分が直面したら、常に隣に男(笑)。友だちじゃなく、パートナーとして…。もちろん、まず理解はしようとすると思いますが、本当に難しいですね。

──「個人差の範ちゅうかもしれないけど、もしかして自分は特殊かも!?」と思うことはありますか?

白洲:僕は、食べることがめちゃくちゃ好きなんです。1食1食を大事にして、味わってしまうから、食べるのがすごく遅くて(笑)。だから、たまにコース料理のお店に行くと、誰と一緒に行っても、相手を待たせてしまいます。

夏菜:私は逆にせっかち。ゆっくり食べるということが信じられない。着替えるのも、すごく速いですよ。だから、ゆっくりな人がいたら、イライラして「速くしてくれ!」って思っちゃう。

白洲:急げないんですよ。「迅」という名前は、何事も素早くこなせるようにという意味が込められているんですけど…(笑)。

新川:私もめちゃくちゃせっかちです。プライベートでもお仕事でも。なんなら、今ここで取材が終わったとしたら、本当は衣装を脱ぎながら控え室に戻りたいくらいです(笑)。

夏菜:わかる~(笑)!

──最後に、視聴者へのメッセージをお願いします。

夏菜:この作品は、勉強になることがたくさんあります。夫婦の在り方、男性として女性としてなど、今を生きていくみなさんにとってのアドバイスになる要素が詰まっています。

私自身も、考えさせられることがたくさんあって、「もっと柔軟に、もっと頭を柔らかくして生きてもいいんじゃない?」と思えました。「みんながこうだから、こうしないといけない」みたいなものを取っ払ってくれるドラマだと思っています。

みなさんがこの作品を見て、感じて、自由に生きていってもらえるような、そんな元気が出るドラマにしたいと思っています。ぜひ見てください。

新川:苑子としては、夫が異性化してしまって、悩んだり苦しむことが多いんですけれども、どうしたら夫が少しでも女性になった生きづらさを感じずに、悩まずにいられるかを考えて、献身的に支えていきます。その姿は、原作でも台本でも丁寧に描かれているので、私も大切に演じていきたいと思っています。

いろいろなことが起こって、最後まで苦しんでも、前に進んでいくお話です。見てくださったすべての方の心が少しずつ楽になっていく作品なんじゃないかと思います。ぜひご覧ください。

白洲:異性化という突拍子もない話ですが、そのおかげで固定概念や無駄なフィルターみたいなものを取っ払って見ることができるのではないでしょうか。

本作は、夫婦の話ではありますけれども、ひいては人間関係の話でもあります。男性目線、女性目線、両方目線、いろいろな目線があって、異性化するからこそ、そこがあいまいになっていく作品なので、いろいろな人に見ていただきたいです。

夫婦だけでなく、会社の同僚、友達、家族など人間関係はたくさんあるので、現代社会に生きるすべての人に、何か伝わるものがあると信じて作品に取り組んでいますので、ぜひ見ていただけたらうれしいです。

撮影:今井裕治
スタイリスト:星翔子
ヘアメイク:枝廣優綺
持道具:北川幸江

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