『元彼の遺言状』第3話完全版
剣持麗子(綾瀬はるか)は、篠田敬太郎(大泉洋)を住み込みで雇い、弁護士の村山権太(笹野高史)から引き継いだ「暮らしの法律事務所」での仕事を始める。だが、仕事の依頼は、離婚調停の相談など、金にならない案件ばかり。
<ドラマ『元彼の遺言状』これまでのあらすじ完全版>
ある日、運送会社の乗車前検査に引っかかり、社長を蹴って逮捕された上杉真美(佐々木春香)の面会に行く羽目になった麗子。真美は、血中アルコール濃度0.03%という数値が出ていたが、その原因は恋人とケンカして奈良漬けをやけ食いしたためだと言い訳し、麗子を呆れさせる。麗子は、真美から頼まれた犬の散歩を、篠田に押し付けた。
そんな折、麗子のもとへ武田信玄を名乗る男から依頼の電話が入る。麗子はそれを断ろうとするが、秋須坂町という町名を聞くと、殺人事件があったという同町の進藤不動産へと向かった。
その道中、秋須坂町内のレストランで起こった火事に遭遇。水道管の老朽化が原因でポンプ車が使えず、消防署員や町の人たちがバケツリレーで消火活動を行っていた。
出迎えた警視庁捜査一課の橘五郎(勝村政信)は、事件について麗子に説明した。殺されたのは進藤不動産社長の進藤昌夫(画大)。「弁護士が来るまで何も話さない」と言い張り、座っていたのが黒丑益也(望月歩)という青年だった。
黒丑は、ホストクラブ「戦国」で武田信玄という源氏名で働いているらしい。
黒丑は、3ヵ月前に自宅に訪ねてきた進藤から、立ち退きを持ちかけられたという。だが1ヵ月前にもう一度やってきた進藤は、まるで人が変わったように、「ここは自分の物だから1ヵ月以内に出て行け」と言いだしたという。黒丑は、交渉するために進藤に会いに来たら彼が死んでおり、すぐに警察に連絡した、と主張した。
別の日、麗子のもとへ、事務所の開業祝いを持って元彼・森川栄治(生田斗真)のいとこ・紗英(関水渚)が訪ねてくる。常國建設の株主だった紗英は、この後、常國の新プロジェクトお披露目パーティに出席するという。
常國建設による秋須坂町の商店街の再開発計画を知っていた麗子は、警察に向かうと黒丑の身柄を引き受けた。
黒丑によると、やはり進藤の先祖は秋須坂町一帯の地主で、まとめて土地を売りに出すと言っていたらしい。だが、黒丑の家はもともと祖父の持ち物で、黒丑が1歳のときに祖父か亡くなると、家族で引っ越してきたのだという。
黒丑は、両親と弟の4人家族だったが、リストラがきっかけで父親が家族に暴力を振るうようになり、母親が出て行き、弟も母親に呼び寄せられて家を出ていた。そして、3年前にはついに父親も蒸発。篠田は、「それでもいつか家族が一緒に暮らせればと、ホストになって家を守っている」という黒丑に、すっかり同情していた。
麗子は、橘から、進藤不動産にあった立ち退き区域の賃貸借契約書をまとめたファイルの中に、なぜか黒丑家のものだけがなかったと教えられる。ファイルには黒丑の指紋も残っていたらしい。
常國建設を訪れた麗子は、事業開発部の斉藤(鬼塚俊秀)に会い、ショッピングモール建設プロジェクトについて切り出す。建設反対派が集団訴訟を起こしても勝つ自信があるのはもちろん、彼らを一斉に立ち退かせるための秘策もあるといって提案書を渡す麗子。
ヒントは、火事の際に見た水道管の老朽化だった。さらに、「進藤が殺された事件の重要参考人も押さえている」とアピール。斉藤はその提案に食いつき、「上司に相談する」と返した。
提案書の中で麗子は、いまだ立ち退き交渉中の48軒を1軒1000万円でまとめ、さらに1ヵ月以内に成功すればプラス1億円という見積もりを出していた。
あくる日、麗子は篠田とともに黒丑家に向かうことになっていた。
待ち合わせの喫茶店にやってきた篠田は、麗子に1枚のビラを見せる。それは、ショッピングモール建設反対を訴えるものだったが、リーダーの望月という男は、先日火事が起きたレストランの経営者だった。あの火事が放火の可能性もあることを知り憤る篠田。
登記簿によれば、黒丑家の土地も建物も所有者は進藤となっていた。麗子たちは黒丑家の呼び鈴を鳴らしたが、返事はなかった。裏庭を見ると、隣の尾形家との境界線に白いツツジが咲く垣根があり、その中に一つだけ赤いツツジが咲いていた。
麗子たちは、庭の手入れをしていた隣家の主・尾形雄一(おかやまはじめ)に声をかけた。大学で植物の研究をしている尾形。黒丑家のことを尋ねられた尾形は、黒丑の父親がその筋の関係者であること、妻はすでに他界していること、黒丑には弟などはいないことを麗子たちに話した。父親の姿はここ何年も見ていないという。
事務所に戻った篠田は、孤島に集められた10人が童謡に合わせて殺されていくアガサ・クリスティーの小説「そして誰もいなくなった」と同じだといって今回の事件についての推理を展開した。
「秋須坂」とボードに書き、「秋」のつくり・火=現場近くで起きた火事、人の頭を表す「須」のつくり・おおがい=頭部を殴られて死亡した進藤のことだという篠田。そして、1ヵ所だけ色が違うツツジこそが、黒丑が立ち退きを拒絶し、嘘の証言をした本当の理由だと続ける。
篠田は、ツツジの色が変わったのは、「坂」の土へん…つまりツツジの下に何かが埋められているからだと結論付けていた。
麗子は、黒丑に会うためにホストクラブを訪れた。黒丑と中華料理店を訪れた麗子は、「賃貸借契約書はどこか」と切り出した。進藤不動産の灰皿には何かを燃やした跡が残っていた。麗子は、そのことにも触れ、「間もなく一斉に立ち退きが始まるから、契約書を隠し持っているのなら今のうちに出すように」と、黒丑に告げた。
同じころ篠田は、火災現場の画像をチェックしていた。そこにやってきた紗英は、グレーの服の人物が何枚もの写真に写っていることに気づく。その報告を受け、メモリースティックに画像データをコピーするよう指示する麗子。するとそこに、橘から連絡が入る。
麗子は、橘に呼び出され、黒丑家の近くで合流した。橘たちは、ずっと黒丑をマークしていたのだ。麗子たちが黒丑家を覗き込むと、泥だらけになりながら庭を掘っている黒丑の姿があった。ふいにライトで照らされた黒丑は慌てて逃げ出そうとしたものの、麗子に呼び止められると足を止め、その場に崩れおちた。
ところが、その後の警察による捜査でも、黒丑家の庭からは何も見つからなかった。麗子は、黒丑の身柄を引き取ると、橘にメモリースティックを手渡した。
あくる日、麗子と篠田は、黒丑を伴って尾形が勤務する関東理科大学を訪れる。黒丑が庭を掘っていたのには理由があった。黒丑の父親は、3年前に「しばらく身を隠す」と言って出て行ったのだという。その時、「何があってもあの家に住み続けろ」と言われていた黒丑は、父が誰かを殺して庭に埋めたと思い込んでいたのだ。
ホストクラブの店長から、「花の色が変わる場所には人が埋められている」と聞いていたという黒丑。しかし、土の影響で色が変わる植物は、アジサイくらいしかない。
麗子たちは、尾形が講義をする大教室へ向かった。講義を終えた尾形に、「秋須坂町の火災現場にいなかったか」と切り出す篠田。尾形がそれを認めると、麗子は、「火をつけたのは恐らく進藤」と告げ、「その現場を目撃したのではないか」と問いかけた。
さらに麗子は、進藤を訪ね、放火の件を見逃す代わりに自分の家だけは立ち退きを免れるよう交渉したものの、「進藤に断られて殺害に至ったのではないか」と続ける。そう考えた根拠は、立ち退きリストの中にあった。尾形が住んでいる家の所有者は進藤だが、借地契約を交わしていたのは尾形ではなく、義父の藤本浩平だった。
尾形は、「義父は脳梗塞を患いリハビリ中で、妻もその世話をしている」と話していた。だが、橘たちの調べでは病院にも保険会社にもそんな記録はなかったのだ。
ほどなく尾形の家の庭からは、義父と妻の死体が発見される。尾形は、進藤を殺したことも認めた。
黒丑が進藤不動産で燃やしていたのは賃貸借契約書ではなく、キャバクラの割引券だった。黒丑は、ホストクラブの店長の机から持ち出した優待券を賄賂代わりにして進藤と交渉しようとしたらしい。燃やしたのは、店長にバレることを恐れたからだった。
麗子は、そんな黒丑に呆れつつも、彼の父親の言葉の意味を教えてやる。進藤不動産は創業45年。黒丑の祖父は進藤の先代の遠戚だった。おそらく黒丑の祖父は、契約書も交わさずに家を借りて住んでいたのだ。
黒丑の父親は、民法162条──つまり、他人のものでも契約書なしに20年間善意の下に所有していたら自分のものになるという「取得時効」のことを知っており、息子に住み続けるよう伝えたのだった。
別の日、麗子は、常國建設を訪れるが、担当の斉藤から提案した件をあっさり断られてしまう。怒りを噛みしめながらエレベーターホールに向かう麗子。すると、やってきたエレベーターの中から現れたのは津々井(浅野和之)だった。
秋須坂町のショッピングモール建設プロジェクト案件は、津々井の事務所が引き受けることになったのだという。
篠田は、事務所に積み上げられていた蔵書を、1階のオリエント文庫に無償で譲っていた。それを聞いて、理解できないと驚く麗子。そこで篠田は、真美の件を麗子に伝える。真美の愛犬に散歩をさせるために彼女の部屋を訪れた篠田は、冷蔵庫の中に、大量の奈良漬けがあることに気づいたのだ。
麗子は、奈良漬けのことといい、キャバクラの割引券のことといい、どうでも良い案件を持ってくる一般市民はなぜ合理的に行動できないのか、と嘆く。すると篠田は、「でも、だからこそ人間はミステリーなんじゃない?」と告げて…。
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