『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)や『太田上田』(中京テレビ)などに不定期出演をしてはマツコ・デラックスやくりぃむしちゅー・上田晋也らとのやり取りが話題となる、お笑い芸人・浜ロン。
彼は、2016年4月にTwitterを開始。
「『どうせ暇だろ?来いよ』と言われましても、君の誘いより、暇の方が上なんですよね。」
「千里の道も一歩から。ほら~。先に千里とか言うから、もう足が動かないじゃんか~。」
などという、“ダメだけど名言っぽい”ひと言「ダ名言」を毎日欠かさず更新し、素直な言葉の数々が「分かる!」「気持ちが軽くなった」などとネット上でちょっとした人気に。
そんな言葉を集めた著書「ダ名言」が4月10日(金)に発売。この「ダ名言」が生まれたキカッケから、先輩でかつて付き人も務めていた上田との関係性までたっぷり話を聞いた。
キッカケはくりぃむしちゅー・上田の宿題から
――さっそくですが、「ダ名言」を作り始めたキッカケをお聞かせください。
僕は以前、上田(晋也)さんの付き人、運転手をしていたのですが、ある時上田さんから「“浜ロンと言えば○○”という名刺を作れ」と宿題を出されました。それをキッカケに僕のことを10年以上知っている芸人仲間に集まってもらって、「僕はどんな人間なのか」を聞いてみることにしたんです。
仲間に話を聞くと、どうやら僕の“いい時”は、すごいテキトーにしゃべっていたり、自分の思いを熱く語ったりしている時で(笑)、“ダメな時”は、場の空気に合わせようとして無理して空回ってる時だという話になって。それを踏まえると、自分は暗いし弱い人間であって、今のまま無理をせずに何かできることはないかなと思ったんですよね。
そこから自分は、小声でボソッと効果的なことが言えたら面白いのかなというところに行きつき、闘わない“ハト派芸人”になろうと思ったんです。
――“ハト派芸人”がどうやって「ダ名言」につながっていくのでしょうか?
芸風にするとしたらどうしたらいいのかと考えた時に、ひと言日記を書き始めたんです。それが「ダ名言」の始まりですね。その内容を聞いた上田さんから「お前、ダメだけど正直でいいな。続けてみろ」と言ってもらえて。それなら世に発表しよう思い、Twitterを始めました。
――上田さんのひと言がいつもヒントというか、進む道になっている感じですね。
ダ名言に関して直接「ああしろ、こうしろ」とは言われないですけど、上田さんからの宿題に応えるためにもがいて、今があるという感じではあります。
――Twitterに関して言うと、「ダ名言」とは別に、年に1度差し込まれるサボテンも気になるのですが…。
誰も食いついてくれないんですけど、マジで育てていて。僕の家、日当たりが悪いんですけど、そんな中でも朝7時に小窓の右端に置くと朝日を浴びて、昼頃には左側に置いて、昼過ぎたら日が当たらないからLEDを当てて、天気のいい時は外に置いて…といろいろと手をかけているんです。
――サボテンを育てるのにそんなにご苦労されているとは…。
日当たりの悪い場所で本当は育てちゃいけない種類だったんですよね。今年は、日光不足なのか花が咲かなくて。あれはいたくショックでした。
あまり土を変えなくてもいい種類ですが、花が咲かなかったので、慌てて土を変えて。せっかくだから写真を撮って。でも、そのままアップするのはもったいないからダ名言をつけて投稿してみました(笑)。
「古本の売れ行きも好調!お金は1円もいらないからただ読んでほしい」
――Twitterを始めて、4年で書籍化されましたね。
最初は、日めくりカレンダーを作りたかったんですよ。もしくは、トイレットペーパーにして、おしりを拭いて捨ててもらうっていう(笑)。その扱い方、まさにダメな名言じゃないですか!
でも、うれしいことに書籍化のお声がけをいただいたので、頑張ってみようと思って、ダ名言に解説をつけて本にしてもらいました。発売から4日後にはもうメルカリで売られていましたね。ただ、その2日後には売れていたので、古本の売れ行きも好調です(笑)。
――売り切れているお店もあると聞きました。
Amazonは初日に売切れてはいたみたいですけど、店舗の場合は、もともと入荷してない可能性もありますよ(笑)。でも、本当にお金は1円もいらないから、ただ読んでほしいですね。
ちょっといい話になっちゃうかもしれないんですけど…、母が今入院しているんです。新型コロナウイルスの感染問題もあるので面会に行けないんですが、本は届けられて。母の世代は、お笑いで何かやるよりも、本とか権威に弱いですから(笑)。おそらく読んでくれているでしょうし、それで元気になってくれたらうれしいなと思っています。
浜ロンのイチオシ「ダ名言」とは?「当初の自分は本当にダメですね(笑)」
――ダ名言には人の心を軽くする力があるように思います。その言葉の数々は、どうやって生まれるのでしょうか?
僕はずっと何かを考えていて。歩いている時とかも「あの時こうだったな」とか、すれ違った人を見て「この人はこう考えてこうしてるのかな」とか。その時思ったことを以前はノートに、今は携帯に書き溜めていて。Twitterに載せていない言葉が倍以上あります。本当のダ名言は、ノートの中にあるのかもしれないです。
――書籍出版に向けて過去の言葉を見直して、改めて「これは!」と思ったものはありますか?
いくつかありますね。Twitterで反響の大きかったものもありますし、世に出していないものの中にもあります。
「悩んでる時は空を見なよ そしたらきっと驚くぜ 何も解決しないんだ。」
これは、4コマ漫画にしてTwitterで発表したものです。よく「空を見たら気持ちが落ち着く」とかっていうポエムを書いたりする人いるじゃないですか。いやいや、問題解決してないからっていう(笑)。空を見て問題が解決する人は、もう解決していて、空を見に行ってる人ですからね。
たぶん、「下を向く」「ため息を吐く」という行動って、考え方がまとまりやすいとか、何かしらいい作用がきっとあって。別に下を向くことは悪いことじゃないんですよ。
「自分には甘いですが、悪口は許しませんよ」
これ、初期のノートの4ページ目くらいに書いてあって、でも分かりづらいかなと思って、どこにも出していないかと。“自分に甘い”ってゆるやかで脱力系な感じがするじゃないですか。でも、悪口になった時に急に集中力が増して「許さない!」っていう。「お前、力出すとき出せるじゃないか」っていうことが言いたかったのかな。
「勝ち負けにこだわるな。試合後の己の慰め方にこだわれ」
これはノートに「△」がついているので、公開していないと思います。自分への言い訳を充実させろということですね。当初の自分は本当にダメですね(笑)。
「人は生まれて死ぬだけ。自分の全体像を把握するだけで安心する」
――読者の皆さん、その他ちょっと疲れてしまっているすべての方に、心を解放するためには「こんなことをしたらいいよ」というアドバイスはありませんか?
僕が皆さんにという立場はとれないですけど…、正直になって自分を茶化すと“自分”が見えてきて、“自分”という全体像がハッキリすると無理しなくなるのかなと思います。
人は、自分の脳みそが作り上げた理想になろうとして頑張っちゃうじゃないですか。その理想としてる人のすべてを知ってるわけじゃないですよね。
例えば、野球の大谷翔平選手みたいになりたいと思っても、僕らは大谷さんが野球をやってる姿しか知らない。しかも、自分から見て高い位置にいる大谷さんよりも自然と少し高い位置に理想を置いていると思うんですよ。それは厳しい戦いです。
だから、“自分”の全体像や“理想としているもの”の全体像がしっかり見られるようになると安心するというか。自分も世の中も大したもんじゃないよと思うようになるかなと思います。人は生まれて死ぬだけですから。
帯は、上田さんが僕の知らないところで書いてくださっていた
――先ほどから少しお話が出ていましたが、くりぃむしちゅーの上田さんから書籍に関して何か反応はありましたか?
いや~何も言わないんですよ。ただ、帯が見事だなと思いましたね。「浜ロンよ、本という形を借りて俺に文句を言いたいだけだろ」っていう。
――この帯はお願いして書いてもらったのでしょうか?
ある番組内で、出演されている皆さんに向けてお願いはしていました。その発言をして、しばらくしてマネージャーから「実は上田さんが書いてくださることになった」と聞いて。
――裏で実際に動いてくださっていたということですか?
そうですね。僕は番組上で言っただけで、裏でお願いはしていなかったんです。だから、帯を書いてくれるとなった時に、何年振りかに電話をしましたね。こっちから用事があって電話をかけるなんて初めてだったかもしれない。
先にLINEで「今、お電話するお時間ありますでしょうか?」と聞いてから、かけて。緊張しましたね(笑)。
――どんなやり取りをされたんですか?
「帯を書いてくださってありがとうございます」と伝えたら、「おー、おー、おー」と。「(帯の言葉を)二つ考えたんだけど、1個だけ教えるわ」と言って、もう公開できないようなめちゃくちゃなことを言っていて(笑)。「どっちが採用されるか楽しみにしておけや!」と言われました。
でも、本当にヤバい内容だったので、「もし今言ったほうが採用されたら、上田さんもヤバいですよ!」と話したんです。そしたら、「それは俺も覚悟してるよ」と。なんで僕の本の帯のためにそんな覚悟をするんだっていう(笑)。
――関係性がステキですね!
関係性はステキですけど、言葉の内容はヒドイものでしたよ(笑)。でも、本当はちゃんとした二つの案を出してくださっていて、そのうちの一つが採用されているんですけどね。
――これからもダ名言の発信は続けていく予定ですか?
続けることは全然可能なんです。でも、新しいベクトルが思いついたらそっちに変えるか、別のアカウントを立ち上げたりということは考えています。
――最後に読者へメッセージをお願いします。
「ダ名言」をぜひ手に取っていただいて、Amazonや各サイトに星5をつけていただきたい。太宰治の文章を読んだ時の絶賛の文章をそのまま、名前だけ浜ロンに書き換えてコメントしてくれたらうれしいなと思います。
もう、嘘でいいので。「間違って送信しちゃった」みたいな感じで。星5だとリアリティに欠けるので…4.8くらいになるように調整してもらえるといいなと思います!