「このような増加は見たことがない」
「緊急事態宣言後のアプリの市場動向は、今までで例を見ないほど伸びています」
世界最大手のアプリデータ会社App Annie Japan(アップアニー・ジャパン)向井俊介代表取締役は『とくダネ!』の取材にそう語った。
アップアニー社よるとアプリのダウンロード数はこの2ヵ月間だけで2,000万近く激増している。
15年以上もの間アプリ業界の動向を見続けてきた向井氏も、この様な増加は見たことがないという。
「毎月、新規ダウンロード数が少しずつ減っているのが、日本の状況なんですが、1.5倍にダウンロード数が増えています。新規ダウンロード数が増える月は、見たことがないです」
3月から4月までのアプリダウンロード数の伸び率のデータをランキングにするとどのような傾向が出るのだろうか?
アップアニー社がまとめてみたところ、1位から10位までは大きく4ジャンルに分類された。
①「ビデオ会議」
1位、5位、8位には、ビデオ会議のツールとして便利なアプリがランクインした。テレワークの増加に伴うものだ。
②「ゲーム」
2位、7位、9位には、ゲームアプリ。
「ハイパーカジュアルゲーム」と呼ばれるシンプルなゲームが人気で、4月の緊急事態宣言後にダウンロード数を大きく伸ばしたゲームアプリのトップ5のうち3つがハイパーカジュアルゲームだったという。
③「ニュース」
3位にランクインしたのはNews Digestというニュースアプリ。AIが報道価値を判断し、リアルタイム情報やニュース速報、事件・災害など、いち早く配信するのが特徴だ。
このアプリ内には、国内の感染者数などの最新情報を始め、都道府県別の累計感染者数や死亡者数など、新型コロナ関連の情報が、いち早くデータ化されている。
さらに、GPSによる位置情報を使って、近隣の感染事例を地図上に表示してくれるサービスもある。
向井氏は「コロナ禍の環境下において情報があまりにも多く、玉石混合で何が正しい情報なのか、確からしい情報はどこなのかということに対するアンテナが非常に高くなっているのではないか」と分析している。
④「その他」
6位には、休校の影響で、教育機関向けアプリ「Google Classroom」がランクインした。生徒の学習状況を把握したり、課題の出題や採点などを一元管理したりすることができる。
10位は、カラオケアプリ「ポケカラ(Pokekara)」。
最新のヒット曲からアニメソングや懐メロまで曲を選べて、無料で歌い放題。売りは、本格的な採点システムで、カラオケには行けなくとも、本気で歌えるとあってダウンロード数を伸ばしているという。
コメント欄には「楽しすぎてやばい!」「究極のおうち時間を楽しめる!」など好意的な感想が並んでいる。
コロナ禍で急成長する「注目アプリ」
外出自粛が続き、ニーズに合わせて進化しているアプリ業界。今回、ランキングには入らなかったものの、ユーザー数を伸ばしているアプリも多数ある。
そのひとつが「ゼンリー(Zenly)」。家族や友達が、どこで何をしているのかがわかる地図アプリだ。
もともと世界で100万人が利用しているというアプリだが、新型コロナでの外出自粛を受け、ある新機能が追加された。
それは「自宅滞在チャレンジ」。
アプリで繋がっている世界中のユーザーたちが、自宅で過ごした時間をランキング化。より長く家にいた方が上位になれるというものだ。
外出自粛でストレスを抱えがちな中、利用者からは「ゲームみたいで楽しい」「家にいることを褒められているようでうれしい」と評判も上々のようだ。
ちなみに5月6日時点での日本は83.42%と、世界4位となっていた。
さらに、急激にユーザー数を伸ばしているのが「ピカブル(Picable)」。
同じ動画などを一緒に見ながら会話できるアプリで、遠く離れていても同じ時間に画面を共有できるとして、若者やカップルに人気だという。
番組では、ユーザーがどのような使い方をしているのか、普段から愛用しているという真由さん(仮名)に、実際に使用しているところを見せてもらった。
北海道に住む真由さんが、ピカブルをつないだのは、四国に住む友人の愛澤さん(仮名)。2人のスマホ画面には「ヨガ動画」が映っていた。
「最近、ストレッチ全然してない」「私も引きこもってダラダラしちゃってる」などと笑い合いながら、動画と同じポーズをする2人。
どちらかが画面を一時停止したり、次の動画に変えたりすれば、友達も全く同じ場面を見ることができる。
真由さんはピカブルの魅力をこう教えてくれた。
「動画を見て、同じタイミングでリアクションができて、相手も同じタイミングで笑っているなと感じられます」
こうしたユーザーの支持を受け、月間の利用者数は2月と比較して、なんと7倍に伸びているという。
ピカブルを開発した小島貴之代表取締役CEOは人気急上昇の理由をこう考えている。
「いま皆さん、友達に会いたくても会えない、遊びたくても遊べない。そんな状況下で『家にいながら、友達と何か面白いことをしたいな、遊びたいな』という気持ちが、今回の人気につながったのだと考えています」
さらに4月27日にサービスを開始したばかりの注目のアプリがある。
プロの配送ドライバーによる買い物代行サービス「 PickGo(ピックゴー)」だ。
使い方は簡単。
まず、店舗を指定。その次に購入したい商品を文字で打ち込む。
すると、商品の画像候補が複数現れるので、その中から購入したいものを選べば注文は完了。
1回の利用で、最大3店舗まで指定することができる。
注文完了後、お届け予定時間や手数料が掲載されたパートナー一覧から依頼したい人を選べば、あとは商品が届くのを待つだけ。
ドライバーが指定された店を回って買い物をし、届けてくれる。365日、24時間希望の日時を指定できるのもサービスのポイントだ。
松本隆一代表取締役CEOは「単身の方や、お子様が自宅にいてスーパーやドラッグストアで買い物ができない世帯のご依頼も多くあります。特に雨の日ですと配送の依頼も多くなります」と説明する。
次々と登場する新たなアプリに、アップアニー社の向井氏は次のように考察する。
「家族と過ごす時間、家で過ごす時間が増えていることが、非常に追い風になっています。アプリの利用人数が増えれば、そこに広告を出す企業さんが増えるので、そうするとアプリ事業者さんがまた真似てやってみる。そういう循環が生まれるんです」
コロナ禍によって生活様式も変わる中、ニーズを汲み取り、アプリ市場も変化していた。